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旅乙女と発明娘の子供部屋

Camino自転車旅 「巡礼宿アルベルゲ」 1日目「ピレネー山脈を越えてスペイン入り」


☆ 1日目 サン=ジャン=ピエ=ド=ポーからズビリまで
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Luna f:id:miraluna:20180124123441j:plain:w50       Camino de Santiago 巡礼路 f:id:miraluna:20200521173031j:plain:w200

サン=ジャン=ピエ=ド=ポーからサンチアゴ=デ=コンポステーラまでの巡礼路を自転車で旅しました。

これから同じ道を旅しようと考えている人のために、情報を残していきます。
               文:Luna    助言・あーせい更正・校正:katari
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「 巡礼宿アルベルゲ(Alberugue)」
巡礼をする旅人たちのほとんどは、アルベルゲと呼ばれる巡礼宿に泊まります。
一日で歩ける行程(20kmくらい)に少なくとも2・3軒はあり、大きい町では10軒ちかくもあったり、民家数十軒の小さな集落にもあったりと、巡礼路には多くのアルベルゲがあります。

<このページの記事>
〇 地図
〇 アルベルゲの種類
〇 アルベルゲに着いたなら
〇 アルベルゲでのルール
〇 アルベルゲを見つけるには
〇 日記 1日目「ピレネー山脈を越えてスペイン入り」


☆ ズビリのアルベルゲ
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アルベルゲの種類

「アルベルゲ」というのは「安宿」というような意味のスペイン語で、フランス語では「ジトゥ(Gite)」がそれにあたります。

アルベルゲは基本的に巡礼者を助ける施設なので、安い料金か、あるいは無料で泊まることができます。
大きな町やサンチャゴの先(サンチャゴよりもさらに先まで続く巡礼路があります。それはまた後ほど)では商業目的の宿も多くありますが、「安宿(ホステル)」のような意味がありますので、高い料金をとることはありません。

アルベルゲには町や教会、修道院が運営している公営のものと、個人が運営している私営のものがあります。

伝統的な公営のものと、信心深い私営のもの、営利目的の私営のものなどでアルベルゲのもつ意味合いがまるで違ってきます。
巡礼路の中盤になると、巡礼者たちの宿への好みははっきりと分かれていきます。
静かで慎ましやかな宿を好む人、敬虔な信者が営む宿を好む人、夜中まで飲んだり騒いだりできる宿を好む人、きれいで広くてゆっくりできる宿を好む人。
公営と私営というだけでは分けることはできませんが、レストランやバル(酒場)を併設しているアルベルゲと修道院内でシスターたちが経営しているアルベルゲがあれば、泊まらなくても雰囲気は想像できます。
同じ「アルベルゲ」という名前でもその意味するところは、一方は巡礼宿、一方は安宿といったところでしょう。

料金は無料(寄付)から20€程度で、最も多い料金設定は10€でした。

宿を管理するのは世界中から集まってくるボランティアか、その宗教施設の関係者か、ホテルオーナーとしての宿主かです。
これもアルベルゲの種類によって異なります。
金銭目的でない管理人の方たちの話は大変興味深いものが多いので、ぜひ話をしてみると良いと思います。

アルベルゲでは宗教的な集まりに任意で参加することもできるし、多くの巡礼者たちと関わることもできます。
ご馳走をふるまわれることもあるし、歌を歌って楽しむこともあります。
もちろんそれらは強要されるものではないので、一人黙々と旅をすることもできます。



でもこのアルベルゲ、誰でも自由に泊まれるわけではありません。
「巡礼者の証」が必要なのです。

それが前回の「旅の準備」で書いた「証明書」です。
     → 巡礼者の証の記事


アルベルゲに着いたなら

まずアルベルゲに着いたら、宿の人に巡礼者の証を見せます。
商業目的ではない伝統的なアルベルゲでは大抵ここでジュースか水がふるまわれます。
宿の人は証にスタンプを押してくれるので、もし料金が必要であればここで支払います。
寄付のみで宿泊代をとらない無料のアルベルゲも多数あります。
そのような宿では、私たちは5€を目安に寄付をしました。

宿ではベッドが与えられ、次の朝まで自由に休むことができますが、門限があるアルベルゲが多いです。

基本的に部屋は相部屋で、2段ベッドであることが多く、4人の小部屋から50人くらいの大部屋まで様々です。
男女が別の部屋であることは少ないです。
でもシングルやツインのような個室をもつアルベルゲもあります。


