Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

Camino 自転車旅 「自転車の巡礼路」    6日目「道に迷い、霊感高い空の道を行く」

サン=ジャン=ピエ=ド=ポーからサンチアゴ=デ=コンポステーラまでの巡礼路を自転車で旅しました。

同じ道を旅しようと考えている人や自転車で旅に出たいと思っている人の手助けになればと記録を残します。
              文:Luna      助言・あーせい更正・校正:Katari
目次へ

☆ Camino de Santiago 巡礼路
f:id:miraluna:20200521175752j:plain

「自転車の巡礼路」

<このページの記事>
〇 自転車の巡礼路
〇 道路の種類
〇 徒歩の道との違い
〇 自転車巡礼者の数
〇 徒歩の巡礼路を自転車で走るのは可能?
〇 日記 6日目「道に迷い、霊感高い空の道を行く」

☆ 巡礼路「フランス人の道」
f:id:miraluna:20180310162410j:plain
この写真は自転車を走らせながらカタリが撮影したものです。
砂っぽい土の道ですね。

・自転車の巡礼路
巡礼路では上の写真のように自転車と歩きの人が同じ道を往く場合と、
それぞれ別の道を進む場合があります。

巡礼路(カミーノ)には土の道もあれば、アスファルトの道もあります。
自転車では困難な山道もありますし、徒歩の人が車道を歩く必要のある道もあります。

歩きの巡礼路は地図やガイドブックで数多く紹介されていますが、自転車の案内は見かけたことがありません。地元スペイン語のものがあるのかもしれませんが、旅の途中で出会った自転車の旅人たちも私たちと同じように徒歩の巡礼路の地図を使うか、あるいは徒歩と自転車の両方に使える詳しいガイドブックを使うか、アプリやインターネットの地図を使うかしていました。
そういう状況なので自転車の道を紹介している日本語の案内は今のところないのではないかと思われます。

・道路の種類
日本の道路を大まかに分けると
・高速道路
・国道 「逆三角形の標識」
・県道 「六角形の標識」
・それ以外の小さな道
が多数を占めていますね。

スペインでは
モーターウェイ    「A」
・ヨーロッパの幹線道路 「E」
・国の幹線道路     「N」
・地方の産業道路    「C」
・その他の道
があります。
その他の道には大きな町の名前がついている「街道」があります。
レオンという町につながるレオン街道なら「LE441」といった具合です。

自動車専用道路(モーターウェイ)に沿って巡礼路が続いている場所もたくさんあります。モーターウェイは日本の高速道路のような交通量はありません。目印になるので現在地を把握するのに役立ちます。

「A66」のようにAかAPが付く道路はモーターウェイで、自転車は入ることができません。

道路の番号は 2桁より 3桁、3桁より 4桁と、桁数が大きくなると道は小さくなっていく傾向にあります。
また 1102や 1103などの道が 110の道から派生しているといったことが多くみられます。

巡礼の自転車道は国の幹線道路「N」や町から町へと続く「街道」を利用することが多いでしょう。

† このCamino自転車旅の記事に毎回登場する地図と、そこに記された赤いラインは私たちが実際に走行した道をGPSで記録したものです。
ところどころ寄り道をしたり道に迷ったりもしていますが、自転車で巡礼路を計画している方などは一日に進む距離の目安や宿の位置などの参考までにご覧ください。

☆ 自転車で巡礼する人も多い
f:id:miraluna:20180310162440j:plain

・徒歩の道との違い

巡礼の旅というのは聖地サンチアゴ=デ=コンポステーラを目指す旅なので、「道をそれてはいけない」というようなものでは当然ありません。
あらゆる土地に住む人々がやってくるわけですから、道も無数にできるはずです。

自転車の旅ではすべての行程を徒歩の巡礼路で行く、というのはなかなか大変です。

「巡礼路(カミーノ)だけを行く」と固く考えずに、「フランス人の道」は無数に存在する巡礼路の中でも最も多くの巡礼者が旅をする道の一つにすぎず、アルベルゲが多く存在して便利だからその道を追っていく、というくらいに気楽に考えておいたほうが自転車旅には適していると思いました。

