フランスを自転車で旅します。 ★現在地★
<8日目>
Luna
自転車旅の一日はこうして過ぎていくのです
☆ レンヌ南の村からポンシャトー近郊
ルナです。
保護者のカタリと自転車で旅をしました。
アイルランドのダブリンからスペインのタリファまで。
このときはフランスの西側を南下しているとき。家を出発してから30日目。フランスに入ってからは8日目の一日です。
昨夜はとうもろこし畑の脇の牧草地で野宿をしました。早くに眠ったので、朝早く起きても体の調子は元気いっぱいに回復しています。
昨日見かけた鹿の姿はなかったわ。
夜が明けてすぐのまっさらな新しい早朝に出発です。
☆ 出発の朝
私たちが野営をしたのは小さな村々が点在する丘陵の畑が広がる地域。
レンヌという大きな町を抜けるときにモーターウェイに道を阻まれたので、この土地に迷い込んだの。だから今なお迷子です。
南を目指して次の村へとたどり着きます。
小さな村だけれど、大きくて立派な教会があって、パン屋さんからパンの焼けるおいしそうな香りが流れてきます。さっき朝ご飯を食べたばかりだけれど、お腹空いてきちゃったな。
☆ 村の教会
教会で朝のお祈りをしようとしたけれど、まだ開いていませんでした。
私たちはキリスト教徒ではないけれど、旅をする土地の神様には敬意を払うよう努めています。それに教会の中は外の世界とはまるで違うの。
風に吹かれながら旅を続けていると心と体がばさばさした感じになるんだけれど、教会の加護された空間の中でお祈りをすると不思議なくらい心も体も静かになる。あれはいったいどういうことなのかしらね。不思議だけれど、旅には欠かせない大切な場所です。
☆ 村の民家 あの円形の石積みは何でしょう?
教会は開いていなかったけれどきれいなトイレが併設されていて、そこで水を使って顔を洗うことができました。歯を磨いたり顔を洗ったりできる水道水があるということは、野宿をする者にとっては大変ありがたいことなんですよ。
☆ 小さな村の点在する地域
村から村へ、細い道をたどって南へと向かいます。
別れ道にある道しるべには村の名前が書かれているのだけれど、私たちの持っている地図には載っていないほどの小さな村だから手掛かりにすることができないの。
なので太陽の方角を手掛かりに、南を目指してのんびりと迷い進みます。
☆ いい天気
ようやく大きな道に出ました。
この日は快晴。
私たちの住むこの世界はなんて素敵なところなのでしょう。この世界は醜いものや悲しいことや苦しみに溢れています。汚かったり腹立たしかったり痛くて苦しかったりします。生きることは生きとし生けるものすべてにとって、苦しみに溢れています。
でも、それをぜんぶ含めて、やっぱり世界は素敵なところなのだと思えるひとときがありますよね。
だって、私たちの住むこの世界はこんなにも美しいのだから、って。
通学路の隅にアスファルトを突き破って咲く花を見たときとか、友達と仲直りして笑い合ったときとか、誰かが見知らぬ他人に手を差し伸べているのを見かけたときとか、旅の途中で快晴の一日に巡り合ったときとか。
この日はそんな一日だったのかもしれません。
☆ 川辺の町
丘陵地帯の坂道では自転車の歯飛びが気になっていたところ、カタリが応急処置をしてくれました。
買い物をした時の紙袋に付いている紙製の取っ手の紐を使って、リアディレーラーの辺りを縛ってくれたの。どういう原理なのかよく解らなかったけれど、ほとんど歯飛びがしなくなりました。そんなことできちゃうんだ。
☆ 平原に一軒のカフェバー
私たちはナザレという町を目指していたのだけれど、途中でシャトーブリアンの町に針路を変えていました。
でも777という道に出ることができたおかげで、またナザレの町を目指すことができます。だから再び針路を変更しました。
こんなふうに状況によって自由に行き先を変えられる旅はとっても楽しいです。だって好きなほうへ向かって好きなだけ進んでいいのです。疲れたら立ち止まって休んでもいいし、風向きや気分が変わったら進む方向を変えてもいいし、興味深いものがあったら行き先を変えてもいい。その責任をきちんととるのならば、だけれどね。
☆ 広い牧草地に丸められた牧草が転がる
☆ 木陰のある道