伝統的なアルベルゲにはキッチンがあり、自由に食べてよい最低限の食料「ピルグリムフード」(だいたい塩とパスタとにんにく)が用意されています。開いているお店がない場合のためや、お店まで歩く力のない巡礼者のためです。
少し小ぎれいで新しい民間の商業的なアルベルゲでは、到着時のジュースや備え置きの食べ物がない代わりに、貴重品を入れる小型金庫があったり夜中も出入りできるように鍵を渡されたりすることがあります。
ピルグリムフードは宿の人が用意することもありますが、巡礼者が次の人のために置いていくこともあります。
きれいな宿では衛生を重視して処分したりするようです。

シャワーは必ずあると思います。
一度だけ横一列に並ぶタイプのシャワールームがありましたが、他では個室でした。
 ↓
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洗面台は学校の水道のように横一列に並んだものもありますが、大抵は一個ずつのものがシャワールームにあります。

アルベルゲでのルール

アルベルゲではこれでもかというくらいに歓待されることがあります。夜にはご馳走がふるまわれ、音楽を演奏してもらい、旅の安全にお守りをもらい、朝食も用意されて、それでも無料で泊めてもらえたりします。

そうなるとなんだか慎ましい心持ちになったりするものです。
感謝の気持ちを表したいときには、宿の方をめいっぱい手伝うのも良いと思います。私たちはそうしてきました。でも時には人の仕事を奪うことが悪いことである場合もあります。
何も力になることができないなら、せめて行儀よくしたいものです。
アルベルゲには守るべきルールというものがあります。

・朝早く出発する
ホテルなどでのチェックアウトは大抵10時や11時ですよね。でもアルベルゲでは宿の方たちの掃除の時間や休憩時間を確保するためにも、ゆっくり留まるべきではありません。
9時には出ていくように、というところが多いです。8時まで、というところも少なくありません。
早いようにも思いますが、巡礼者たちの朝は早いです。
特に夏の間は日中の暑い時間を避けて旅をします。平均的に6時くらいから起きだし、7時くらいには出発します。
4時くらいに出発して午前の11時くらいに宿に入る人もいます。

自転車の旅人は暗いうちに走り出すと危険なのと、自転車にとって朝早い時間は寒いのとで、歩きの人よりも遅く出発するのが慣例のようです。
私たちも7時くらいに起きだして、いつも8時くらいに出発していました。
なので他に自転車旅の人がいない時は、最後の出発者となりました。

・歩きの人優先
アルベルゲは日本の山小屋と違い、ベッド数が決まっています。予備のベッドなどを持っている宿もありましたが、定員割れして泊まれない場合があります。
その町に他のアルベルゲがないときには、さらに進むか、野宿するか、頼んで居間やキッチンに泊めさせてもらうかなどすることになります。
でもくたくたに歩き疲れた人があと5km、あるいはあと7km多く進むというのは大変なことなので、そんな状況になったら歩きの人を優先します。
私たちはそのような状況に遭遇しませんでしたが、自転車の旅人同士お互いに念入りに話をし合ったので、きっとこれは宿側から言われるものではなく、自転車の旅人が進んで申し出るべき暗黙のルールなのだと思われます。
そういうマナーというものは、決められたルール以上に気にかけていたいものです。

・連泊はできない
巡礼の旅では怪我や病気をしたり、道に迷ったりするなど困りごとも多くあります。
そのようなときにアルベルゲがあれば遠慮しないで助けを求めるべきです。それがアルベルゲの本分ですから。
でもそうでない場合に気に入ったからしばらく滞在する、ということはできません。
ピルグリムは巡礼をする者で、目的の地へ向かって進んでいく者です。
なので特別な困りごとがない限り連泊はできないことになっています。これは次にやってくる巡礼者にベッドを譲るためのルールだと思います。

☆ サン=ジャン=ピエ=ド=ポーのアルベルゲ
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・ブーツを脱ぐ
スペインの巡礼路は赤茶けた土の道が多くあります。そこを一日中歩いたブーツはとても汚れています。
アルベルゲに着いたらブーツは入口で脱いで過ごします。裸足で過ごす人もいますが、多くはサンダルを用意してそれを履きます。

・ベッドにザックを置かない
ザックも旅の途中で汚れていきます。雨に降られ濡れたりもします。ベッドは毎日巡礼者たちが入れ替わり使うものなので、ザックは床に置き、ベッドの上には置かない決まりになっています。

