本当は色なんてない。こんなにきれいな青なのに。
不思議で美しい構造色をもつ石。
「スペクトロライト」
化学式:曹長石 Na(AlSi₃O₈)
灰長石 Ca(Al₂SiO₈) の組成相。
和名:曹灰長石
英名:Labradorite ←?
ラブラドライト?
そうなんです。スペクトロライトはラブラドライトの一種なんです。
ラブラドライトの名前の由来は、発見地がカナダのラブラドル半島だったから。でもその後にフィンランドのユレマーでも大きな産地が見つかったの。ユレマー産のラブラドライトは石そのものの地の色が黒くて、輝きが強いのが特徴。虹色(スペクトル)に強く輝くから、ラブラドライトだけれど「スペクトロライト(Spectrolite)」という特別な名前が与えられたの。でもその後マダガスカル産のラブラドライトも虹色の光が強いことから、スペクトロライトと呼ばれ始めているみたいです。
【構造色】
さて、このきれいなスペクトロライトですが、実はこの青(虹)色は石がもっている色ではありません。角度によってはきれいに輝く青や虹色ですが、角度を変えるとその色は消えてしまいます。石自体は白っぽかったり黒っぽかったりで、虹色の色素はもっていないんです。
ではこの色はどこから来るのでしょう?
この色は「構造色」といって、光の反射によって生まれる色なんです。虹や、孔雀の羽や、玉虫や、鰯のお腹や、シャボン玉などが構造色。虹もシャボン玉も、それ自体に色素はないですものね。
☆ 構造色をもつモルフォチョウ
"Garoch"さんによる"Pixabay"からの画像
モルフォチョウの翅は鱗粉という粉のようなもので覆われています。鱗粉は70x150μmくらいの大きさの板状のもので、列状に並んでいます。さらに鱗粉を拡大してみると、リッジと呼ばれる青い筋が無数に平行に並んでいます。この筋を横から見ると図書館の本棚のように凹凸のある側面が平行して続いています。
この凹凸のある構造に光が当たると、(光を波として捉えると)波の干渉(波同士がぶつかって波長を強めたり弱めたりすること)と回折(光が回り込んで拡がる現象)の作用で、光は虹色の輝きを放ちます。
つまり構造色は色素のような色の実体はなく、反射する光の波長を特殊な構造で変化させることによって「そういう色に見える光」を生み出している色ということですね。
モルフォ蝶や多くのラブラドライトでは、青色の波長だけを反射する構造になっています。ラブラドライトは青が最も多くて、黄色や紫、赤は少数派です。
☆ フィンランドのユレマー産「スペクトロライト」
こんなにきれいな色をしていても、虹に色がないように、スペクトロライトの青い輝きもまた、実体のない色なのですね。
少しでも見方を変えると消えてしまう輝き。見方を変えれば美しく光る輝き。そんな儚げなスペクトロライトの青が、私は好き。