Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

コルクの森と畑地を越えて。辿り着いたのはお城と穴倉みたいな宿。ポルトガル自転車旅10日目。

Luna

自転車の旅ポルトガル編13】
保護者のカタリとヨーロッパを自転車で旅しました。これはポルトガルでの旅の記録です。
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ポルトガルの旅路10日目
サンタレム(Santarém)からモンテモア(Montemor-o-Novo)へ。

 10日目の道のり
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大聖地ファティマを旅立った私たちは、ミラ山を越えてサンタレム(サンタレン)という町に到着しました。歴史深い町のようで、石畳のオールドタウンには様々な様式の教会がありました。私たちは町の中心にある、まるで病院のような巡礼宿にお世話になりました。そこではなんと自転車も入れていいプライベートルームに泊めさせてもらえたんですよ。今日はサンタレムの大きな川を越えて、モンテモア(モンテモル)という町を目指します。

☆ 朝の市場
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快適だった宿を朝早く出発。空気が涼しく、いい天気。気持ちの良い出発です。
守衛さんにあいさつをして、お世話になった宿を後にします。市場の横を通ると、まだ数人の人がのんびりコーヒーを飲んでいるだけで、開場もしていませんでした。日中はきっと多くの品物とお客さんで活気づくんだろうなあ。

☆ 町の教会で朝のお祈り
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市場を過ぎて小高い丘に出ると、町の教会があります。教会はお寺の朝のように早くから開かれていることもあります。私たちは教会に入り、一晩お世話になったお礼をしました。それから今日一日の旅の無事と、親しい人々の幸福を祈りました。キリスト教徒ではない私たちも、できるときだけですが、教会での朝のお祈りが毎朝の日課になっています。

☆ 橋を渡る
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さあ、町の丘を颯爽と下ったら、川を渡って旅立ちましょう。
町のふもとに流れている大きな川は、昨日の夕方、サンタレムの町の公園から見た川です。私は「川を渡る」という行為にときどき特別な印象をもつことがあるんです。川というのは「こちら側」の土地と「あちら側」の土地を隔てているもので、「川を渡る」ということは、他の土地(大袈裟に言えば他の世界)へと旅立つことのように思えるんです。まだ私が足を踏み入れたことのない新しい世界。そこへと渡っていく。そんなわくわくした「川を渡る」という行動から、今日の旅は始まりました。

☆ 巨大スプリンクラー
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川のほとりの畑には、ものすっごく大きなスプリンクラーが時計の針のように円を描きながらとうもろこし畑に水をまいていました。まるで緩やかな田舎の時間を刻む時計のように、ゆっくりと、確実に、回転しています。規模が大きいなあ。

☆ トマトの収穫
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橋を渡りきると町があり、町を抜けるとしばらくは広大な畑地帯です。遠くに見える大きなトラックは何をしているんだろうと見てみると、なにやら赤いつぶつぶを大量に空中へと放り投げて、大きなトラックの荷台に山積みにしています。赤い粒々をよおく目を凝らして見てみると、それは真っ赤なトマトでした。
あんなにたくさん! トマトトマト! 学校のプール一杯分くらいあるんじゃないかな。こちらも規模が大きいなあ。

☆ 広い土地
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この辺りは乾燥した広い土地がずうっと続いていました。乾いた草の平原にところどころに丸い木々が生えていて、なんだかシュールレアリスムの絵画みたい。

☆ 川沿いの静かな町コルシェ
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Raposaという町を抜けて、コルシェ(Coruche)という町に着きました。町と町の間にはお店も家もありませんでしたが、コルシェの町にはスーパーがあって、デザートにアイスケーキを食べました。とってもカラフルで甘くておいしかった。思い出すだけでも幸せな気分になる。

☆ 皮をはがされた木々
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コルシェの町を出発すると、道はやがて森の中へと入っていきました。でもその森がとっても変なの。森の木々が皮をはがされているんです。上の写真をよく見ると、木々の幹の下半分だけ黒っぽくなって、上は白くなっているのが分かるでしょうか? これは1~2mくらいの高さより下の皮がはがされているからなんです。熊や鹿などの動物か、アリなどの昆虫の仕業でしょうか。白黒パンダみたいになった森がしばらく続きました。

