Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

ついにフランス旅最後の町にしてカミーノ出発の町「サン=ジャン=ピエ=ド=ポー」に到着です。

自転車でフランスを旅します。 f:id:miraluna:20200521165711j:plain:w230
                             現在地
<17日目>
Luna

アイルランドの旅を終えた私たちはフランスへと船で渡り、大西洋側を北から南へと縦走してきました。フランスでの旅も17日目。途中、ブレイユという町から巡礼路へと入った私たちは巡礼者となり、サンチアゴ=デ=コンポステーラまでの道のりの出発地として名高いサン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町を目指してきました。そしてこの日、ついにカミーノ(フランス人の道)の出発地であり、フランス最後の町となるサン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町へと辿り着くことになるのです。

☆ ソルデ修道院村からサン=ジャン=ピエ=ド=ポーへ
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昨日の夜はフランスの伝統料理をフルコースでいただいて、巡礼宿の女将さんやそのお友達、巡礼者の仲間たちと旅の話などをして素敵な夜を過ごしました。
今日本に帰ってきてから思い出しても、うっとりするような旅人の夕べだったなあ。
きっと女将さんやお友達は、旅人にこんな夢見心地を味わわせたくて無償でベッドや食事を用意したり旅の話をできる機会をつくったりしてくれるのでしょう。「他人の喜びが自分の喜び」だと素直に感じ、それを実行できる生き方は「豊か」だと思います。私もそんな素敵な感じ方や行動ができる人でありたいと思いました。

そしてこの日の朝もみんなで食卓を囲みました。パン・ジャム・ヨーグルト・ジュースをお腹いっぱいいただきました。
出発の話をすると、なんだかとても名残惜しい気持ちになります。
それでも旅の支度をして、出発します。だって私たちは旅人だから。
雨が降ったり止んだりしてなおさら留まりたい気持ちを強めさせますが、私たちはみんなに何度もお礼を言って出発しました。
さあ、また新しい旅の一日の始まりです。

☆ かわいらしいソルデ修道院
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☆ 出発の朝
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今日はサン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町を目指します。
サン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町は今回のフランスの旅最後の町で、サンチアゴ=デ=コンポステーラまでの巡礼路「フランス人の道」の出発地です。
スペインでは巡礼路は「カミーノ」と呼ばれ、その中でも「フランス人の道」と呼ばれる道は最も多くの巡礼者たちが旅をする道のりです。
今は旅人をあまり多くは見かけませんが、きっとサン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町は多くの巡礼者たちで賑わっていることでしょう。
だって町の名前のpiedは足、portは港という意味で、「聖Jeanの足の港」というような名前。多くの旅人が集まることから付いた名前ね。この意味は旅人仲間のポールに教えてもらいました。

☆ 丘の上の教会
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私たちはキリスト教徒ではありません。でも旅をしているときには土地の神様に敬意をもち、あいさつをするようにしています。アイルランドから始まったこの旅路ではほとんど毎日のように教会へ足を運び、一日の旅の安全を祈り、宿と食べ物を得られたことに感謝をします。
この日最初に見つけた教会は、緑の丘の上に建つ素敵な教会でした。
早速朝のお祈りのために中へ入ります。

☆ 2階席に上がる階段
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小ぢんまりとした教会で、中はひっそりとしていて誰もいません。教会特有のお香とろうそくの溶けた匂いがします。
お祈りを済ませて礼拝堂を出ようとすると脇に階段があるのが目に入りました。カタリがずんずん登り始めたので私も後に続きます。

☆ 2階席から見た礼拝堂
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静まり返った教会の中にじっと黙って座っていると、謙虚で優しい気持ちになります。傲慢や我欲は薄れて、世界は好ましいものだと感じられるようになります。そして人の命は小さく儚いものだと感じ、世界に畏れを感じるのです。
こうして言葉にしたとたんに安っぽくて大仰なものになってしまいますが、あの感覚を拙い言葉で言い表すとしたら、そんな感じなのです。

