Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

Mira山を越えてサンタレムの町へ。辿り着いたのは病院アルベルゲ!? ポルトガル自転車旅「9日目」

Luna

自転車の旅ポルトガル編12】
保護者のカタリと一緒にヨーロッパを自転車で旅しました。これはポルトガルでの旅の記録です。
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ポルトガルの旅路9日目
ファティマからの首途。サンタレム(Santarém)へ。

 9日目の道のり
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ポルトガルへと入国した私たちは、ポルトーや、サンタ・マリア・ダ・フェイラや、コインブラといった素敵な町を訪れながら旅をしてきました。そんな私たちが辿り着いたのはファティマという山の中の村。村ではあるけれど、世界中から人が集まる聖地でした。まるで村全体が一つの教会のような雰囲気で、私たちはとても優しい時間を過ごしました。でも旅は続きます。今日はファティマを出発し、新天地を目指します。

☆ サミュエルとの別れ
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朝の準備を済ませ、食堂で朝食をとり、自転車に荷物を積み込みます。2泊3日お世話になったこの宿はとても居心地がよくて少し淋しいけれど、私はこの荷造りのときの凛とした時間が好き。今夜の宿のあてもないまま未知の世界へと出発するための準備。緊張感に心が引き締まって、恐怖や不安はあるけれど、もっと大きな期待に胸がドキドキする感じ。今日はどんなものと出会って、どんなものを見ることができて、どんな気持ちになるんだろう。同じ一日なんて一度だってなくて、いつも新鮮で発見に溢れている。そんな旅への期待が、この朝の荷造りの時間にいつでも私をわくわくさせるの。
宿で一緒だったサミュエルも、同じガレージで荷造りをしていました。彼も今日、ここファティマを出発します。朝の涼しい空気の中、私たちはサミュエルと別れの挨拶を交わしました。お互い南へ向かうけれど、私たちは南東へ、彼は西の沿岸から南へと向かいます。小雨のぱらつく白い空気の中、サミュエルは宿を出発していきました。
さあ、私たちも出発です。

☆ マリア出現100周年
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宿を出てから大聖堂で出発の挨拶をしました。キリスト教徒とか仏教徒とかそんなことは関係なく、私たちは朝のお祈りと3日間のお礼をしました。この村は特別な地です。
ファティマ村を出る前にインフォメーションセンターに寄って、「巡礼者の証」にスタンプをもらいました。センターには私たちの他に一人の自転車旅のおじさんがいて、少しお話をしました。おじさんはなんとアイルランドの人で(今回の私たちの旅の出発地がアイルランドです。)、ここまで自転車旅を続けてきたそうです。私たちと同じようなルートを通ってきたのかもしれませんね。今日は雨なので、明日サンタレムへと向かうそうです。これからのルートを尋ねると、マイナーなルートなのにカタリが大まかに考えていた道とほぼ同じ。しかもサンタレムは私たちが今日目指す町でした。びっくりです。

☆ 山の多い土地
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後から知ったことなんですが、ファティマを出発してからカタリは道が正しいのかどうか不安だったそうです。私たちが通る道のりは、たぶん旅人にとってはマイナーなルートなのでしょう。道は大きくなく、案内も少なく、山の合間を行く道でした。

☆ Mira Minde
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やがてMindeという谷間の町に到着すると、「Mira de Aire」という村の洞窟の道標がありました。見ると目の前には大きなテーブルのような山が見えます。きっとあの山の上にあるのでしょう。私たちはMiraという名前にもひかれて、その洞窟へと向かってみることにしました。

☆ 山の中腹に巡礼路の道標が
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山道を登っていくと、中腹に巡礼路の道しるべがありました。巡礼路を旅していたとき、私たちはこの道しるべを辿ってサンチャゴ=デ=コンポステーラを目指しました。ここにはファティマへの道しるべもありました。

☆ 眼下にMindeの町を見下ろす
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☆ 峠の切通
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☆ 山頂付近の峠
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やっとのことで峠へと辿り着きました。今までは北側の土地がよく見えていましたが、ここを越えれば反対の南側がよく見えるはずです。つまり、これから向かっていく土地ですね。

