Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

自転車旅 ポルトガル5日目。迷い多い道のりと、巡り合った2つの素敵な町と。

Luna
自転車の旅ポルトガル編8】
ヨーロッパを自転車で旅しました。これはポルトガルルートの軌跡です。
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ポルトガルの旅路5日目
PortoからSanta Maria da Feira

 5日目の轍(わだち)

[今日はこんな日]
ポルトの山小屋のようなアルベルゲ(巡礼宿)で出会った仲間たちとの楽しい時間はあっという間に過ぎ、それぞれの旅路へと再び旅立つ巡礼者たち。私と保護者のカタリはドウロ川を越えて南の土地へと向かいます。エスピーニョという素敵な海辺の町を抜けて、辿り着いたのは古いお城のあるサンタ・マリア・ダ・フェイラという歴史深い町。魅力あふれるフェイラの町に私たちは宿をとってお城へと向かうことにしました。
       それでは旅の一日のはじまりはじまり。


☆ 山小屋のようなポルトのアルベルゲ

朝、2段ベッドの上で寝ていた私は、下で寝ていたカタリのうなされ声で目が覚めました。その後跳ね起きたカタリが言うには、同じ宿のヘンリーやかつての旅仲間が事故で死んじゃう悪夢を見たんだって。起きてみるとヘンリーは元気でした。良かった。

居心地のよいアルベルゲとも、一緒に過ごし語り合った仲間たちともお別れです。私たち旅人はそれぞれの旅路へと出発します。

☆ 霧の中の出発

海とドウロ川の近くは朝霧に包まれていました。
2日間お世話になったポルトの町にお別れです。

ポルトのような大きな町では道に迷いやすいので、ポルトの町を抜けるまでは慎重に進みました。地図を小まめにチェックして、間違えたらすぐに引き返しました。道はやがて郊外の住宅地へと続き、観光客のいない地元の人々のサバービアへと入っていきます。
☆ 住宅地にあった教会

自動車が発明されるよりずっと前に敷かれたと思われる狭くてくねくねとした道を進むと、きれいに区画整理された海辺の町へと辿り着きました。町の名前はEspinho(エスピーニョ)。

☆ エスピーニョの教会

未知の土地へ向かって旅をするのはいつだって不安もつきまといます。私たちは新しい土地に入るときにはその土地の神様に守っていただけるよう、寺社仏閣や教会にはあいさつをするようにしています。エスピーニョの町の中央に大きな教会を見つけたので、立ち寄ることにしました。

教会に入るとお姉さんが迎え入れてくれて、私たちを案内してくれました。教会の中を一通り案内してくれた後に連れて行ってくれたのはなんと......。
☆ 時計塔の裏側

教会の時計塔の裏側や......。
☆ 鐘楼

実際にベルを鳴らす鐘楼や......。
☆ 屋根裏

教会の屋根裏の空間でした。
こんな場所初めて見たので、とっても興味深かった。
それから塔の上から町を眺めることもできました。

☆ 教会の塔の上から見たエスピーニョの町

町は碁盤目のようにきれいに区画整理されていて、建物も新しいものばかり。カタリが言うには大火事か空襲にでも遭ったのか、ここ100年くらいで再建されたかのように見える町だ、とのことでした。でも立地からして古くから栄えた町でもあるだろう、と想像の翼を広げていました。
こんな興味深くて素敵な場所を見せてくれて、教会のお姉さんありがとう。

☆ 海沿いの通り

☆ エスピーニョのビーチ


☆ 砂糖のかかった黄色いパン

☆ カスタードクリームパイ

ともあれお腹が空いてきたのでお昼ご飯にしましょう。
とっても天気が良くて教会前の公園が素敵だから、ここで食べたいな。せっかくポルトガルにいるんだから、ポルトガルの甘いパンが食べたい。ということでパン屋さんでパンを買ってきました。
上の大きいのは砂糖がまぶしてある黄色いパンなんだけど、これが本当に美味しかった。砂糖は和三盆みたいな上品な甘さで甘すぎなくてパンそのものもほんのり甘いの。私もカタリもこれには驚いて、この後黄色いパンを見つけては買うようになったほど。でもこのときに食べたのが一番美味しかったな。
下のパイ生地で包んであるのは中にカスタードクリームが入っているの。このカスタードがまた絶品で、濃厚だけれど優しい甘さ、パイ生地とカスタードがぶつかり合わずに和解し合っていて、お菓子やパン文化の歴史の深さを感じました。さすがです、ポルトガルのパン屋さん。
この後カフェで野菜ピューレのスープもいただきました。

