Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

ポントルソンの休日

自転車でフランスを旅します。f:id:miraluna:20200521170915j:plain:w170 現在地

<6日目>

Luna

モン・サン=ミシェル南にある小さな町「ポントルソン(Pontorson)」で休日を

☆ 町の中心を通る「サン=ミシェル通り」
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今日は旅の休日です。

私たちの旅はあまり細かく計画を立てません。
同行者である私の保護者カタリが、自由気ままな旅をするのが好きだからです。ムーミン童話に出てくるスナフキンの生き方に共感を覚えるそうです。
無事アイルランドからフランスへと渡った私たちには3か月間の自由な時間(ビザ)があります。この間、私たちはどこへ向かってもいいし、どこで眠ってもいいし、何をしていてもいいのです。
「自分たちの行動の責任をとることが自由を得るということなんだ」と、時々カタリは言っています。
目的をもって目的地へと進むこともあれば、放浪者のように迷子を楽しんで彷徨うこともあります。巡礼路をひた進む巡礼者になったり、風向きで今日の進行方向を決めたりね。
でもどんな旅路であっても、いつでも私たちは旅に求めているものがあります。言葉ではうまく表せないのですが、旅の中にある人生を左右するような特別な魅力に私たちは惹かれているのでしょう。
私たちはその得体の知れない掴めそうで掴めない何かをぼんやりと捉えながら、一途にそれを追っています。この実質的で効率重視の資本主義社会においては、まるで童話めいた生き方だと思われるかもしれませんね。
でも、日の出前から日暮れまで修道院にこもって祈りの日々を過ごす修道僧たちも、すべての財産を他人に喜捨した王子や王女も、荷馬車ひとつで旅を続けるジプシーたちも、毎日黙々と畑の世話を続ける農夫も、どの生き方も現実に存在する人間の人生です。
可能性は想像しているものを越えるものです。生き方は選べるのです。
だから私たちは旅を続けるのです。


そんなこんなで私たちは今日を休日にすることに決めました。
気に入ったところに一時腰を下ろすのも、旅の楽しみのひとつですからね。

午前中は町を散策したり、教会へ行ったりしてのんびりと過ごしました。
町はとても静かで、いい天気で、ゆったりとした時を過ごすことができたの。

☆ ポントルソンの町「サン=ミシェル通り」
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☆ 町の教会に挨拶
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☆ 旅の無事に感謝
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この日私たちは珍しく別行動をとりました。

昨日の夕方、カタリはスーパーでここポントルソンに住んでいる日本人の画家、大石さんに出会ったの。私が宿のお姉さんロロとおしゃべりしている間、大石さんのご自宅へ伺ってお酒をごちそうになったんだって。
それで今日の午後はまた大石さんの家に行くそうです。

私はあまりにいい天気だったので、旅の途中ではチャンスがないとできないお洗濯をすることにしました。下着は毎日のように替えることができるけれど、上着は干す時間のあるときにしたい。
カタリに服を着替えてもらって、せっけんが少なくなっていたので買い物に行って、それからゆっくりとお洗濯をしました。

☆ 洗濯日和!
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この日の午後は夕方まで他のお客さんはいませんでした。
私は紅茶を飲んだり日記を書いたりして、のんびりとした午後を過ごしたわ。
スーパーが歩いてすぐのところにあるので、夕飯の食材を買いに行きました。一人で出歩くのが怖い国もあるけれど、この町なら大丈夫そう。
今夜はハムステーキにします。

夕方になってカタリが自転車のチューブとワイヤーロックを買って帰ってきました。スーパーに売っていたそうです。

私が夕飯を作っている間に、カタリが自転車のチューブを交換してくれました。
何度かパンクや空気漏れを経験したチューブだったので、これで安心です。

大石さんご夫婦はとても素敵な方たちだったそうで、カタリが嬉しそうに話してくれました。
以前はヴェルサイユに住んでいて、数多くの絵画を市に寄贈したそうです。その頃の苦労と冒険を支えた奥さん、最近まで幼稚園の先生をされていたそうです。「絵画は次々と重ねて創造するもので、完成したら次は(新しい可能性のために)壊す作業をする必要がある」「人生には冒険が必要だ」などの大石さんから聞いた言葉を話すカタリの表情はとても嬉しそうでした。きっと共感するところが多かったのでしょう。大石さんはとても陽気で話の面白い方だそうで「冒険に満ちたロマンチックな生き方で、酒と家族と絵が好きな人だったよ」とのことでした。
どうやらカタリは大石さんご夫妻の生き方に、好感と敬意を強く感じたようです。
私も会いたかったな。


ちょうど今夜、町の広場にサーカスの一座が来るということを大石さんから教えてもらったそうです。一家でやっているのかもしれないとのことでした。
私たちはサーカスを観に町の広場へ向かいました。

広場で準備をしていたサーカスの一座は、数日前に見かけたような十何台もの大型トラックで移動をするキャラバン隊ではなく、家族と親せきで構成されているような6人くらいの一座でした。
広場に並べられた椅子には町の子どもたちが座り、サーカスの開幕を待ち遠しそうにしています。地元に根ざした小さな町のサーカスを旅先で見ることができるなんて嬉しいです。


さあ、サーカスが始まりましたよ。



☆ クラウンによる喜劇と一輪車芸
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☆ 猫使いのお姉さん
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サーカスは観覧無料で、大道芸のようなチップ集めもありません。
唯一お金を遣うのは一軒のわたあめ屋さんの出店だけ。
このわたあめ屋さんのわたあめがとーっても大きいの。初めは何かと思ってびっくりしちゃった。風船か傘みたいなのよ。

☆ 大きなわたあめ
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次に出てきたのは樽を持ったお兄さん。
そこへ一家の末っ子のような女の子が入ります。

☆ 樽の中には女の子
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お兄さんはジャグリングのように樽を宙に投げたり回したりします。女の子は中に入ったまま。観客もひやひやです。

☆ 樽から出てきた女の子
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そしてポンと元気な姿で飛び出してきた女の子はお兄さんの手の上でアクロバティックな動きを見せてくれました。みんな拍手喝采です。


伝統的な玉乗り芸もありました。
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☆ 一家のようなサーカス一座
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最後は座長がジョークを交えた挨拶をして、サーカスは終演です。
小さな町の小さなサーカス団は心温まる愉快な時間を町のみんなに与えてくれました。私たち旅人にもね。

☆ サーカスの看板
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☆ 終日の教会
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サーカスが終わり、町のお客さんたちは三々五々、家路へと向かいます。
時間はもう10時近く。いつもなら眠っている時間です。
ヨーロッパの長い日も夕暮れ時。さあ、宿へ帰りましょう。

こうして私たちの旅の休日は幕を閉じたのです。めでたしめでたし。

               ☆明日へつづく

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