☆ 南側が見える
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峠を越えると見晴らしの良い休憩所があったので少し休むことにしました。南にはこれから進んでいく世界が遠く広がっています。今まで走ってきた道のりや、これから旅していく世界を遥かに望める場所に来ると、なんだかすーっとした、切ないような不思議な気持ちになります。それがいったい何なのかよくわかりませんが、旅の中の静かな時間にふと、そんな気持ちになることがあります。

☆ 遠くまで
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世界はどこまでもどこまでも続いているんですね。山の南側の土地には大きな町は見当たらず、眼下には石垣に囲まれた低木の畑が広がっています。なんだか寂莫としています。見たことのない光景。

☆ 山村にある池
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峠道を進んでいくと、やがて山上にある小さな村へと辿り着きました。その村は灰色の石積みの垣根がたくさんある村でした。村の所々には山上にある村なのに池がありました。池は岩を削り、水位の変化を示す跡を岩壁に残しています。石灰質の多い岩山などに多く見られる光景です。どうやら洞窟が近いのでしょう。私たちは村の中の岐路に木の小さな立て札を見つけました。そこにはMiraではなく、Alvadosという洞窟の名前が書かれていました。するとどういうわけか、ここでカタリが洞窟行きをやめようと言いました。ここまでの山道で私がとても疲れていたことに気が付いていたのかもしれないし、何か他の理由があるのかもしれないし、ほんの気まぐれかもしれません。私たちは自由気ままに行く先を決める旅をしているけれど、洞窟やらお城やら遺跡やらといったカタリの好きな目的地があって、それを目前に行くのをやめると言うのはとても珍しいことです。私たちは日本で生活をしているときも、こうして旅をしているときも毎日一緒にいますが、カタリの考えていることが分からないことが稀にあります。そういう時はだいたい私たちのためを思っての行動なので、私は異議を唱えることもなく、体を休められることにむしろ感謝して、カタリのあとについていきます。

☆ 石垣に囲まれたオリーブ畑を下る
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洞窟の村は山上にあったので、ここからは下りです。辺りは一面石垣に囲まれたオリーブ畑。このときはオリーブ畑だと思っていたのですが、もしかしたらコルクの幼木だったのかもしれません。木と石垣ばかりの見たこともない光景の中をぐんぐん下っていくのは、とても奇妙で爽快でした。まるで絵本か何かの見慣れない世界のようで、現実感のないまま空に向かって走りました。

☆ 集落の小さな教会
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オリーブ畑の間を走る道はずいぶん長かったのですが、速度がだいぶ出ていたので間もなく隣の集落に到着しました。この集落もまだ山の上にあって、ここがオリーブ畑の出口になります。

☆ 低木の山道
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集落を抜けて山の中の細い道を進みます。途中、もう一つ小さな集落がありました。森の中に塔のような建物が見えたのですが(上の写真)、辿り着くことはできませんでした。

☆ 町の休憩所
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ようやく山を下りてきました。まだ高台ではありますが、麓といえるような町に着きました。この町の休憩所でお昼ご飯にします。食料はいつも自転車に積んでいるので、すぐに食事をとることができます。この休憩所はポルトガルの特産品ともいえる白地に青のタイルで飾られていて、水を使うこともできて、とても素敵な休憩所でした。この頃には雨もすっかり止んでいて、レインウェアを乾かしながらのランチでした。

☆ 山の南側
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山を越えた南側の土地は、天気が変わったからでしょうか、雰囲気が違って見えます。

☆ 晴れた!
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いい天気になりました。
自転車での旅では天気の違いは重要です。雨だと体力・事故・荷物の管理など危険が多いですが、天気が良ければそれらの危険も少なくなります。もちろんこんなにいい天気のときには熱中症に気を付けないといけないけれどね。

☆ Santarémの町に到着
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暑い道をひた走り、とうとう今日の目的地サンタレム(サンタレン)に到着しました。サンタレムは丘の上の町なので、急坂を押して上がります。集落のように小さくはないので、宿はすぐには見つかりません。