徒歩の道と自転車の道は「ここからここまで」というようにはっきりと区別されているものではなく、自転車旅の人が自分で判断するものだといえるでしょう。
サン=ジャン=ピエ=ド=ポーを出発する巡礼者は一日目の道程の説明を受けることができます。その説明ではピエドポーの町を出た後、徒歩の道と自転車の道に分かれます。
でもそれは徒歩の人は必ずこの道、自転車の人は必ずこの道、というものではありません。説明の中でも「雨などでコンディションの悪い日や自転車の人はこちらの道」というような幅のある分け方をしています。

自由に選択できるのならば。と徒歩の道を行くと、とても通れないような道になることがあります。
実際に無理を押して通った人の話を聞くと「人には勧められないし、次に通ることがあればもうその道は通らない」ということでした。自転車を担ぎ上げていくようなイメージの道のようです。

☆ 自転車の巡礼路
f:id:miraluna:20180306113756j:plain

徒歩の道を行かずに自転車の巡礼路を選ぶ場面は……
〇 山越え道
〇 岩などででこぼこした道
〇 道が細く、他の巡礼者を追い越せない道
〇 走りやすいアスファルトの道路が並行している道
〇 雨などで道がぬかるんでいたり砂埃がひどかったりして汚れやすいとき
などなどのときでした。

そのような道のあるところではアスファルトの道路に大きな巡礼用の「Camino de Santiago」の看板が掲げられています。
これは自動車やバイクで巡礼の旅をする人のためでもありますが、この看板のある道を自転車の巡礼路と捉えることもできます。

サンチアゴ=デ=コンポステーラに到着したときに巡礼証明書を受けるためには、必要な最短巡礼距離が決められています。その距離は徒歩と自転車で異なります。

<徒歩の巡礼路>
〇 土の道が多い
〇 山道がある
〇 車の乗り入れられない細い道がある
〇 巡礼証明書をもらうには100km以上の行程が必要

<自転車の巡礼路>
〇 ほとんどがアスファルトの道
〇 自動車の通る道を利用する
〇 町中などを迂回することができる
〇 ホタテ貝の印は少ない
〇 修道院やチャペルなどに立ち寄れない道がある
〇 巡礼証明書をもらうには200km以上の行程が必要

というようなことが徒歩と自転車の巡礼路の違いとして挙げることができるでしょう。
徒歩では100km以上の巡礼路を歩くことで巡礼証明書がもらえ、自転車では200km以上走ることでもらえるので、徒歩ではSarriaから、自転車ではPonferradaから出発する巡礼者がたくさんいます。
もし巡礼証明書を受けたいのであれば、毎日二つのスタンプをもらうのも忘れないようにしてくださいね。

きっと徒歩と自転車は同じ道を一緒に旅したり、別々の道に離れたりすることになると思います。

☆ 旅先で知り合った自転車旅の仲間
f:id:miraluna:20180310162427j:plain

・自転車巡礼者の数
自転車で巡礼路を旅していると自転車の旅仲間と仲良くなるので、自転車で巡礼の旅をしている人はたくさんいるような気がします。

実際のデータ(サンチャゴのピルグリムオフィス発表)に基づくと
2004から2016年までの平均は

徒歩  86.5%
自転車 13.0%
です。

残りの 0.5%は馬と車椅子で、自動車とバイクはこの数値には含まれません。


・徒歩の巡礼路を自転車で走るのは可能?
可能です。
実際に徒歩の巡礼路を走って旅をする巡礼者たちもいます。
ただし、とても苦労の多い旅路になることでしょう。

ヨーロッパ各地には自転車で旅をする人がたくさんいます。10年以上乗っているというような旅の自転車で多いものに、クロスバイクに似たヨーロッパ独特のモデルで、がっしりとしたつくりのものがあります(ごめんなさい、名前はわからないです)。中高年のヨーロッパ人の旅人でこの規格の自転車に乗っている人は多くいます。
新しい自転車に多いのがロードかクロスバイクで、マウンテンバイクはそれほど多くはありません。(あくまで出会った自転車旅の人たちから受けた印象です)

