Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

「偏屈なヴァイオレット」 菫色した蛙さんのお話『ふあろう』

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菫色した蛙さん。
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彼は哲学者でニヒリストでシュールレアリストで、それでいて夢見がちな現実主義者なの。
使う醤油は茨城県の「紫峰(筑波山の別名)」で、パイプたばこの葉はラールセン、だけど使う文房具はポンポネットメゾピアノがお気に入りというちょっとこだわりの強い蛙さん。
人は彼を「偏屈なヴァイオレット」って呼ぶけれど、話を聞くと面白いのよ。


彼の書いた『ふあろう』という小文を載せてみますね。

 そんな所があるだなんて思わなかったよ。夢と現実の境の世界。境が世界。意味を持たないんだ。意味をもたない言葉は空物さ。リズムと印象。それ自体に意味が含まれていないんだ。意味を囲う殻だっていうのに。ナンセンス! 夢と現実の境の世界でね。いいかい、僕はここで遊んでいるんだ。漂っているんだ。何かのために行為するなんてごめんだね。僕のやることはいつも目的で、手段なんかじゃないんだよ。もちろんここにおいてだけだけどね。浮遊感と重み。「重力」は左右からぎゅっと押してやると「動」になるんだよ。何によって押すか? それは重力自身が自分の重力によってさ。
 僕は何かのために行為するなんてごめんだからね。ここでは。意味もなくあるってことを知ってるかい? 必然的にただあるって知ってるかい? それは手段なんかじゃないんだよ。青い空から青さだけ取ったらどうなるんだろう? おいしいかぼちゃからおいしさだけを取り出すように。そして赤い空から赤さだけ取って、その赤と青を交換するように、青さとおいしさを交換したら? それでもやっぱりおいしい空のそもそもは青い空なんだろうか? 「りんご」がみかんを「みかん」がりんごを意味したって構わないはずだよ。ここでは。なぜなら、いいかい、ここには意味を持たないんだ。「ふあろう」という言葉があったとする。僕はこの言葉の意味を知らない。そもそも意味なんてあるのだろうか? 僕はその言葉に意味を認められない。僕にとって「ふあろう」はふあろうそのものでしかない。それが何だろうと僕には構わない。
 「夢は現実」と言うことができる。でもそれは何を意味しているんだろう。「四角い三角形」とか「まっぴらきっと」とか。僕にとってはぐるぐる回りすぎて気持ちが悪くなるだけのことなんだけど。回転木馬みたいにね。ぐるぐるぐるぐる。上ったり下りたり。気持ちが悪くなって今夜はティーカップでぐるぐる。それでもその言葉の意味はわからない。知ることができない。それこそよっぽど自然だ! 浮遊感と重み。僕は遊んでいるんだ。ここで。そもそもあることがあるものを意味するなんて。あるものそのものでいいじゃないか。いやはやいやはや。不器用な我々には回りくどいことこそ最短の近道。道草がおいしいかまずいかに関わりなく。くしゅん! フィドルディドルディー! あーあ。海と陸のその境ってどうなってるんだろう? って訊かれたらどう答えればいいんだろう? ふあろうとでも言っておこうか。


相変わらずよく解らないです。
でも説明を求めると「シニフィエシニフィアンの不明瞭性」だとか「シュールレアリズムにおける意図されない意図」だとか難しくて長い長い説明をされるから余計に解らないです。

いつもはケロっとした顔でベランダの椅子に腰かけて、花柄のティーカップで紅茶を飲んでいます。

(今回は私もちょっとシュールな感覚に影響されちゃったかも)

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