☆ 町の美術館
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私たちは美術館で地図をもらいました。宿を尋ねるとホステルがあるそうなのでそこにしようかと話していたのですが、どうやら巡礼宿アルベルゲが中央広場にあるそうなのです。私たちは巡礼の旅を終えた後なのですが、まだ巡礼者として巡礼宿に泊まることができます。私たちは中央広場のアルベルゲへ行ってみることにしました。

☆ 病院のようなアルベルゲ
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教えてもらった場所へ行ってみると、そこはけが人や病人のたくさんいるところで、どうやら病院のようでした。門には番兵さんがいて、受付事務所を聞くとやっぱり病院の中の事務室のような場所でした。ピルグリム(巡礼者)というのは、けが人や病人と同じように扱われる、と巡礼路のどこかの美術館の書物で読みました。実際に中世の頃から現代まで、巡礼者はけが人と同じように「介抱」されます。それは実際に私たちも体験してきたことです(「介抱」でもあり「歓待」でもありましたが。)。だから病院にアルベルゲがあるというのは、もしかしたら自然な考え方なのかもしれませんね。

☆ シングルルーム
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事務手続きを済ませると、同じ敷地内の別棟へ通されました。患者服を着た、腕を怪我した方が案内してくれました。たぶん彼は患者さんで、親切に案内してくれたんだと思います。
通してもらった先はいくつかの簡素な部屋が並んでいて、バスルームには介護用の椅子などが置かれていました。私たちが泊まらせてもらうことになったのはシングルルーム。ベッドが1つに、マットレスが1つ。部屋はそれほど狭くなくて、完全にプライベートルーム。そして部屋に自転車を入れてもいいそうです。やったね。他の人と相部屋になることもなく、自転車も一緒だと、とっても安心します。

☆ サンタレムの町の小路
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荷物を部屋に置いたら、さあ、町を探検しましょう。
サンタレムの町にはオールドタウン、つまり歴史地区があって、多くの教会があります。石畳の敷かれた小路をぶらぶら散策するのは風情があってとっても楽しい。

☆ 奇跡の教会
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宿の人や観光客や美術館の人など、何人かの人から「奇跡の教会」という言葉を聞きました。そういう名前の教会なのか、奇跡が起きた教会なのかはわからないけれど、かわいらしくてきれいなその教会にも足を運びました。

☆ 大きな教会
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教会の中には扉が大きく開かれていて、半地下階へと潜るように階段を下る教会もありました。この写真の教会はゴシック様式なのかしら、どっしりとして重々しい。人は誰もいなくて、しんと静まり返っていました。

☆ 見晴らしの良い公園
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オールドタウンを奥へと進んだところに見晴らしの良い公園がありました。天気も良くなったのでとっても明るくて素敵。周りをぐるりと城壁のようなもので囲まれています。戦いのあった頃に、守りのために造られた場所なのでしょう。

☆ 南へと続く川
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公園のすぐ下を大きな川が流れています。川に丘、自然の砦を利用して造られた町だったのね。この川はテージョ(Tejo)川といって、南の河口にあるのは首都リスボンです。水運の便も良いところ。きっと大きく栄えた時代のあった町なのではないかしら。

☆ 川を渡す橋
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川に大きな橋が架かっています。私たちは明日、あの橋を渡って出発します。「明日に架ける橋」ですね。橋の右手には、これから私たちが旅をしていく土地がずっと広がっています。そして橋の左手には今日越えてきたMiraの山と、ここまでの道が続いていた土地が広がっているのが見えます。私たちは今日、あの山の向こうからやってきたのね。と考えると、なんとも切ないような旅情を感じます。明日は橋の向こうへ。どんなところへ行けるのかな。

☆ サンタレムの宿へ
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明日のことは明日のこと。今日はせっかくプライベートルームに泊まれるんだから、おいしい食事をしてゆったりしましょ。帰りに寄ったスーパーで、カタリは「せっかくポルトガルに来たんだから」と言ってポルトーワインを買っていました。あれ? この前も買ってなかったっけ? 宿では気の良い巡礼者たちの夜の集い(宴会)に誘われたんだけれど、カタリは断っていました。いつもなら大抵はごちそうになるのに。やっぱりカタリもプライベートルームでゆったりするのが楽しみだったみたいですね。


明日へつづく
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