☆ 木々の向こうに教会の尖塔やお城が見える
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この日は雨だったからか、それとも晴れでもそうなのか、人の姿をあまり見かけませんでした。
村々を点々と通り抜けながら、静かな田舎道を走ります。
少しずつですが、登り坂が増えてきました。

☆ 小さな村の大きな教会
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広い畑地帯から、森や丘の多い地域へと入ってきました。
サン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町はピレネー山脈のふもとに位置しているので、山へと向かって進んでいるのです。

☆ 森の中のメゾン
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フランスでは貴族か地主の館と思われる巨大なお屋敷をときどき見かけます。いったいどんな人が住んでいて、どんな暮らしをしているのでしょう。使用人がたくさんいたりするのかしらね。

☆ 山のふもとの丘陵地帯
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エスコス(Escos)村からサン=パレ(St.Palais)の町まで畑の広がる丘陵地帯を走ります。大きな通りから外れて、アップダウンの多い細い田舎道です。
広い広い畑の丘と、広い広い空の間を走っていきます。人の姿はなく、驚くくらい静かでした。
赤毛のアンの言う「想像の余地のある」土地とはこういうところをいうのかしら。

☆ かわいらしいお墓の教会
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この道の途中、広い土地にぽつんと建つかわいらしい教会を見つけました。きれいなお墓に囲まれています。でも周りの土地があまりに広くて淋しそう。
その向かいには一軒の家と小さなお城がありました。

☆ お墓の向かいの小さなお城
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かつてはこの辺りの砦として使われていたのかしらね。小さいけれど頑丈そうなお城。
隣りの家は管理棟の役目も担っている農家のようでした。

☆ サン=パレの町
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丘陵地帯を抜けてサン=パレの町に到着しました。教会やスーパーのある大きさの歴史ある町。町の小さなインフォメーションセンターで「巡礼者の証」にスタンプを押してもらいました。
ヨーロッパの橋やベランダには花が飾ってあるのをよく見かけます。花で彩られている町って素敵ですよね。

サン=パレを出発して少し行ったところでお昼ご飯にしました。この辺りになるとずっと登り坂です。道の脇に公園のような休憩所があり、そこの木の下で食べることにしました。このときまた、雨が降り始めていたからです。
休憩所には作業員のようなおじさん二人と、自転車旅の若者が楽しそうに話をしていました。私たちが木陰に入ると、その青年が近づいてきてあいさつをしました。彼もサン=ジャン=ピエ=ド=ポーを目指しているところで、やはり目的地はサンチアゴ=デ=コンポステーラだということでした。
「サン=ジャン=ピエ=ド=ポーでまた会おう」と彼は言って出発しました。実はこの青年とはこの後の巡礼路「カミーノ」で何度も再会し、レオンでは同じ宿に泊まって「巡礼者の夕べ(終日の祈り(ミサ))」にも一緒に参加することになるのですが、それはまた別のお話。

そしてついにフランス旅での最後の町、サン=ジャン=ピエ=ド=ポーに到着しました。

☆ サン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町
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日本の家を出発してから40日目。総走行距離3000kmです。
旅の途上の一つの基点となる町ね。
サンチアゴ=デ=コンポステーラに向けて巡礼の旅を始めようとする旅人たちが世界中から集まる「旅の出発点」として名高い町。
私たちは今その町に「到着」したのです。

サン=ジャン=ピエ=ド=ポーは山の上にある小さな町で、メイン通りを行けばインフォメーションセンターがすぐに見つかります。
宿について尋ねると、一つの住所を教えてくれました。ここでまた雨が降り始めました。
町の中にぐるりと建てられた城壁の中に入ると、そこは古くからある歴史地区でした。教えてもらった住所はここから石畳のシタデル通りの坂を登ったところにあります。到着する頃には激しい雨。そこは宿ではなく、宿の紹介所のようなところでした。実際には「巡礼者の証(クレデンシャル)」の発行や、一日目の道のりと宿の紹介などを行う「ピルグリムオフィス」だったということを私たちが知ったのは、ずっと後になってからのことです。

