夏のバカンス フランスのリゾート地を行く
フランスを自転車で旅します。 ★現在地★
夏のフランスのリゾート地はバカンスを楽しむ人たちでいっぱい。ビーチの点在する海岸線を南下します。
ルナです。フランスの西側を保護者のカタリと自転車で旅をしています。
アイルランドを回って船で大陸に渡ってきたの。この日はフランスに入ってから10日目。旅の一日を紹介します。
☆ ブールニャフ南の草原からアヴリル北の森の牧草地へ
昨日の夜は嵐のような強い雨と風だったの。
今日はどうなってしまうのでしょうと思っていたら、朝起きれば晴天。
なんてありがたいことでしょう。
野営地を後にして、無数の小川と池と水路が網の目のように巡っている広大な平原地帯を進みます。
畑と牧草地を兼ねている様子で、海水と淡水の入り混じる小川を池と水路でうまく分けて利用しているようです。
あまり見かけたことのない土地の様子なのに、それでいて日本の稲作地域の初夏の風景にも似た懐かしさのある土地でした。
やや向かいから吹く横風が、少し強くなってきました。
シャラン、ロシュという大きな町への岐路を越えて、ノワールムティエ=アン=リルという島への岐路がある小さな村の交差点へ辿り着きました。
この島は昨日からずっと海の向こうに見えていた島で、大西洋にぽんと飛び出した島と大陸とがまだへその緒でつながっているような形。そのへその緒を渡って島まで行くことができるの。
島まで行ってみたい思いもあったけれど、今回は寄らずに南下することにしました。
この島への交差点のところには、今まで何度となくフランスで見かけてきたキャンピングカーの駐車スペースがありました。
今までは素通りしてきたけれど、ちょっと立ち寄ってみるときれいな公衆トイレや水道がありました。まるで日本の道の駅のようです。おかげで水を使って顔を洗うことができました。ありがとう。
アイルランドにもこういう場所がもっとたくさんあればいいのにな。
☆ 次の町へ
この日はずっと Les Sables(-d'Olonne)という町を目指して走ったのだけれど、頭の中では甘いサブレがいっぱいに浮かびっぱなしだったの。地図上には Choletという町があって、これはショコラ。La Garnacheという町は Ganache(ガナッシュ・生チョコレート)。
幸せいっぱい。なんておかしな国に迷い込んだのかしら、って。
もちろんこの後立ち寄ったスーパーでショコラとデザートを買い込んだのは言うまでもないわ。ショコラは200gのおっきなのをね。
☆ 砂浜海岸沿いの道
海沿いには砂の散歩道があって、自転車も通れたので少し走ったの。でも砂は自転車にとって良くないので、少し心配もありました。
以前にカタリが能登半島の辺りでホイールのハブに砂を噛みこませてしまって苦労したこともあったし、チェーンもすぐに摩耗してしまいます。
自転車にとっては、なるべく砂の上を走ることは避けたほうが良いでしょう。でも私たちにとっては、砂の上を軽快に走るのは楽しい体験でした。
☆ きれいな町でお昼ご飯
しばらく海岸に沿って走ると、静かできれいで可愛らしい小さな町に辿り着きました。
夏のリゾート地の町といった雰囲気です。
私たちはスーパーでお買い物をしてから(この時ですよ、お菓子を買い込んだのは)、お昼ご飯を食べました。
私が美味しいポテトサラダにほっぺを落としそうになっていると、ジプシー風の3人組が声をかけてきました。おじさんとお姉さんとお兄さんの3人組は大いに酔っぱらっていて、大きな声で歌ったり町の人に声をかけたりしていました。
ジプシーのように見えたのは、何日も着の身着のままの服装と、自由な陽気さと、そして何より誰にでも親し気に打ち解けて近づくその馴れ馴れしい態度でした。
私とカタリは他の旅で何度か本物のジプシーに出会っています。ジプシーたちのスタイルは様々で、行動も言語も多様ですが、人間同士の親和力とでもいうのかしら、あの家族に接するときのような馴れ馴れしい態度はどの国のジプシーにも共通している独特の感性のようです。
他人の家にふらっと入って「夕飯食べさせて」と言う人もいたし、友達同士遠足のときにお菓子を交換するように物や食べ物を道行く人と気軽に交換しようとする人もいたし、急にカタリに抱きついてきていちゃいちゃし始める女のジプシーもいました(それに応じるカタリもカタリだと思うけど!)。
おまじないや占いをしたり、町にいたり車で移動していたり、騒がしかったり静かだったり、行動は様々ですがその馴れ馴れしい感性だけは今まで出会ったどのジプシーにも共通していました。
ここで出会った3人組(きれいなお姉さんが特に)にも、馴れ馴れしい態度が存分にあったため、私たちは彼らをジプシーのように感じたのです。
ジプシーに何度か出会ったことがあるとはいえ、大きな声で無遠慮に近づいてこられるとやっぱり私はちょっと怖いのでカタリの後ろに隠れます。
お兄さんが私たちのショコラについて何かを話していて、カタリはショコラを少し分けていました(ジプシーに食べ物をねだられたら分けるのが当然、という風習の国は今も多くあります。「日本人や韓国人の旅行者は特に、バクシーシ(喜捨)や大道芸のチップや物乞いの人へのコインなどの文化についてもっと理解を深める必要がある。相手のためにも、自分たちの身を守るためにも。」とカタリは言っています。)。
ジプシーたちは親し気で、危険があって、非常に興味深い独特の風習と感性をもっています。彼らが近づいてきたときには警戒する必要がありますが、もっと知りたい興味深い人たちです。
この時に出会った3人組は、旅をする本物のジプシーではなかったと思います。
3人は私たちや道行く人々に何度も何度も「チン!(乾杯!)」と繰り返しながら、ふらりふらりと去っていきました。会う人会う人みんなに親しく声をかけながら。
まるで嵐が去った後みたい。友達と遊んで別れた後のような淋しさが少しと、台風一過の安堵のような感じ。私たちはやれやれと胸を撫でおろしました。
☆ シュールなほどに整然とした道
お昼を食べた小さな町を抜けてからしばらく進むと、広い野原に新しく整備されたと思われる整然とした道を通りました。
カタリはこういった「命溢れる自然」と「整然とした人工物」が織りなすコントラストからインスピレーションを受けるそうです。
だからカメラにはこんな感じの写真がいっぱい収められているの。
旅先だけではなく、日本でもね。
☆ 自然物と人工物のコントラスト
やってきました。サブレの町!
