Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

自転車の旅 ポルトガル編1日目【前編】。国境の素敵な町トゥイ。

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自転車の旅ポルトガル編 3】

保護者のカタリとヨーロッパを自転車で旅しました。
その旅の記録です。
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☆ ポルトガル
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この日の朝はまだスペインにいました。
いよいよ今日、ポルトガルに入ります。

 ポルトガル1日目【前編】
  (ポルトガル直前まで)
  O Vao から Tui へ

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ここまで私たちはケルト文化の息づくアイルランドを巡り、自由の国フランスを縦断し、スペインのサンチアゴ=デ=コンポステーラへの巡礼路を旅してきました。そして巡礼路最奥の地フィステーラからスペイン北西部を南下して、この日いよいよポルトガルに入国します。

☆ アイルランドの旅路
☆ フランスの旅路
☆ 巡礼路「カミーノ」の旅路

☆ 出発
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景色の良い入江の奥の町O Vao。昨夜は巡礼者が宿泊することのできる巡礼宿(アルベルゲ)にお世話になりました。
昨日は「お代は明日」と言われ、まだチェックインもしていません。宿主さんは別の自宅にいるみたい。荷造りを終えても宿の中はがらんとしています。このまま出発することもできるけれど、私たちはちゃんと宿代を払いたかったのでしばらく待ちました。やがてお隣の家から宿主さんがやってきて、宿代を渡すことができました。一人10€です。
この日は肌寒い霧の中の出発。今日はいったいどんな旅の一日になるのかしら。


☆ レドンデラの町
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初めにやって来たのはレドンデラという町。入江が湖のようになっているその南端に位置しています。山と谷と鉄橋のある町で、歴史の古そうなオレンジ屋根のお家が寄り添い合っているところでした。近くにも遠くにも石橋があって、遠くに眺めたり下をくぐったりしておもしろい町です。


☆ 山の上にかかる霧と霧の下に架かる石橋。
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町の外れから登り坂になりました。町外れは人も少なく、灰色の霧のかかる道はとても静かです。
登り坂の上のほうには教会がありました。


☆ 丘の上の墓地
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教会へ向かうと、そこは谷側へと張り出した墓地になっていました。
墓地は大きな壁状に造られていて、その中に小部屋のようなお墓がいくつもあります。日本の墓地とはまるで違うのに、「ときどき家族や親類などが訪れて静かに祈る場所」として日本の墓地とそっくりな雰囲気がありました。墓地の敷地内には教会があって、それも日本のお寺と墓地の関係にそっくりです。人が大切にするものは、流儀は様々でも本質はきっとどの時代、どの土地でもよく似通ったものなのでしょうね。

ここからしばらくスペインの辺境にある村と山と石橋の景色が続きました。

山を越え、O Porriñoの町に抜けた辺りでカミーノに遭遇しました。カミーノとは小道を指すスペイン語で、ここではサンチアゴ=デ=コンポステーラの町へと続く巡礼路を意味します。サンチアゴ=デ=コンポステーラへつながる巡礼路はいくつもあり、一番多くの人が旅をするのはフランスのサン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町から続く「フランス人の道」。私たちもそのフランス人の道を通って、巡礼の旅をしてきました。
    ↓ 巡礼路の旅の記事
miraluna.hatenablog.com

ここで出会ったカミーノ(巡礼路)は「ポルトガルの道」。ポルトガルリスボンからサンチアゴ=デ=コンポステーラまで続く、約600kmの道です。
巡礼路は山を越えたり街を抜けたり畑を横切ったりと様々な場所を通っていますが、ここで出会ったカミーノはとてもへんてこな場所を通っていて、私たちに不思議な印象を与えました。
下の写真がそうです。

☆ 非現実的な工場群の巡礼路
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私たちが巡礼路を辿っていくと、その道はなんと工場群の中へと続いていきました。この日は日曜日。まっすぐに伸びる道の左右に広大に開けた場内からはほとんど物音はしません。人影もまばらです。ときたま小さな工場から規則的な機械音が聞こえてきます。動くものといえば工場群の中の一本道を点々と歩く巡礼者たちだけ。どんよりとした重々しい空の下の静まった工場群。そこに真っすぐと伸びる巡礼路を自転車で走っていく。なんだかとっても奇妙で、夢っぽい感じ。私もカタリも不思議な感覚にとらわれたひとときでした。


☆ やがて青空が
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奇妙な工場群のカミーノを抜けてしばらく行くと、どんよりとした雲間から青空が見え始めました。西洋ススキがたけくらべをする坂道は、まるで青空へと続いているかのよう。その坂道が続く先にはTui(トゥイ)の町がありました。

朝からずっとどんよりした天気で、霧のかかった薄暗い世界から青い空の見える希望に満ちた気分のとき、トゥイの町に到着しました。自転車旅では天気と気分は大いに影響します。雨の日には気分は落ち込むし、明るい空の日には心が弾みます。だから天気の良いときに訪れた町では、素敵な印象を受けることが多いです。このトゥイの町もそう。もともと素敵な町だったところに明るい日差しが射したので、私たちにとってトゥイは特別素敵な印象をもった町になりました。そしてこの町は、スペインの端っこの町、ポルトガルとの国境の町でもあるんです。


☆ トゥイの町の入口のパン屋さん
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トゥイの町の入口で素敵なパン屋さんを見つけました。地元のお客さんたちがたくさん来ています。
お腹を空かせた私たちが店内に入ると、パンの焼けるいい匂いに包まれます。カフェも営業しているようで、紅茶やケーキなんかもあります。写真だと分かりにくいですが、ガラス窓からは光がたくさん入って店内は広くて明るかったです。お店をきりもりしている女性は明るくて優しい方で、スペイン語を話せない私たちにも笑顔でパンを売ってくれました。私たちはそのパン屋さんの店のカフェテラスで、焼きたてのパンを食べました。とっても素敵な昼食でした。カタリも「素敵な日曜日だ」と言っていました。おいしかったな、焼きたてのパン。