でも巡礼の旅の自転車は、マウンテンバイクが多いです。

自動車の走るアスファルトの巡礼路だけを走るのならば、ロードやクロスのような長距離を稼ぎやすい自転車が有利ですが、徒歩の巡礼路にも入るのであれば頑丈なマウンテンバイクのほうが走りやすいです。
それに多くの荷物を積み、何日も旅をすることになるので、自転車の故障するリスクの少ないマウンテンバイクは安心できるところが大きいです。

徒歩の巡礼路だけを走る自転車旅の人たちは、ほぼ間違いなくマウンテンバイクです。そうでなければ大変です。
私たちが出会った徒歩の巡礼路を走破する自転車の人たちは、数人のグループでいることが多く(一人旅の女の子もいました)、砂煙を上げながら走っていきます(どうしてもそうなってしまいます)。
狭い巡礼路も多いので、徒歩の巡礼者を追い越すときにはベルだけではなく大きな声で「どいてくれ! 通るよ!」と言いながら走っていました。
英語の人もいましたが、そのような旅のスタイルの人たちにはスペイン語の人たちが多かったので、地元スペインの巡礼者に多いスタイルなのかも知れません。
彼らの荷物や自転車は一日で真っ黒(真っ白)になるので、アルベルゲに屋外の水場があればよく自転車を洗っていました。チェーンは砂をかむとすぐに伸びてしまうので、毎日砂まみれになる道では手入れも重要です。

サントドミンゴで出会った自転車旅の人はマウンテンバイクではなかったのですが、そこまでの巡礼路を自転車に乗らずにずっと自転車を押してきたそうです。なかでも一番大変だったのはやはり一日目のピレネー山脈越えだそうで、山越えの道で徒歩の巡礼路を自転車で行くのはかなり大変なようです。

☆ 旅の自転車たち
f:id:miraluna:20180310162423j:plain


次の記事へ


目次へ



「道に迷い、霊感高い空の道を行く」

  カミーノ 6日目  (ここからは日記です)

Luna f:id:miraluna:20180124123453j:plain:w50

☆ HornillosからCarriónへ
f:id:miraluna:20180310150831p:plain

出発の準備を整えて教会でお祈りをすませた後、昨夜ジェラーニが野宿をした場所へ行ってみるとすでにテントはありませんでした。
きっと新しい自由を求めて出発したのでしょう。

村を出ると道はすぐに砂利道になりました。
道が分岐しているところで昨日一緒だったポーランド人の奥さんに追いつき、お別れを言いました。私たちは自転車の道へ向かおうとしていたからです。

広い畑の真ん中で分岐していた道を北西へと向かいます。朝の巡礼路はたくさんの巡礼者たちが西へ向かって歩を進めています。ここからはみんなとは別の道のりです。

私たちの進んだ道は畑の中の一本道でした。足元は砂地で、どこまで行っても人や車の姿はありません。
広い広いスペインの空の下、私たちはぽつんと小さな点のようになって旅をします。
このとき私たちは、迷子になっていました。

☆ 広い空と畑の間で迷子になってしまうのはあまりにも容易いことです
f:id:miraluna:20180310150917j:plain

進むべき道がわかっている旅と、進むべき道のわからない旅というのは、本質的に大きな違いがあると思います。
たとえ一時道に迷ったに過ぎないにしても、そのときに感じる透明で非日常的な感覚は何とも形容できない特別な感覚です。
まるで小さい頃に聞いた物語の世界に入り込んだような、何百年も前の人々と同じ空間に生きているような、いつも生活している日常から遠く隔たった普遍的な世界に迷い込んだような不思議な感覚です。
私はその感覚を畏れてもいて、強く求めてもいるのです。

遥か遠く、黄金色の麦畑が作る地平線の上を一台の車が走っているのを見つけたとき、私たちの不思議な時間は地に足の着いた日常の時間へと戻りました。車は砂煙をあげていません。アスファルトの道があるのです。

