Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

自転車の旅 ポルトガル編。巡礼路終着の地フィステーラを出発し、大西洋の海岸線を走ります。

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自転車の旅ポルトガル編 1】

ルナです。
保護者のカタリと一緒にヨーロッパを自転車で旅しました。
その軌跡です。
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☆ ポルトガル
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今はまだスペイン。
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 ポルトガル入り2日前
   フィステーラからボイロへ

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アイルランドのダブリンからヨーロッパの旅を始めたカタリと私。島の南半分を巡り、古代ケルトの人々の息遣いや雄大で広大な自然、パブと音楽のアイリッシュ文化を肌で感じてきました。その後、船でフランスへと渡った私たちはフランスの自由な空気を満喫。様々な人と出会いながらモン=サン=ミッシェルや夏のリゾート地を経て、それからなんと私たちは巡礼者ピルグリムになったのです。巡礼者となった私たちは巡礼路を辿ってピレネー山脈を越え、スペインへと入ります。世界中から集まった巡礼者たちと出会いと別れを繰り返しながら、スペインの田舎道を聖地サンチアゴ=デ=コンポステーラを目指して進み続けました。そしてついに巡礼の旅を終えた私たちは、巡礼路の最果ての地フィニステーラ(フィステーラ)へと辿り着いたのです。

アイルランドの旅路
フランスの旅路
巡礼路カミーノの旅路

☆巡礼路「カミーノ」終着地点
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フィステーラ(カスティーリャ語で「フィニステレ」)はスペイン北西にある「地の果て」という意味の古い漁村です。
キリスト教が伝来する以前からケルトの人々の聖地とされてきた土地だそうです。
今はサンチアゴ=デ=コンポステーラ巡礼路の終着地点として多くの巡礼者がフィステーラ岬を訪れます。


☆ 昨夜の宿
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前日の午後にフィステーラの町へと辿り着いた私たちは、細い路地の入り組んだオールドタウンに宿をとりました。
小さな港町には巡礼の長い旅を終えた旅人たちがたくさんいました。私たちは一人の日本人男性に声をかけられて、昨夜はそのおじさんとその友人の方と一緒に港を見下ろすレストランのバルコニーで夕食をとりました。

おじさんはとても親切な方で、私たちは9時過ぎまで夕飯とおしゃべりを楽しんで別れたのですが、カタリは少し考えるところがあったようです。
おじさんは巡礼証明書を手に入れるためにこの巡礼路を歩いたのだそうです。「今回の旅は歩くばかりで面白いことはない」「でもこれで日本に帰ったら人に自慢ができるだろ」と、そのおじさんは言っていました。カタリは後に「あの人にとってこの巡礼の旅はバカンスであって娯楽の一つみたいだ。彼の心は日本にあるままで、入口から出口までぐるっと回るアトラクションに乗っているかのような印象を受けた」とおじさんの印象を語っていました。「そろそろ現実に帰らないとな」というおじさんの言葉には「彼の価値観と僕の価値観は違う。どちらが良いとかそういうことではなくて、旅の捉え方がそもそも別物なんだ」とも。カタリにとって旅は、日常から切り離されたところにあるアトラクションではなくて、人生を賭けて現実に求める対象だということなのでしょう。
巡礼の旅ではある条件を満たすと「巡礼証明書」をもらうことができます。それは本来の目的地であるサンチアゴ=デ=コンポステーラの他に、ここフィステーラとムシア(ムヒア・ムクシア)という町でも証明書をもらうことができます。私たちはサンチアゴで巡礼証明書を受けましたが、ムシアとフィステーラでは受けていませんでした。そのことを話すとおじさんは「じゃあ、何のためにここへ?」と、とても不思議そうでした。おじさんにとってサンチアゴもムシアもフィステーラも証明書を手に入れるために行く場所だったのでしょう。巡礼路の道のりすべても証明書のためだと話していたので。カタリは「はっきりとした目的があって来たわけじゃないけれど、先人の足跡を追って最果ての地に来たかったのかもしれない。少なくとも証明書のためではないですよ」と言いました。


☆ フィステーラの町を後にする
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荷物をまとめ、巡礼宿のあるフィステーラの町を出発します。
サンチアゴ=デ=コンポステーラの町へと続く巡礼路はいくつもあります。ポルトガルからも「ポルトガルの道」というリスボンから続く大きな巡礼路があるので、その通り道の町には巡礼宿があるかもしれません。でもこの日のルートはポルトガルの道から遠く離れた海岸線の道。巡礼宿の期待のできない、久しぶりの自転車旅です。

