Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

天使の降りた村ファティマで過ごす優しい一日。 ポルトガル自転車旅「8日目」

Luna

自転車の旅ポルトガル編11】
ヨーロッパを保護者のカタリと一緒に自転車で旅しました。これはポルトガルでの旅の軌跡です。
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ポルトガルの旅路8日目
ファティマの一日

 8日目の道のり
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ポルトガル第3の都市コインブラを出発した私と保護者のカタリ。コインブラの町は丘の上に町があって、川に囲まれていて、新旧の大聖堂があって、コインブラ大学や噴水があって、古い修道院の巡礼宿に泊まることができて、旅人仲間にごちそうまでしてもらって、素敵だったなあ。でも私たちは風に吹かれる旅人。まだ見たことのない新天地へ向かって旅を続けます。一日の終わりに辿り着いたのは、聖母出現の奇跡が起こったファティマという聖地の村。山の中の小さな村とは思えないほど広くて整備された土地と、信者たちの放つ優しい慈愛のような雰囲気に驚かされ、魅了されました。今日は優しくて素敵なファティマ村を一日見て回ります。近所に洞窟もあるんですって。

☆ 教会広場
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いい天気。
今日は日曜日。今夜も同じ巡礼宿にお世話になることになっているので、今日は一日ファティマの村を見て回ります。
朝、同じ宿の自転車旅仲間デイビッドとポールを見送りました。彼らはポーランドからヨーロッパを横断し、イタリア周りで旅をしてきた二人組。ここファティマが彼らの終着地点で、今日リスボンまで自走して飛行機か列車で帰るそうです。

☆ 大きなオブジェ
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二人を見送ってから、私たちは歩いて教会広場へ向かいました。少し秋めいた雲が青い空にかかっています。風が心地いい。
大聖堂から広場を横切って、向かい側にある大きな教会へと向かいます。

☆ 広場の向こうには大聖堂
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大聖堂だけではなく、こちらの教会も大きいです。どうやら広場の周りには宗派によって様々な教会があるらしく、少しずつ建築様式が異なります。どの教会も大きい。

☆ 日曜日のミサ
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私たちはこの教会で日曜日の朝のミサに参加しました。司祭様の説法のあとに、私たちはおせんべいみたいなパンを口に入れてもらいました。イエス・キリストの肉にあたるもので、聖餐(せいさん)と呼ばれるものだそうです。場所によってはキリストの血とされるワインを飲むところもあるらしく、カタリはルーマニアトランシルヴァニア地方の山奥で肉やお酒のごちそう山盛りの歓待を受けたこともあるそうです。
私たちはキリスト教徒ではありませんが、ミサの静謐な空気の中、朝のお祈りをしました。

☆ 聖母出現の地
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教会広場の南に位置する森には、天使が現れたといわれる場所が残されています。オリーブの林を抜けて森へと向かいましょう。

☆ 3人の羊飼いの子どもたちが天使に出会った場所
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私たちがファティマの存在を知ったのは、ここまでの旅の途上で出会った旅人たちからの噂でした。だからこの地でどんな奇跡が起こったのか詳しくは分かりません。インフォメーションセンターでもらった村のパンフレットや、これから行く子どもたちの住んでいた家に書かれていたこと、それから日本に帰ってきてから調べて分かったことを少し書きますね。

この村にルシアという女の子と、そのいとこのフランシスコとジャシンタという兄妹がいました。彼らは家の仕事として羊飼いをしていました。それぞれ10才、8才、7才の1917年、3人は天使に出会います(ここで出会ったのは聖母マリアで、天使にはもっと前に出会っていたという記述もあります)。天使は毎月13日に来るようにと言い、特別なお祈りの方法を3人に教えます。その後子どもたちは毎月13日に天使(聖母)に出会うのですが、7月13日のときに予言が与えられます。

☆ 右奥の白い家がルシアの家。手前は博物館。
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子どもたちは天使を「ロザリオの聖母」と呼びました。聖母の噂は広まり、13日には人々が集まるようになります。そして1917年10月13日、7万人とも10万人ともいわれる群衆の前で太陽が踊り、その光と熱で雨に濡れていた人々の服が乾くほどだったという「太陽の奇跡」が起こります。

☆ 当時の部屋の様子
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7月13日に与えられた予言は3つに分かれたものでしたが、第3の予言については1960年まで秘密にするようにと聖母に言われていました。しかしその秘密はローマ教皇庁によって2000年まで秘密にされてきました。発表された予言の内容については、全文ではないのではないかという疑問の声も上がっているそうです。

☆ 修道女となったルシア
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さて3人の子どもたちですが、聖母はフランシスコとジャシンタを近く天に召すと言っていて、その言葉通り翌年二人は亡くなりました。年上のルシアは修道女となり、98歳まで生きました。3人のお墓は今、大聖堂の中にあります。

☆ 家の中に羊を飼っていた家も多かったようです
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私が知ったのはそれくらいで、やはり多くは謎のままでした。それでも建物や人々の様子を見ていると、この3人の子どもたちがとても大切に思われている存在だということが伝わってきます。

