フランスを自転車で旅します。 ★現在地★
<4日目 後編>
聖なる島を目指して ***モン・サン=ミシェルまで潮の引いた海を歩いて渡ります***
☆ ジュネからモン・サン=ミシェルまで往復(歩き)
海の反対側から海を越えて、魔王のお城のような聖天使ミシェルのいる修道院「モン・サン=ミシェル」を徒歩で目指します。
<今回のツアーについての情報>
◇ 出発時刻:午後 3時(潮に合わせて毎日変わる)
◇ 歩行距離:13km(往復)
◇ ツアー時間:5時間予定(歩行時間と自由時間)今回は 5時間40分でした。
◇ 料金:大人 7.5€ 6~14歳 5.2€
◆ 現地ガイド 1人が案内をする(フランス語のみ)
◆ 1パーティ(グループ)20人前後
(ツアーによって歩行距離や出発地、料金などが様々です)
この日私たちはツアーに参加する前、自転車でモン・サン=ミシェルまで行ってきました。
キャンプ場へ帰ってきた私たちはツアーに参加するべくツアー会社へ行ったのですが、2時までお昼休みで閉まっていたの。2時の開店を待って行くと、今日のツアーの出発時刻にはもう間に合わないだろうって言われちゃった。
どうしよう! 私たちツアーに参加できないの!?
と、いうところまで前回の記事に書きました。
今回はその続き。
☆ モン・サン=ミシェルまでの歩きツアーのパンフレット
残念な気持ちになっていた私たちの前に、ツアー会社のガイドの青年が慌てて入ってきました。
どうやら仕事に遅刻してしまったようです。
受付のお姉さんと言葉を交わしながら急いで車に向かっています。慌てる彼をお姉さんが呼び止めて、それから私たちに言いました。
「もしツアーに参加したいのなら、彼に送ってもらったらどう? もし、良ければだけど」
(知らない人の車に乗ることの危険性は旅の経験からカタリもよく知っていたけれど、それは勧めるお姉さんたちもカタリ以上によく知っているようで、ぜひにとは勧めませんでした。)
いくつかの質問と状況からカタリは車に乗せてもらうことを選んで、私たちはツアーの出発地である集合地点まで乗せてもらうことになりました。
なんてありがたいことでしょう。
ガイドのお兄さんは車を運転しながら片言の英語で状況を説明してくれました。
彼がガイドであること。ツアーの受付は始まっていて、彼が受付の仕事をやる必要があること、上司が怒って待っているであろうこと、集合場所に着いたら私たちがチケットを買うまで面倒を看てくれること、などです。
集合場所は確かに歩いて行くには遠いところにありました。
到着すると雨が降り始めました。
用意してきたレインウェアを着ます。少し心配です。
集合場所には想像していたよりずっとたくさんの人がいました。ツアーの方法も様々なようです。
後になって分かったのですが、歩きツアーにはいくつかの出発地点があり、場所によってはバスでの移動などと組み合わせたりするものもあるそうです。片道だけ徒歩というものも多いみたい。
私たちのツアーは古くからある伝統的なルートのもので(英語のtraditional「伝統的な」とよく似た綴りの名前が付けられていました)、海の反対側のGenêts(ジュネ)の町から歩いて往復するというシンプルなものでした。
もし私たちが他のルートについて知っていたとしても、迷わずこのルートを選んだことでしょう。
☆ 2017の潮目に合わせたツアーの時刻表
毎日の出発時刻が組まれています。私たちの参加したツアーは矢印のもの。
☆ いくつかある出発地点
私たちのツアーは「A」地点からの往復。
AもBもCも目印となる島「トンブレーヌ(Tomblaine)」を目指します。
送ってくれたガイドのお兄さんに案内されて、無事にツアーに参加登録をすることができました。みんなフランス語だったので、お兄さんに会えなかったら参加登録に間に合わなかったかもしれません。本当に助かった。メルシィ。
お兄さんに言われた通りしばらく他の参加者と待っていると、ガイドのおじさんがやって来ました。
ルートや潮の時刻に詳しくない人が海を渡るのはとても危険な行為と聞きました。モン・サン=ミシェルはスペインにあるサンチアゴ=デ=コンポステーラへの巡礼路に登録されているらしく、かつてはたくさんの巡礼者が訪れたそうです。橋の架かる前は多くの巡礼者が潮の急激な変化に流されて命を落としたそうです。
このガイドの方は専門の知識をもったプロフェッショナル。この人なしには海を渡ることは危険すぎます。私たちの命はこのガイドさんに懸かっているというわけ。よろしくお願いします、リーダー。
さあ、聖なる島へ出発です!!