☆ 森の中の大きな工場
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そんな森の中に、大きな工場が突然現れました。何やら黒っぽいものが大量に積み上げられています。私たちはこの光景を見て、ようやく今までの不思議な光景に納得がいきました。
工場の周りに積み上げられているのはどうやら木の皮のようでした。しかも厚くてしわしわです。これはコルクの木です。今まで見てきた不思議な光景は、ワインボトルの栓に使われるコルクの工場と、コルクの森だったんです。
さすがヨーロッパ。コルクの消費量が驚きの規模です。

☆ コルクの木
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近くで見ると、コルクの色や模様がはっきりと見られます。コルクって木の幹なのかと思っていたけれど、木の皮の部分だったんですね。触ってみると弾力があって、生えているときからあの「コルク」の姿でした。それでもきっと、工場で乾燥させたり何かしらの手を加えたりして加工するのでしょうけれど。
こんな皮に覆われていたら、乾燥や暑さや寒さからしっかりと守ってもらえそうですね。

☆ 丸い松の木
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コルクの森の他にも松の森もありました。その森の松の木は枝のある部分はブロッコリーのように丸くて、幹はまっすぐに伸びています。なんだかかわいらしい。

☆ コルクの実
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私たちは小さな集落のコルクの木の下でお昼休憩をとりました。丘の上に一本の大きなコルクの木があるだけで、泉(水道)もベンチもありません。その上チーズをきらしてしまって、チーズもありません。だけどコルクの木陰はとっても涼しくて、気持ちの良いお昼休憩でした。見上げるとコルクの実がいっぱい。どんぐりみたいな実でした。

☆ 砂漠の中の町
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晴れ上がった空。朝は涼しくても、日中は暑いです。旅の途上で聞いた話では、イベリア半島は地中海性気候とはいえ砂漠のようなところがたくさんあるそうです。この辺りもステップ気候の砂漠のような土地。乾燥した大地が広がります。
そんな中、私たちはLavreという町に到着しました。町はまるで砂漠のオアシスのようです。その町で少しだけ休憩して、再び砂漠のような土地へと走り出しました。

☆ 広漠とした乾いた土地
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林のある草原が続きます。
広いなあ。

☆ 晴れ渡る空
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雲一つない青空。
広い広い土地に一本の道が続き、私たちはその道を走っていきます。
我が家を離れた遠い土地で、私たちは旅をしています。もしここに私が一人っきりでいたら、淋しさでどうかなっちゃいそう。あまりに広くて、あまりに静かだから。でも私は保護者のカタリと一緒に旅をしているので平気です。たまに心が弱くなることもあるけれど、カタリと一緒ならばどこへだって行けます。だからなおさら一人になることは不安です。こんなにも平和で広くて静かな時にこそ、一人になることへの不安を感じたりします。

☆ コウノトリの巣
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でも前を見ればいつだってカタリの姿があるので、大丈夫。
冗談ばかり言ったり、お酒を飲んでだらしなくなったりすることもあるけれど、カタリがいれば、私は大丈夫。

☆ 今夜はあの町に宿をとろう
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荒涼とした畑地の土地を走り続けていくと、ようやく小高い丘のふもとに町が見えました。カタリが「今夜はあの町に宿をとろう」と、今までに何度も聞いた心躍る言葉を口にします。丘の上には古い石造りの建物が見えて、その丘を守るように家々が集まっています。きっと素敵な町に違いありません。

私たちは町に入ると、標識を頼りにインフォメーションセンターを見つけました。そしてそこで小さな民宿を紹介してもらいました。丘の上のお城の近くです。

☆ 小さな民宿
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教えてもらった場所へ行くと、普通の民家のように見えます。でも壁にはベッドの絵が描かれているので、すぐに分かりました。隣は小さな商店です。私たちは早速その宿を訪ねました。
宿の中は長い歴史を感じさせる内装でした。宿主のおじいさんは無愛想だけれど親切な方で、家の中を案内してから二つの部屋を紹介してくれました(ポルトガル語だったので、料金を紙に書いてくれました)。一つはバストイレ付きの20€の部屋で、もう一つは少し狭くてバストイレが共用の15€の部屋。私たちは15€の部屋に泊まることにしました。旅人としての私たちの勘ですが、どうやらこの宿には他にお客さんはいなく、火曜日の今夜は誰も来ないのではないかと思われました。バストイレ付きの部屋のバスはシャワーのみでしたが、共用のものにはバスタブが付いています。宿が貸し切りであれば、バスタブを使うことができます。