エスピーニョの町では教会の裏側と海辺のきれいな町並みを見ることができて、おいしいパンとスープが食べられて、素敵な経験ができました。
少し淋しい気持ちでエスピーニョの町を後にします。


でもここからがまた難しい道のりだったの。どこかで道を間違えてしまったのか、いつの間にか私たちは迷子になっちゃった。大きく方向を失っているわけではなかったからそれほど困ったわけではないけれど、今いる場所がわからない。不安な気持ちが膨らみます。どんどん町から外れていって、森の中のテーマパークに向かう道に行きつきました。まるで道の最果てのようなところ。なんだか寂し気でちょっと怖くなって、そこを引き返して別の道を行くと大きなお店の集まるマーケットに出たの。モーターウェイが近くにあるみたいで、日本の高速道路のサービスエリアみたい。モーターウェイに囲まれてしまったから大きな道には入れず、小さな道を選んでいくしかありません。そこからさらに南を目指して進んでいくと、山と谷のある緑に囲まれた小さな町に辿り着きました。そしてその山の上には、大きくはないけれど石造りの立派なお城が見えたの。

☆ 山の上にお城が見える

町の名前はサンタ・マリア・ダ・フェイラ(Santa Maria da Feira)。
歴史ある立派な建物が小さな町にたくさん並んでいた。
さんざんもの寂しい土地を迷ってきた後だったから、森の中でお菓子の家を見つけたグレーテルになった気分。ヘンゼルさんは平気そうにしているけれど、ちょっとは不安だったよね?

☆ 市庁舎

☆ 宿の通り

☆ 教会とミュージアム

私がお城に行ってみたいと言ったので、ヘンゼルことカタリは承知して一緒にお城への道を探してくれました。高低差のある歴史深い町並みはとっても素敵で、町を探索するだけでも楽しい気分になります。インフォメーションセンターがあったので、お城の情報がきっとあると思い中に入りました。インフォメーションにいたのは二人の元気いっぱいの初老の女性。お城の情報を教えてくれてから、「この地域に来たら絶対に泊まっていかなきゃダメ。一日じゃ見きれないほど見どころがたくさんあるんだから。最近新しくできた宿もあるから、そこに泊まりなさい」と強く勧められました。
この町へは偶然立ち寄っただけだったので泊まることは考えていなかったの。でもインフォメーションセンターを出てから、ちょっとだけその宿をのぞいてみることにしました。

☆ 新しい宿の部屋

宿は2階と3階にあって、1階はレストラン。「Castelo da Feira (Feiraの城)」というレストラン宿です。
こちらは相部屋の一室。きれい。

☆ バルコニーから

部屋のバルコニーからは宿の中庭が見えます。レストランのテラス席も(この写真では見えないけれど)中庭にあります。私たちの自転車はこの中庭に停めさせてもらうことになります。

☆ 1階に続く階段

1階に降りると扉が二つあって、片方はそのまま通りに出られる扉で、片方はレストランへとつながる扉。3階はキッチンとダイニングと相部屋になっています。

☆ テラス

ダイニングを出ると広いテラスがあって、キッチンで作った食事をここで食べることができるの。
そしてここから見える景色は......。

☆ テラスから北を望む

市庁舎と広場が見えます。お隣りは骨董屋さん。

☆ テラスから南を望む

教会とお城が見えます。この家々の屋根もまた素敵。

まるでお菓子の家🍰
そんなわけで私たちはオープン2カ月というこの宿に泊まることにしました。一人16€。
お城も町も見たいものがたくさんあるんだもの。泊まらない手はないわよね。

☆ Feira城

お城は宿から丘を上がってすぐのところにあったので、私たちは荷物を置いてさっそくお城へと向かいました。
お城には私たちの他にも何人かの訪問客がいて、内部を見て回っているようでした。入口に近づくと番兵さんのようなおじさんが近づいてきて、その人から直接チケットを買いました。

☆ 入口を抜ける

お城の入口を抜けると城壁に囲まれた中庭に出ます。見張り用の回廊や小部屋がしっかりと残っていて、どのように利用されたのか想像するのが楽しかったです。

☆ 保存状態の良い城壁

カタリと私は鎧を着た当時の兵隊さんたちになりきって回廊を歩いて回りました。重い鎧を着てこの階段を上がって、ここに腰かけてこの窓から見張りをして、弓はここから射って、この段差で敵と落とし合って......。手すりのない高低差のある段差がたくさんあって、相手を落とすのも一つの有効な戦法だったんだろうな、ってカタリは言っていました。私は重い鎧を着て階段を登ったり降りたりしたり、狭くて高い回廊を歩くのは大変だろうし怖かったろうなと思いました。

☆ 崩れた部分もある

何百年も前に建てられたお城でも、今なおこうして建っている。一部崩れている個所もあったけれど、ほとんどきれいに残っているのは湿度や地震の少ない土地だからこそなのでしょうね。
窓の模様に見られる「十字に宝珠」のような形はここFeira城のシンボルみたいで、あちらこちらに見つけることができます。

☆ 泉

中庭にある泉。ここにも十字架の紋章が飾られています。
城壁の中に水があるということは戦いのあった時代にはとても重要なことだったでしょうね。でもこんな山のてっぺんなのに、水はどこからくるのかしら?