宿のあてのない旅路というものは、とても自由であると同時にいつでも不安があるものです。予約をした宿があれば「今夜はその場所に行かなければならない」という不自由さがありますが、シャワーとベッドが約束されているというのは安心できます。私たちの旅路はいつでも大きな自由を求めるので、いつでもその日の不安や緊張感もまたつきまといます。
この日はサン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町から15日目。サン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町というのはサンチアゴ=デ=コンポステーラへの巡礼路の中でも一番大きな道「フランス人の道」の玄関口となるフランスの町。この町からサンチアゴまでは、アルベルゲと呼ばれる巡礼宿に困るということはまずありませんでした。つまりこの2週間は、一日の終わりには宿に泊まることができるという安心感のある旅路だったのです。
でも、今日からは違います。ポルトガルの道はアルベルゲを見つけるのが簡単ではないと聞いていましたし、巡礼路を辿る予定でもありませんでしたから。また、安心しきることのない、自分たちの行動に対する責任を管理し続ける旅路へと戻ったのです。
大きな自由と共に。


☆ 朝靄の中出発
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私たちはフィステーラの町からヨーロッパ大陸の西端を、大西洋に沿うようにして南へと向かいました。朝の空気にはまだ靄がかかっています。
出発の朝はいつだって、心が凛とします。

☆ 朝靄残る山
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さあ巡礼路を外れて、未知の世界へとペダルをこぎ出しましょう。


☆ 朝の海
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なんだか海がとっても静かに感じられます。
この浜辺を歩いてサンチャゴを目指した巡礼者も多くいたのでしょうね。
なぜだか桂浜を思い出しました。

☆ きれいな水
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何色っていうのかしら?
大西洋の水はとってもきれいな青や緑をしていました。浜の砂もさらさらしていて白くてきれい。


☆ 海岸線の道
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海岸線は幾度も弧を描いて湾曲しながら延びています。
だから砂浜や対岸の山が見えるような素敵な風景が何度も何度も続きました。風光明媚とは、こういう所をいうのでしょうねえ。

☆ 岬の小山と湾
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巡礼路へと入り、私たちが巡礼者となったのは、私の心が弱くなってしまったのが始まりでした。
アイルランドからフランスへと渡り、カタリと私は自由な旅を続けてきました。朝目覚めてから、その日の自分たちの行動も進路も居場所も決めることができました。風の吹く方向へと向かってもいいし、興味深いものがあれば立ち寄ってもいい。天気が良ければ一日中のんびりとお洗濯なんかをして過ごしてもいいし、同じ場所に何日も留まっていてもいい。自分たちの行動を、自分たちの意志で決めることができました。毎日、毎日。
カタリにとってそういう旅をすることは彼の人生においてとても重要なことなんです。それは私にとってもそう。
カタリはよく言います。「自由というのは好き勝手をやることではなく、自分の行動に責任をもつことだ」って。「自分の人生なのだから自分の望む生き方をすればいい。ただしその行動の責任はすべてとらなきゃいけない」って。
私たちはとても自由で、可能性にあふれた毎日を旅の中で過ごしていました。そしてその自由は、私にとっては少し大きすぎたのかもしれません。
フランスを旅しているとき、私の心は弱ってしまいました。

カタリは私の変化に気が付いてくれました。そして、まったくの自由だった旅に、目的地をもたせようとしてくれました。
それが聖地サンチアゴ=デ=コンポステーラで、カミーノ(巡礼路)の旅路だったのです。

☆ 入り組んだ美しい湾
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巡礼の旅路には目的地があります。目指す方向が決まっていて、毎朝自分たちで進む方角を決めたりはしません。そこには束縛があり、まったくの自由がないのですが、そのときの私にとってはそれが安心だったのかもしれません。私の心は少しずつ回復していきました。
それに巡礼路には多くの宿があって、食料を買えるお店があって、そしてなにより多くの巡礼者仲間と宿の人々がいました。人と触れ合うことがこんなにも温かいと感じられたのは、そこが巡礼路だったからというだけではなさそうです。
巡礼の旅を終え、サンチャゴの町で聖ヤコブのお墓へ辿り着いたとき、私は泣いてしまいました。理由はわかりません。でも、心がどうしようもなくなって、胸がいっぱいになって、涙をとめることができなかったんです。そのとき私の心はもう弱くはなくなっていました。