☆ 共用のバスルームは私たちの貸し切り
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それともう一つ15€の部屋を選んだ理由があって(こちらが一番の理由です)、さっき宿を案内されたときの宿の構造は、まるで地中で暮らす生き物たちの穴倉のようだったのです。狭くて入り組んでいて不規則で。20€の部屋は"普通の"快適そうな部屋でしたが、15€の部屋はこの複雑な穴倉のような構造をそのまま利用したような、へんてこな雰囲気だったのです。階段横の屋根を利用して、天井に明かりとりの窓が据えられていましたし、狭い通路を挟んでたったの一歩で共用のバスルームに行くことができました。部屋の脇にある階段を上がれば屋上にも出られ、とにかくへんてこで居心地のいい”穴倉”の部屋だったのです。こんなに面白そうな部屋は、そうはありません。

☆ 宿の中は入り組んだ構造
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階段もちょっと変わった造り。宿の中を歩いていて、今どの辺りにいるのか分からなくなるの。建物は3階建ての屋上付きなんだけど、中2階や別棟みたいなものもあったのかもしれません。結局全貌が分からないままだったけれど、居心地はとっても良かったです。

☆ お城へ続く道(参道)
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私たちは宿に荷物を置いて一回目のシャワーを浴びると、丘の上にあるお城を見に出かけました。
お城へと続く正面の道は、とても急な登り坂になっています。

☆ お城の入口近くから
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丘の上まで登るとお城の入口があります。城内は崖のような城壁に囲まれていて、広いです。入城は自由でした。

☆ 城壁の回廊
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丘の北側には城壁の回廊が続いています。かつてはここでも戦いがあったのでしょうか。重厚な石積みの造りですね。

☆ 城壁の間から覗く
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戦いのための城壁の間から外を覗くと、眼下にのどかな土地がどこまでも広がっています。昔、戦いが行われていた時代にも、人々は畑に種をまき、家畜を育て、麦を収穫していたのでしょう。おなかが空けばパンを食べ、お天気の話をし、恋をし、夜になれば眠ったのでしょう。人の暮らしは、どんな時代にあっても、どんな国であっても、人の暮らしです。でも、現代の社会の一部分では、それが逸れ始めているようにも思えて心配です。空中楼閣の水耕栽培のような生活ではなく、大地にしっかりと足を着けて生活をしていないと、いつの日にか足元が崩れて落ちてしまいそうな気がしてなりません。

☆ 丘の上の広い城内
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丘の上にはいくつもの建物があって、公園のように広くなっています。歩いて回ると360°どの方角も見渡すことができました。

☆ 塔の残る崩れた城
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丘のてっぺんには二つの大きな塔が建っていました。塔の周りにも壁が残っていることから、お城の一部だったのではないかしら。

☆ 残された塔
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まるで二つに割れたかのような塔。丘の上の鐘楼のようにも見えます。

丘の上からは、今日旅してきた道と、明日旅する道が見えます。その道を眺めていると、旅のもつ感傷的なもの想い「旅情」を感じます。

☆ もの寂しい城内
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丘の上は広くて、もの寂しくて、静謐な場所でした。観光地なのでしょうけれど、わびしい感じが印象的で魅力的な場所です。

☆ 闘牛場
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お城を下り、スーパーでお買い物をしました。この町にはスーパーがあるんですよ。今夜は穴倉で過ごすので、ハムやソーセージなど、ちょっと多めにごちそうを買っちゃった。帰り道に闘牛場を見かけました。

☆ カタリはさっそく
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宿に帰るとさっそくカタリはビールを持って屋上に上がりました。屋上は3階のテラスのようなところとその上の屋上があって(これもへんてこな造りなのでうまく説明できませんが)3階テラスの屋上にはひさしのようなものが付いているので日陰になっています。日陰のテラスで涼しい風に吹かれて嬉しそうね、カタリ。

☆ バニラクッキーチョコレート
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カタリが風に吹かれて酔っぱらっている間に、私はバスタブを使ってゆっくりお風呂に入りました。ああ、幸せ。ヨーロッパではなかなかお湯につかる機会がないんです。共用バスルームは鍵をかけることができるから、プライベートのように使える。それに思っていた通り、その夜は他にお客さんが泊まることはありませんでした。カタリがシャワーから上がったら、さあ、夕飯にしましょ。私にはお酒がないから、チョコレートを食べます。
その後、私たちは穴倉の宴を楽しんで、いつもよりちょっとだけ夜更かししました。


明日へつづく
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昨日の日記
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