先頭を歩く杖を持った人が、我らがリーダーのジョエルです。
ツアーの参加者はいくつかのパーティに編成され、パーティごとに専門のガイドがリーダーを務めます。
私たちのパーティは往路は20人くらいで、復路は10数人でした(モン・サン=ミシェルで解散するメンバーが半数ほどいたからです)。
出発すると雨も上がり、気持ちの良い空気。
裸足になって、遠くに見える魔王のお城(のような島)へ向かって歩き出します。
☆ 遠くに見えるモン・サン=ミシェルを目指す
ついさっきまでは海の底だったので、足元はぬかるんでいます。
泥の場所、砂の場所、まだ海水が残る場所など、足元の状況は変化に富んでいました。
川のようになっているところは、海の下に川が流れていたように思えて不思議な感じでした。
泥の中に裸足で入るのは勇気が要ったけれど、えいって入ってしまえば気持ちが良くて面白かったわ。
☆ 泥でぬかるんだ海底
出発してからそれぞれのパーティは離れた場所を進みます。
トンブレーヌという島を目印にするのだけれど、島に近づくパーティと離れたところを歩くパーティがいます。
どこを歩くかはリーダーであるガイドが決めるの。
☆ 遠くを歩く他のパーティ
だいぶモン・サン=ミシェルが近づいてきました。
この辺りになるとパーティのみんなは仲良くなり始めて、いろいろな人とおしゃべりが始まります。
私たちのパーティには何組かのカップルや親子、それにたくさんの子どもたちのいる大家族がいました。
私たちはその家族と特に仲良くなったの。
その家族は夏の休みに集まってきた親戚で、おばあさんとその娘であるお母さん、その子どもといとこたちで、女の子が6人、男の子が1人いました。
男の子はまだ小さかったから、お母さんがほとんどおんぶをしていました。
カタリはそのお母さんに声をかけて、彼女の荷物を最後まで背負ってあげていました。
☆ モン・サン=ミシェルが近づいてきました
私は女の子たちと仲良くなったの。一番年上のエミリーは私と同い年で、みんなエミリーのことが大好き。彼女は英語を話すことができて、穏やかで利発でとっても素敵な子だった。
みんなが滞在している家はジュネの隣町にあって、エミリーや何人かのいとこたちは普段は他の場所に住んでいるそうです。
エミリーは南フランスに住んでいるんだって。
おばあちゃんがチョコサンドクッキーをいっぱい持っていて、私たちはクッキーやタルトを食べながらにぎやかに歩いたの。
それから海底の泥は美容にいいからって、私たちは顔に泥を塗って泥パックにしたの。泥の付いたお互いの顔を見て大笑い。楽しかったな。
☆ 泥パックをして笑い合う
馬で海を渡るパーティもいました。
海の中心へと行くにつれて足元の土は固くて歩きやすい場所が増えてきました。
中には泥に足が沈まないでトランポリンのようにポンポン弾む不思議な場所や、どんどん沈んで足が抜けなくなる恐ろしい場所もあって、ガイドのジョエルはその都度立ち止まっては私たちが遊ぶのを待っていてくれました。
☆ 聖なる島はもうすぐそこ
途中、大きな川のようなところを渡る必要があって、太ももまで浸かって歩きました。流れがあったからちょっと怖かったけれど、手をつないで渡り切りました。
そういう危険な箇所に差しかかると、リーダーはみんなを待たせて一人で安全なルートを探しに行き、目印に杖を挿して戻ってくる。だからみんなは安心して目印の杖を目指しながら安全な道を歩いて行くことができたの。
ガイドのジョエル、かっこよかったです。
そしてついに、
モン・サン=ミシェルに到着!
目的地に到着すると、いったんパーティは解散となりました。
ここからは約40分間の自由時間です。
海から歩いてきた私たちを見て、ツアーのことを知らない人たちは驚きの表情をしていました。
そうですよね、海の向こうからどろどろの足でぞろぞろと上陸してきたらびっくりしますよね。
(海の中はさらさらした砂のような土ですが、陸地の近くだけはどろどろです。)
水場で足を洗い、靴に履き替えます。
さあ、午前中も訪れたけれど、素敵な島の上の村の観光に出発。
☆ 狭くて高低差のある路地
小さな扉や狭い路地。不規則な階段や小さな石造りの家々。まるで絵本に出てきそうな不思議な街並み。
☆ 絵本の中のような
それほど長い自由時間はなかったので、修道院の中に入るのは明日にすることにしました。
村をまわっていると、あっという間に集合時間。
小さな男の子と一緒だったお母さんや他の何人かの参加者はここでお別れ。男の子のお父さんとおじいちゃんが迎えに来ていました。あとの人たちはバスで宿へと帰るそうです。
☆ 帰路へと再出発
後ろ側は森になっている。
帰りは行程の真ん中あたりにある、道しるべとなる島「トンブレーヌ」の横を通りました。
島の周りは淵になっていて上陸することはできませんでしたが、ツアーの間ずっと見守ってくれているような存在感がありました。
☆ 守り神のようなトンブレーヌ
帰り道はよりいっそう潮が引いて、とても歩きやすかったです。
年下の子どもたち、みんなよく最後まで歩きました。
☆ さようなら、海の道
ツアーの終わり、私たちの自転車旅の話をするとエミリーはとても驚いていた。私たちは記念に写真を撮ってから別れました。ここに写真を載せられなくてごめんなさいね。
私たちはとても疲れていたので、エミリーが「絶対に食べるべきよ」と言っていたツアーオフィス横にあるカフェのクレープも食べずにキャンプ場へと向かったの。
歩いていると後ろからエミリーたちの車が来て、少しおしゃべりしてからお別れをした。楽しいツアーだったね。
私たちが疲れた足取りでキャンプ場へ向かっていると、昨日ティーパーティに招待してくれてこのツアーを教えてくれたシルヴィアが車で通りかかったの。行く先は同じだから、乗せてくれたわ。ありがとう。
そして私たちは夕食に招待されたの。
しばらくするとだんなさんのディジェが甥のジネスと一緒に帰ってきた。
二人は日中、家を建てる作業をしているそうです。別荘かしら?
私とカタリとディジェとシルヴィアとジネスと犬のサルト―は、秘密基地みたいなトレーラーハウスの中でごちそうをお腹いっぱい食べました。
おいしい夕飯とチーズとデザートをたくさんごちそうになったの。ディジェとカタリはたくさんお酒を飲んでごきげんだったわ。
この季節のフランスは10時を過ぎた頃に夜の帳が降りてきます。
最後の最後まで魅惑的な出来事がいっぱいにつまった、素敵な一日になりました。
☆明日へつづく☆
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