オフィスはとても賑わっていて、案内をしてくれる人たちはたくさんいたのですが、それでも順番を待つ必要がありました。
私たちが雨に濡れてしまった巡礼者の証を見せると、案内のおじさんが保護袋に入れてくれました。宿を案内してもらい、荷物を置いたらまた来るように言われました。

☆ アルベルゲ(巡礼宿)
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教えてもらった宿はほんの数軒先にあります。土砂降りの中急いで宿へ向かいます。宿はすぐに見つかり、自転車ごと中へ。助かりました。
入口の隣りの部屋で一人10€の宿代を払い、自転車を置いてピルグリムオフィスへと引き返します。
オフィスでは明日の道のりについて教えてくれました(急いで戻ってくる必要はなかったみたい)。町を出発してから道が二つに分かれていること、一方は徒歩に適した道で、もう一方は自転車に適した道であること、その分岐点の場所、危険個所などについて。
私たちは分岐点の地図をもらい、お礼を言って宿へと戻りました。

☆ 巡礼者たちの宿
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巡礼宿はフランスでは「Gîte(ジトゥ)」、スペインでは「Alberugue(アルベルゲ)」と呼ばれます。ここはまだフランスですが、カミーノと呼ばれる巡礼路の上にあるので、カミーノで頻繁に使われる「アルベルゲ」の名前でも多く呼ばれているようです。どちらも「簡易宿泊施設」「安宿」という意味を表す言葉で、必ずしも巡礼宿だけに使われる言葉ではありません。
でもそれが巡礼宿であれば、巡礼者の証であるクレデンシャルを提示する必要があります。この宿もまたそうです。
つまり、この宿の宿泊者はみんな巡礼者だということです。

☆ 高低差のある斜面に張り出すようにして建てられたアルベルゲ
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このアルベルゲは上下に二階から地下二階まで(それ以上?)ある構造になっていました。私たちのベッドは地下(といっても斜面にあるので窓があります)の部屋にありました。
私たちが荷物を持って階段を降り、二階建ての簡易寝台が並ぶ部屋へと入ると、馴染みのある姿が目に飛び込んできました。

そこに待っていたのはなんと、一昨日ダックスの町の巡礼宿で一緒になり、昨日ソルデ修道院村で再会をした、ポールとクレメン父子だったのです。

私たちは再会を喜びました。
旅路の中で三度も出会うなんて、きっと特別な出会いに違いないわ。私たちは夕飯へ一緒に出かける約束をして、シャワーを浴びたり洗濯をしたり旅の準備をしたりして過ごしました。

☆ 歴史地区のメインストリート、シタデル通り
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私たちは城跡や町を見て回りました。
巡礼の町としての長い歴史を感じられる町並みです。
お土産屋さんや旅の装備品を売るお店などもたくさんあり、通りは賑わっていました。

☆ 古い町並み
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☆ 昔からずっと巡礼者たちが集まる町
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☆ 城壁の外には新しく造られた地区が広がる
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☆ 巡礼のシンボル「スカロップ」
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町の石畳には巡礼のシンボルである「スカロップ(ホタテ貝)」のモザイクもありました。
ここは多くの巡礼の旅人が、長い長い道のりの出発点として集まる「出発の町」。
私たちもまた、ここから多くの巡礼者たちと共に同じ巡礼路「カミーノ」を旅して、目的地であるサンチアゴ=デ=コンポステーラの町を目指します。

私たちの旅の、フランスでの旅路のお話はこれでおしまい。

フランスはとても広くて、とても自由で、昔から脈々と続く文化と伝統と誇りを持ち続けている国。空と畑(乾と坤)に花と優しさが彩を添える、美しい素敵な国でした。
きっとまたいつか旅をする機会があるでしょう。それまでお別れです。
オーヴォワール、フランス。


   ★アイルランドの旅
   ★フランスの旅
   ★スペイン巡礼路「カミーノ」の旅
   ★スペイン アンダルシア地方の旅


ルナでした。
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