巡礼の旅路には目的地があって、進むべき方向があって、宿があって、仲間がいました。安心できる旅路でした。
今日から、また大きな自由のある旅が始まります。今は怖くありません。私はその自由を、喜んで迎え入れたいと思っています。

☆ 大西洋の港町
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いくつもの湾を周って、Murosという絵に描いたようなヨーロッパ大西洋のきれいな港町を通り抜けてNoiaという町に辿り着きました。
この湾(河口)は Ria de Muros e Noia と呼ばれ、観光地でもあるようです。ほんと、きれいな場所。
宿のありそうな大きさの町は、ここNoiaの町が今日最後になりそう。宿があれば泊まろうかと話していたところ、巡礼者ピルグリムの象徴であるホタテ貝のマークがあったのでそこへと向かってみました。

☆ 山へと続く森の入口
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港町から山を上がっていくと、森の入口に門のようなトンネルがありました。どうやらホタテ貝の印はこの先へと続いているようです。
自転車を押しながら急な坂道を森へと入っていくと、一軒の民宿のような小さな宿屋へと辿り着きました。海と港が一望できる、素敵な宿です。
宿の入り口脇には巡礼の印であるホタテ貝とは違う、宿屋の印がありました。スペインで巡礼宿以外の宿を訪ねるのは初めてです。
宿から出てきたのは十代と思われるお兄さんでした。カタリが部屋の空きを尋ねると、今夜はすべて予約済みとのこと。もし空きがあったとしたら、一人41€だそうです。宿に泊まれずがっかりしたけれどお兄さんはとても親切な人で、ポルトーという大きな町からの巡礼路や今いる位置などについて丁寧に教えてくれました。彼もかつてスペイン南のセビリヤからサンチアゴ=デ=コンポステーラまで自転車で旅をしたことがあるそうです。
私たちはお礼を言って、再び南を目指すことにしました。半島の山を越えるルートです。今夜は野宿になるだろうと覚悟しました。

☆ 半島を越えるのどかな山道
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海を離れて山道を登っていきます。
道は山上の農村を通る道で、お店などはいっさいありません。都会から遠く隔たった、はるか昔から山の上にあり続けてきたような村々のある、独特の雰囲気の山でした。二つ通った村の中心には、水の湧き出る泉がありました。私たちは二度、泉で水を使い、登り坂で火照った腕や顔を冷やしました。冷たく澄んだ水で汗を流すと、体も心も清々しくなります。
緩やかに登り続けた道は少しずつ空が広くなり、やがて峠を迎えました。ここから下り坂です。自転車旅では「峠越え」は一つのイベントです。大きな峠も、小さな峠も、苦労して登ってきた高所から一息に坂道を下っていく爽快感は徒歩や車では味わえません。私たちははしゃぎながら駆け下りました。

☆ ボイロの町のキャンプ場
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下り坂はあっという間に終わります。半島を横切った私たちはボイロという町に到着しました。町にはお店があり、野宿を覚悟していた私たちは食料を買って海を目指しました。海の近くなら野宿がしやすいかもしれません。この町は海に面していて、砂浜があったのです。
でも少し行ったところでキャンプ場のマークを見つけました。行ってみると少し迷っただけですんなりと見つかり、すぐさま受け入れてもらえました。砂浜の目の前のキャンプ場です。やったあ。代金は明日の朝と言われていくらなのかもはっきりとは伝えられなかったけれど、一人4.8€+テント一張4.8€で、14.4€になりそう。
小さな町なのでお店との距離もあまりありません。私たちはもう一度買い物に行ってから熱いシャワーを浴びました。今夜は野宿になると思っていたから、シャワーを浴びることができて幸せです。デザートもあるし。

☆ デザートのメロン
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デザートにはメロンを買いました。二人で分けてもいっぱい食べられます。のどが渇いているときのメロンは甘くておいしいです。

☆ 魔法のビール
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カタリは地元のビールを買っていました。
名前はなんと「魔法のビール」(^o^)/
魔法のような美味しさだったそうですよ。


明日へつづく  ↓
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