土の道はYudegoという小さな町にたどり着きました。アスファルトの道のある、人の生活する地です。
Yudegoの町は中心に下りの一本道が通っていて、町はその左右に突き出すような谷間の町です。中心には広場と泉があり、町の高台には小さなお城が残っていました。

☆ Yudegoの町を振り返る
f:id:miraluna:20180310150728j:plain

谷間の底まで下ってから、再び丘の上の畑地へと登ります。
丘の上は空の道でした。

☆ 霊感高い空の道
f:id:miraluna:20180310151020j:plain

再び人のいない不思議な感覚の世界です。
今度は進む道がわかっていますが、朝の迷子のときに感じた不思議な印象が残っているのか、また奇妙な感覚にとらわれます。
一緒に走っているカタリも同じような印象を受けていたそうです。
この感覚は、幼い頃にもきっと経験しています。とても懐かしい感覚だったもの。

☆ 風車たちがおしゃべりな生き物のよう
f:id:miraluna:20180310151034j:plain

やがて教会の遺跡の前で徒歩の巡礼路と交わると、私たちの不思議な夢っぽい感覚はなくなりました。

☆ 巡礼路にある教会の遺跡
f:id:miraluna:20180310150804j:plain

遺跡を過ぎるとてっぺんにお城のある山が遠くに見えてきました。Castrogerizeという町のある山で、町は山の中腹にありました。
町の中心を走る道はまるで山から張り出しているような感じで、空中を走っているような感覚でした。その空中の道に教会などがあるので、奇妙な感じです。

☆ お城と町のある山
f:id:miraluna:20180310150900j:plain

山のふもとの教会は博物館のようになっていました。
☆ 教会の中
f:id:miraluna:20180310151103j:plain

空中の道のある町を過ぎると、再び徒歩の巡礼路と別れます。
この日もいい天気。ピレネー山脈を越えてから、ずっとお天気です。

☆ サンチャゴまであと 500km
f:id:miraluna:20180310150701j:plain

上の写真の標識にもある Frómistaの町でお昼ご飯を食べました。小さな商店があり、デザートを買ってもらいました。
町の入口には高低差のある川で船を移動させるための水門があって、迫力がありました。

☆ 高低差のある水門
f:id:miraluna:20180310150818j:plain

☆ 地下にある泉
f:id:miraluna:20180310151049j:plain
平原に階段のようなものがあったのでのぞいてみると、地下に掘られた泉でした。
井戸水を汲み上げているのかもしれません。
水道設備のない時代には、このような乾いた平原の中ではオアシスのような存在だったでしょうね。
いえ、今でものどの渇いた巡礼者たちにとってのオアシスです。

☆ ホビットの家!?
f:id:miraluna:20180310150931j:plain
スペインではあちらこちらで見かけました。
土を盛り上げてその中に家を作り、丘のようになった盛り土から煙突が突き出しているという光景。
写真の家は地上にありますが、土中に作られている家もたくさんありました。暑さや寒さから逃れるためなのでしょうか。それらはちょうど焼き物窯のような姿です。

☆ 大きな修道院のアルベルゲ
f:id:miraluna:20180310150715j:plain

不思議な感覚をたくさん感じた今日の旅路もここでおしまい。
Carriónという大きめの町に到着しました。
大きな修道院施設でシスターたちに迎えられ、寮のようなアルベルゲに泊まれることになりました。
受付ではシスターからマリア様のお守りをもらいました。

この宿ではたくさんの自転車旅の人たちと知り合いました。夕飯の後には韓国からの二人組(義兄弟)と、韓国人青年と日本人のお姉さんのペアと一緒にお話ししました。
修道院のすぐ下の川沿いにはキャンプ場があって、ヘリットおじいさんがいないか見に行ったけれどいませんでした。
このとき彼はどの辺りにいたのでしょうね。


明日の日記


目次ページへ  ↓
miraluna.hatenablog.com