天気が良かったのでお昼ご飯を食べている間に朝露に濡れたテントを干しました。テントはあっという間にすっかり乾いちゃった。ヨーロッパは湿度が低いから、あっという間に物が乾くの。だからヨーロッパの人たちは雨に濡れるのを日本人ほど嫌がらない。特に男性は傘をほとんど差さないのよ。
☆ 古い教会
古い古い素敵な教会。
数軒の民家があるだけの小さな集落にあったの。
この辺りは中世の時代に大きな戦いがあった場所のようです。
☆ 中世の時代に戦いのあった土地
戦地にはお墓と碑が建てられていました。
☆ 戦地の碑
かつて戦のあった土地を旅するときは、現代の平和に感謝せずにはいられません。
それと同時に今なお平和でない国々がたくさんあり、命の危険に毎日毎日さらされ続けている人々がいることを思い出し、彼らの安全を祈らずにはいられません。
1000年後には、現代の人類の時代を「野蛮な時代」と呼べるほど、平和な世界になっていることを願います。
☆ ルドンの町に到着
ルドンというきれいな町に到着しました。
大聖堂があり、電車が通り、運河のある美しい町です。
町の北側は閑散とした静かなところでしたが、中心から南側は明るくにぎわっていました。
☆ 町の庁舎と時計塔
町の中央広場には庁舎と時計塔と修道院と大聖堂が集まっています。その中を鉄橋が通っていて、TGV(フランスの高速列車)のような列車がゆっくりと通ります。
広場のカフェでは人々がのんびりと快晴の昼下がりを満喫していました。
☆ 時計塔は魔女の家
この広場にある時計塔には入ることができるのですが、これがまた奇妙な場所なんです。
☆ 苔むした時計塔内部
時計塔の中には壁に囲まれて入れない部屋がありました。中には入れないけれど、壁にはいくつもの穴が開いていて中を覗くことができます。
おそるおそる部屋の中を覗いてみると……。
☆ 魔女の部屋
なんだかとっても奇妙で気味の悪いものがいっぱいです。
ここは魔女の部屋なのでしょうか。
怖くなってきたので私はすぐに時計塔から出たけれど、カタリはしばらく魔女の部屋を覗いていました。
☆ 光多い大聖堂
時計塔を後にして大聖堂の中へ入りました。
とても広くて光がたくさん入る造りになっています。
私は、あの魔女の部屋はなんだったのかしら、ということばかり考えていたのを覚えています。
なんだったのかしら?
☆ 旅先での守護
☆ 大聖堂に併設された修道院の回廊
☆ 修道院の中庭
修道士たちの日々とはどんなものなのでしょう。
☆ ルドンの町の石畳の商店街
きっと歴史の深い町なのでしょうね。
石畳の道に商店が立ち並びます。
どういうわけかこの一角には自転車旅の旅人たちがたくさんいました。あっちにも、こっちにも。可笑しくなっちゃうくらい。
偶然なのかしら? そこかしこに自転車の旅人がいて、いままで一所でこんなにたくさんの関係のなさそうな自転車旅の人たちを見かけたのは初めて。たまたまそういう星の巡り合わせだったのかしら。
☆ 一日の終わり 今夜の寝床
運河に沿ってルドンの町を抜けます。
しばらく走ってからまたまたモーターウェイに道を阻まれ、その近辺でキャンプ場のマークを発見。でもここまでスーパーに出会わず、食糧もわずかしかありません。
寝る場所よりもまずは食べるものを手に入れる必要があります。
するとすぐ先に町があり、スーパーマーケットを見つけることができました。食料を買って、キャンプ場へと引き返します。
引き返すときにナザレへと向かう道を見つけることができました。
キャンプ場は星の数でグレードが決まっているのですが、このキャンプ場は2つ星だったものが最近3つ星になったそうです。テント1張り、2人で12.5€でした。
☆ キャンプ場には野生のうさぎもやってくる
朝起きて出発し、走って、お昼ご飯を食べて、また走って、眠る場所を見つけて眠る。
シンプルではありますが、それがすんなりといくためには必要とするものがいくつもあります。
この日は天気も良くて、快適な旅に必要なものがあれこれとそろう一日でした。ここでいう必要なものとは、朝の教会で水を使えたことであったり、濡れたテントを乾かせたことであったり、今日・明日進むべき道を見つけられたことであったり、今夜の寝床と食料が得られたことなどです。
そういったものがみんなそろうというのは、ありそうでなかなか少ないのです。
単調なようで、快適で素敵な旅の一日でした。
☆明日へつづく☆
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