☆ Tuiの町
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トゥイの町は小高い丘のようになっていて、一番高いところに広場と教会があり、近くに大聖堂もあります。ポルトガルとの国境になっているミーニョ川沿いにあるので、東側の坂道から辺りを眺めると開けた景色を望むことができます。眺めが良くて歴史深くて明るい素敵な町。というのがトゥイにもった私の印象です。
上の写真は広場前の通りで、お城のような石造りの学校と教会がありました。教会ではミサをやっているところだったので、奥のほうまでは入りませんでした。


☆ 東の坂道を下ればミーニョ川
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私たちがミサを見て教会から出ると、たくさんの大きな犬たちを連れた人たちが通りました。その中の一匹が近づいてきて、私の手をべろり。大きなラブラドールレトリバー。頭をなでてやると、その犬のリードを持ったお姉さんが英語で話しかけてくれました。
彼女はオランダの人で、野良犬の世話をするボランティアのためにこの町に来ているそうです。私たちの自転車旅にお姉さんはとても興味をもったようで、興奮気味にいろいろなお話をしました。私はたくさん褒めてもらいました。
ヨーロッパでは、カミーノでは特に、多くのボランティアの人たちと出会います。人々は人々のために時間や労力を遣っています。彼らの行動や言葉に耳を傾けると、それはボランティアをする人たち自身の喜びであることに気付かされます。自己顕示のための喜びではなく、与えることによる優越感でもなく、見返りを得るための打算でもなく、もっとシンプルで純粋に誰かが喜んだり救われることがただ嬉しいという無邪気な喜び。その単純で純粋な喜びのために時間や財産や労力を他人に差し出す人がなんて多いことでしょう。この旅の中で私はそのような素晴らしい無邪気な人々をたくさん見ました。そしてそのシンプルな喜びは、身勝手な喜びよりももっとずっと大きな喜びなのだと思いました。だけどそれを行動に移すのは簡単ではありません。私はそれができるような人になりたいと、純粋な喜びと行動する力をもてる人になりたいと、そう思っています。
カタリも同じように感じていたのか、少しぽーっとした表情でボランティアのお姉さんと話をしていました。そのお姉さんは明るくて礼儀深くて賢くて、そしてとってもかわいらしい美人だったけど、ぽーっとしてたのはまさかそれが理由じゃないわよね。


☆ トゥイの大聖堂
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お姉さんと別れた後、教えてもらった大聖堂へ行きました。歴史ある立派な大聖堂で、観光客もたくさんいました。
中に入るとこちらもミサをやっていて入れる場所が限られていたのですが、すぐにミサが終わって奥まで入れてもらえました。グッドタイミング。大聖堂の中はとても広くて、私たちはぐるっと見て回りました。それから席に座って、キリスト教徒ではないけれどお祈りをしました。私たちは旅の中で毎日のようにお祈りをします。それはキリスト教に限らず、その土地の人々が大切にしている神様や精霊や守護者に対してだったり、土地の生き物や自然に対してだったりします。カタリがよく言うんです。文化の違う土地を旅するときにはその土地の人々が大切にするものは大切にしなさいって。ヨーロッパでは教会や大聖堂が見つかれば毎日のようにそこでお祈りをします。旅の無事と、素敵な町や人や自然との出会いに感謝して。


☆ 大聖堂内部
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日本にいるときも、私はよく神社やお寺にお参りします。特別な用事がなくても、神社やお寺の前を通りかかったときに寄ったりします。道端のお地蔵様に手を合わせたり、辻の社や祠に頭を下げたりします。そのときの、敬虔な気持ちが好き。凛とした、それでいて和やかな気持ちになります。それは荘厳なゴシック建築の真ん中でお祈りをしても同じような気持ちになるの。不思議ですよね。旅に出るときにはいつもお守りを持っていって、寝る前にやっぱりお祈りをします。宗派とかそういったものとは関係なく、きっと人は本能的に何かを信じる生き物なのでしょうね。


☆ Tuiの町の模型
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町の模型です。素敵な造りの町だと思いませんか?


☆ 町外れの公園
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トゥイの町が見えます。
トゥイの町の外れの公園。私たちはここが国境だと勘違いしていたの。すぐ横にはポルトガルの商品と思われるお土産品が並ぶ免税のスーパーマーケット。スペインでは見かけなかったパッケージのチョコレートやクッキーなどのお土産がたくさん売られています。国境と勘違いした私たちはそのスーパーでクッキーを買い、トゥイの町を眺めることのできるこの公園でクッキー乾杯をしてポルトガル入りをお祝いしました。そしていよいよ長らくお世話になったスペインとはお別れ、という切ない気持ちで出発。さようならスペイン。お世話になりました。


☆ あれあれ? 国境の看板が。
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だけど少し行くと……。
あら? 国境の看板が出てきたわ。まだポルトガルに入ってなかったのね。
シェンゲン協定が結ばれる前まではきっとパスポートコントロールだったと思われるところに国境警備の車とスペインの看板がありました。そしてそのすぐ先はミーニョ川とそこに架かる橋。どうやらこの川を渡るとポルトガルのようです /(#^υ^#テヘ


☆ 川の向こうはポルトガル
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この川こそ本当の国境。橋を渡ればいよいよポルトガル入りです。
向こう岸に見えるのは要塞かしら?

さあ、ポルトガルの地へ向かいましょう。

【後編】へつづく  ↓

miraluna.hatenablog.com


昨日の日記  ↓

miraluna.hatenablog.com

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