ついに、今日一日ずっと目指してきたサブレの町に到着しました。
どんな町なのでしょう? 甘い香りがしてきそう。
☆ サブレの町
☆ 明るくてにぎやかな町
町を抜けるとそこは大リゾート地の海。
海です。サブレの町は大きなホテルやショッピングセンターのある海辺の大リゾート地でした。
☆ 海辺の大リゾート地
海辺には別荘やホテルが並立しています。
連なるレストランとショッピングウインドウ。
夏のバカンスの町です。
☆ レストランとお店が連なる
どうやら夏の間中アパートを借りたりホテルに泊まったりして、多くの人が夏のバカンスを楽しむ町のようです。
大変な賑わいようです。
冬の間は閑散としているのかもしれません。
数年前に上映していたムーミンの映画『南の海で楽しいバカンス』に出てきた町にそっくりです。
ヨーロッパ各地にそんな夏のバカンスの町があり、多くの人が夏の間中アパートを借りて過ごすという文化があるのでしょう。
☆ インフォメーションセンターの前にはメリーゴーランド
海辺の通りは大変な賑わいを見せていましたが、町そのものはレンヌのように広域に広がる都市ではなく、ビーチ近辺にぎゅっと施設が詰まった小規模な町でした。
そのおかげで町に入るのも町から出るのも簡単でした。
☆ 夏に賑わうリゾート地
サブレの町はどこも宿がいっぱいだったので、町を抜けて今夜泊まれる場所を探します。
Avrillé(4月)という町でこの日初めての教会に入りました。
この日は珍しく夕方まで教会に入らなかったのですが、普段はもっと頻繁に教会に出会うことができます。
そして毎日のように教会でお祈りをしています。
この町は小さいながらも商店と教会とインフォメーションセンターがありました。そして近所にはキャンプ場が3つもあるそうです。
近くにあったキャンプ場はプールのあるファミリー向けのキャンプ場で、ポントルソンの町にあった宿よりも高いキャンプ場に似ています。
少し遠くにあるけれどシンプルなキャンプ場を目指してみましたが、遠くて見つけることができずに戻ってきました。
カタリが「進むか」と言って町を出ようとしたのですが、しばらくは何もなさそうなので危険と判断してやめました。この日はすでに110km以上走っていましたし。
そこで商店で食料を買って、遠くにあるキャンプ場を目指した帰り道に見つけた牧草地へと向かいました。
☆ 森の中の牧草地
その牧草地は森の中にありました。
今夜はここでキャンプです。
テントを張って、夕飯を食べます。
なんて自由なのでしょう。
草の上にじかにお尻をついて座り込めば、大地の柔らかさと温かさが伝わってきます。まるで大きな生き物みたい。
私たちは誰しもこの大地の上にいるのね。
普段は何気なしに通り過ぎてしまう大切なことにも気が付かせてくれるような気がします。
上から見下ろしているばかりでは気が付かない。大地にひれ伏してぎゅって抱きしめないと、大地(地球)の温かさと優しさはわからない。
小さい頃はもっと草の上で転がったり寝そべったりして、今よりずっと世界(大地)に対して理解があったように思います。
今はその大地の上を自由気ままに旅している。
その大地を感じなきゃ、うそってものよね。
☆ 大地の上に眠る
この夜、遠くから風に乗ってサーカスの音が聞こえていました。
どこかでピエロが玉乗りをして、子どもたちが目を輝かせているのでしょう。
それよりもっと遅くには、テントの周りを鹿と思われる生き物が歩き回っている足音が、夢うつつの中にぼんやりと聞こえていました。
☆明日へつづく☆
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