・お酒は飲んでもよい
敬虔なカトリック教徒にはお酒を飲まない人もいますが、ワインを好む人も多くいます。
エスの肉はパンに、血はワインに表されることがあるので、ワインは卑しいものではなく神聖なものという意識があるようです。
しかしウィスキーやウォッカなどのアルコール度数の高いお酒は嫌厭されていました。

・煙草は外で
宿に泊まる手続きの際に「建物内は禁煙」という説明を受けるところが多くあります。
たとえそのような説明がなくても、煙草は宿の中では吸わないほうが良いでしょう。

・門限がある
門限がなく鍵を渡されるアルベルゲもありますが、多くのアルベルゲには門限がありました。
みんな一日中旅をして疲れ、次の日も朝早くに出発するので、早寝早起きのペースをつくりたいものです。

☆ アルベルゲの大部屋
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アルベルゲを見つけるには

スマートフォンのアプリやガイドブックを使って巡礼をする人はすぐにアルベルゲを見つけることができるでしょうが、私たちのように地図を頼りに旅をする巡礼者にとっては、どの町にアルベルゲがあるか分かっても、どこにあるかは自分で探さないといけません。
小さな村では中央の通りを進めばたいてい標識を見つけることができます。
大きな町にも標識はあり、それを追っていくことになると思いますが、見つけにくいことがあります。
そんなときにはインフォメーションマークの観光案内所へ行くと良いでしょう。きっと町の地図をもらうことができ、アルベルゲのある位置に印をつけてくれます。
インフォメーションセンターも見つからない場合には、教会や大聖堂に行ってみると見つかるかもしれません。アルベルゲは教会や大聖堂の近くにあることが多いからです。
それでもやっぱり見つからないときには他の巡礼者や町の人に尋ねましょう。巡礼者はアルベルゲの場所を知っていることが多いですし、町の人もかなり高い確率で知っていました。

アルベルゲの文化を満喫しましょう

巡礼路には特有の風習や文化が存在しますが、その中でもアルベルゲにある文化は興味深いものの宝庫だと思います。
証明書を取ることだけが目的、という人にも会いましたし、他の連中と相部屋なんていやだ、という人たちにも会いましたが、その人たちは口をそろえて「道中は面白くない」と言っていました。
私はこんなに面白い道中は世界の中でも稀だと思いました。もし私たちが個室のホテルにばかり泊まり、他の巡礼者たちと一緒に食べたり話したりしなかったら、この道中の素晴らしさは半分もなかったと思います。
みんなが同じ目的をもって、同じ方向へ旅をしていく道のりなんて、なかなか出会えないですからね。

もし巡礼路を旅することになったなら、ぜひこの特異な文化を満喫してみてください。


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「カミーノへ出発 ピレネー山脈を越えてスペイン入り」

カミーノ(巡礼路)1日目
(ここからは日記です)

今朝は朝食があるということでしたが、キッチンへ行ってみると腕組みをしたおばあさんがフランス語で「遅い人にはもうないよ!」というようなことをみんなに言っていました。
私たちはパンを少し分けてもらったけど、おかわりをもらおうとしたカタリはおばあさんに叱られてしまいました。
それを見ていたポーランド人の青年たちは親切にもソーセージやジャムやバターを分けてくれたの。
さらに後から来たオランダ人のお姉さんはおばあさんに叱られたうえパンを一切れしかもらえなかったので、私たちの分を半分あげて一緒に食べました。
一緒にいたポールはその様子を見て「なんくるないさ」みたいにおばあさんの態度を笑い飛ばして、自分はお茶だけですませていました。

若い旅人が多く、誰もが「まだお店も開いていないし、今日が初日で山越えなのにどうしよう」というような不安をもっているような雰囲気の中で、ポールの大らかさはかっこいいなと思いました。

自転車に荷物を積んで、宿の前でポールとクレメンと別れました。いつかボルドーに立ち寄ることがあったら、彼らの家を訪れてみたいと思います。

荷を固く結んで、出発!
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サン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町には時計塔の門があって、巡礼者たちはこの先の橋を渡ってカミーノ(巡礼路)へと出発していきます。

冒険の始まりです。

☆ 出発の橋
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橋を渡って町のはずれまで行くと、足元に「サイン」と呼ばれる貝の道しるべがあります。
様々な姿であらゆる場所に描かれているこのサインを追って、私たちピルグリムはカミーノを旅してゆくのです。