☆ フランシスコとジャシンタの家
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ルシアの家と、いとこのフランシスコとジャシンタ兄妹の家はすぐ近くにあります。きっといつも一緒だったのでしょう。

☆ 3人の子どもたち
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左からジャシンタ、ルシア、フランシスコ。

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フランシスコとジャシンタの部屋。仲の良い兄妹だったんだろうなぁ。

☆ 大聖堂
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お昼を過ぎた頃、私たちは再び教会広場へと戻り、大聖堂へと足を運びました。

☆ ルシアとジャシンタのお墓
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正面向かって左側にはルシアとジャシンタのお墓があります。多くの人がお墓の前で祈り、キスをしていきました。

☆ フランシスコのお墓
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右手にはフランシスコのお墓があります。フランシスコもジャシンタも10才にも満たない夭折でしたが、その生涯が不幸であったとは誰も思わないでしょう。こんなにも多くの人々の温かい訪問を受けるような、そんな生涯だったんですもの。


☆ 変わった果物
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宿に戻った後に夕飯の買い出しに行って見たことのない果物を買いました。夕飯のあとのお楽しみにしましょう。

私の連れである保護者のカタリは洞窟が好きです。私も石好きだから鍾乳洞とか大好き。ここファティマには洞窟があるとどこかで聞いたので、お昼ご飯を食べた後は洞窟へ行こうと思います。夕飯の食材をキッチンの冷蔵庫に入れ、私たちは自転車で洞窟へと出発しました。

☆ ファティマ洞窟
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洞窟は村の中心から西へ2~3kmのところにありました。歩いて行くには少し遠いけれど、自転車ならあっという間。この記事の上のほうにこの日の行動の軌跡が載っているので、それを見るとどこにあるのか分かると思います。

☆ 水量の多い洞窟
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洞窟へは数人のお客さんがグループになって、ツアーで入ります。ガイドさんがいないと危険のある洞窟では多くあるスタイルです。
このファティマ洞窟は上下に移動するところが多く、水量が多いのが特徴的でした。水の洞窟ね。

☆ 洞窟の広間
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ところどころ開けたところがあって、たくさんの鍾乳石が垂れ下がり、大きな石筍もたくさんありました。きっと多くの水が流れているので、鍾乳石の成長も早いのではないかなと思いました。

☆ カルサイト(方解石)
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えへへ、買っちゃいました。ファティマ洞窟のカルサイト。ここでしか買えないと思うと、買わずにはいられません。カルサイトは鍾乳洞のあるような土地では珍しくない石だけれど、ファティマ産というところが素敵でしょ。
私、石好きなんです。→「石コレクションの記事

☆ ファティマの夜
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洞窟を堪能し、宿に戻ってちょっと休憩。同じ宿の自転車旅仲間のサミュエル(トム=クルーズにそっくりなの)とお話をして、洋服をお洗濯。シャワーも浴びて夕飯を食べて(変わった果物はどうやって食べていいのか分からなくて、あんまり美味しく食べられませんでした。)準備万端。今夜も夜の集いがあるというので、教会広場へと向かいます。

☆ ファティマの夜の集い
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昨日ファティマに到着した時も、その特異な雰囲気に驚かされましたが、夜の教会広場にはもっと驚かされ、そして魅了されました。今日は一日、この夜の集いに参加するのを私もカタリも楽しみにしていたの。広場のあちらこちらでは宗派ごとに信者が集って、神父さんのお話を聞いています。信心深い人たちが世界中から集まって、同じ夜を同じ思いで過ごすなんて素敵なことだと思いませんか。たとえそれが他教徒の私たちであったとしても。

☆ ろうそくに火を灯そう。
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私たちは一本ずつろうそくを買いました。他の人たちもろうそくを持っています。神父さんのお話の途中で、火が回されました。隣の人から隣の人へ。火をもっている人からもっていない人へ。ほとんどみんな知らない人同士だけれど、声をかけて優しく微笑んで、隣から隣へと火を渡していきます。ただそれだけのことなのに、なんて心が温かくなるんでしょう。私はここでも泣いちゃいました。胸がいっぱいになって。

そのあと神父さんの横に置かれていた聖母マリア像がお神輿の上に乗せられました。人々は川の流れのような列になり、マリア像を先頭にしてこの広い教会広場をぐるっと歩きました。マリア様を称える祈りの言葉をみんなで唱えながら。祈りの言葉の意味は分からなかったけれど、短い言葉でリズムがあったのですぐに覚えられて、私たちも一緒に唱えながら歩きました。大きな川の流れのように、ゆっくりゆっくりと広場を回り、やがて出発した教会前へと戻りました。夜の集いはこれでおしまいです。集った人々はろうそくをお堂に納め、三々五々宿や家へと帰っていきました。きっとみんなも私と同じように温かい気持ちでいっぱいになっていたと思います。
故郷も言葉も文化も違うけれど、同じ人間である私たちは、こうして同じ時間を共有することで心を通わせることができるのね。誰もが隣の人を大切にできたら、この世界は今よりずっと素敵なところになると思うわ。

☆ ジャシンタとフランシスコの見守る夜の教会広場にて
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おやすみなさい。
世界中にあふれている人々の優しい気持ちが途絶えることがありませんように。


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