☆ 下り階段

隠したり封鎖したりすることも意図されていたのではないかしら。精緻によくできてるなあ。

☆ お城の塔から

お城の最上部から東側を見たところ。堅牢な守りのお城だったのでしょうね。

☆ 内部の様子

現在は見学用に手すりがつけられているフロアは一面に木の床が敷かれて、2階層に分かれていたのだと思います。石壁部分には階段の跡も残っている。居住空間だったのではないかしら。

☆ 暖炉

壁の裏には大きな暖炉部屋があって、壁の中に暖かい空気を循環させられるようになっていました。とても機能的に設計されているのね。

☆ きれいな城壁

ここにも十字宝珠の形に開けられた窓があります。精巧な造形が今なお残っているだなんて素敵ね。

☆ 下階層から上階層へ続く登り回廊
     
お城は高低差のある山のてっぺんにあるので、下の階層にも上の階層にも中庭がありました。この階段は上下の中庭をつなぐ回廊です。白塗りの壁面に空の青い色が反射してとてもきれい。

☆ 堂々たるFeira城

私、お城って大好き。当時の人々の暮らしや想いを想像すると、なんだかとってもロマンに溢れていて、それが私たちと同じ世界の同じ人間のもった感情や生き方なんだ、って思うと胸が熱くなる。
私たちの一生って、きっとどんな劇的な映画や本よりももっとずっとドラマチックでロマンチックなものなのよ。まだ見たことのないもの、まだ知らないこと、素敵なこと、魅力的なもの、この世界はとてもとても広くて、あらゆる可能性が待っている。人が生きるって、苦しいことや哀しいことに溢れているけれど、でも人が生きるって、きっとそれだけで素晴らしいことじゃない?

Feira城を探索していたら、そんな気分になりました。

☆ 宿に戻って

Feira城を探索し終えて、私たちは一度宿に戻りました。教会のミュージアムではマリア様のハート展というのを(確かそんな名前の特別展だったと思います)やっていて、それも行きたかったんだけれど閉館時間が迫っていたのでやめることにしました。町のスーパーに歩いて行き、夕飯の材料を買いました。
買い出しを終えて一息つくと、上の写真のように保護者のカタリさんは私を差し置いて一杯始めてしまいました。私は退屈だったので宿の前の通りをぶらぶらしたの。カタリはテラスから見守っていてくれた。宿の隣りが古コインを置いている骨董屋さんだったので、ちょっと覗いて店主さんとお話をしたら、日本由来の記念コインを3枚もプレゼントされちゃいました。

☆ 骨董屋の店主さんにいただいたコイン

    南蛮文化         天正少年使節        種子島

立派なものだったので本当にいただいてもいいのかカタリに見せたら、一緒にお礼を言いに行ってくれました。
ユーロになる前の、エスクードという通貨です。

☆ 鳥料理

一息ついた後、私たちは買ってきた食材で料理に取り掛かりました。今夜はうずらのような小型の鳥の料理です。塩胡椒で味付けをして、たっぷりのキャベツと一緒にコンソメで煮込みます。
にわとりよりも肉質は柔らかくて、味はしっかりとしておいしい鳥でした。

☆ お城を眺めながら夕飯

今夜は月がきれいです。お城とお月さまを眺めながら、テラスで夕飯を食べました。
1階のレストランで食べることもカタリと話したのですが、やっぱり自分たちで作ってテラスで食べて正解でした。こっちのほうが私たちらしい楽しみ方です。

☆ 一日の終わり

この日はポルトからエスピーニョまでと、エスピーニョからここサンタ・マリア・ダ・フェイラまで、たくさん迷って不安な思いもたくさんしたけれど、こうして一日の終わりにはすべてがうまくいって明るい気持ちで明日を迎えられる。旅の中の一日はいつだって喜怒哀楽に富んでいて、最後にはいい一日だったって思える。そんな旅の日々が、私は好き。明日はどんな出会いのある一日になるのかな。


明日へつづく
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昨日の日記
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