☆ 貝印のサイン
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☆ 朝靄に煙るピエドポーの町
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振り返るとサン=ジャン=ピエ=ド=ポーのCitadelle通りとアルベルゲが見えます。
まだ朝早いので、霧に包まれています。


☆ 谷間の細道
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カミーノ(camino)とはスペイン語で、英語のPathに当たるような言葉です。
日本語では小道とか、細道でしょうか。

巡礼路のある地域では、カミーノというだけで巡礼路を表したりもします。
人々が巡礼者に会ったときや、巡礼者同士がかける挨拶は
「Buen Camino!」といいます。
Buenはgoodという意味なので「良い道を!」というような言葉ですね。
一日に何度も何度も遣う言葉です。


☆ スペイン入り
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一日目の行程は登りです。
ピレネー山脈を越えます。
歩きの登山道は自転車では通れないので(通る強者もいますが)、別々のルートを通ることになります。
初日のルートについてはピエドポーの巡礼者の家で説明を受けることができます(別れ道の地図ももらえます)。

歩きも自転車も、一日目はがんばりどころです。

登りの途中でフランスからスペインに入りました。国境には特別なゲートなどはなく、気が付いた時にはスペインにいました。

☆ 急な上り坂
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登り坂をゆっくり上がっていくと、前方に一台の自転車が見えました。私たちが追いつくと、なんとフランスのムステーから幾度も一緒だったヘリットおじいさん!
ヘリットとはムステー村、ダックスの町で同じ宿(どちらもテントだったけど)に泊まって、ダックスでは雨宿りをしながら午前中いっぱい一緒に過ごしたの。
私たちより一日早くピエドポーに着いていたんだけど、雨だったから出発を一日遅らせたそうです。
この後ヘリットとはブルゴスという町まで一緒になったり離れたりを繰り返し、サンチャゴ到着時にも連絡を取り合うことになります。

☆ 休憩の水場
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道は歩きの登山道と何度か交わりながら登っていきます。

私たちとヘリットが水場で休憩をしているとイタリア人の青年が坂を上がってきました。この青年マッティアともこの後何度となく出会うことになります。


☆ 峠の頂
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ようやくの思いでピレネー山脈を越える峠の頂上へとたどり着きました。
遠く青くかすんでいるその遥か向こうから、私たちは旅を続けてきました。
カタリが「思えば遠くへ来たもんだ」と口ずさむ横でお昼ご飯を食べました。

☆ 私とミラの保護者カタリ
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☆ スペインの土地
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スペインに入るとフランスとは違う雰囲気に変わります。土地や建物が違うからでしょう。
天気も良くなり、ここからはずっと晴天でした。


☆ Zubiri の宿
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Zubiriという町に入ったときにアルベルゲを見つけたので、まだ早い時間でしたがこの日は休むことにしました。
一人8€。
下りの途中で別れたヘリットが来るのを待ちます。もし一緒の宿に泊まったらきっと楽しいでしょう。

初めにやって来たのはイタリア人青年のマッティアでした。
なんだか様子が変です。
彼は私たちのところまで来るとポケットからチェーンを取り出して大きく笑いました。どうやらチェーンが切れてしまったようです。
町を探しましたが自転車屋さんはありません。明日パンプローナの町まで歩いて、自転車屋さんを探すしかなさそうです。

その後に来たのがヘリット。同じ宿に誘ったのですが、彼はキャンプ場で濡れたテントを干したいからと言ってさらに先へと進みました。ヘリットはここまでも、ピエドポーでも、この先も、できる限りキャンプ場に泊まっていました。


シエスタ(国民のお昼寝タイム)がなんと5時までなので5時を待って商店へ食べ物を買いに行き、たくさんの人とお話をしました。とくにアムステルダムに住んでいる中国人のお姉さんドゥアン、イタリア人のべぺとアンドレア、自転車旅の青年マッティアと話しました。敬虔なカトリック信者なんだろうなと思わせる雰囲気のアンドレアは、サンチャゴの先にも巡礼路が続いていて、2つの町があるということを教えてくれました。みんなは遅くまで話していたようだったけれど、私は先に眠りました。


明日の日記


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星の巡礼
作家パウロ・コエーリョがサン=ジャン=ピエ=ド=ポーからサンチアゴ=デ=コンポステーラまでの巡礼路を旅する物語。
パウロ・コエーリョの『アルケミスト』は私とカタリの愛読書です。