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旅乙女と発明娘の子供部屋

コインブラを出発し、ついにファティマ村へ到着。 ポルトガル自転車旅「7日目」

Luna

自転車の旅ポルトガル編10】
ヨーロッパを自転車で旅しました。これはポルトガルでの旅の軌跡です。
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ポルトガルの旅路7日目
コインブラからファティマ

 7日目の道のり
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アイルランドのダブリンを出発してからもう2ヵ月。ケルトの人々の幻想世界を旅したり、フランスではモン=サン=ミシェルまで海を歩いて渡ったり、心が弱くなって寂しさに飲まれそうになったり、巡礼者になってスペインの聖地サンチャゴまでの巡礼を果たしたり。様々なことを感じたり経験したりしながら旅を続けてきた私と保護者のカタリ。その道中何度も話に聞いていた聖地ファティマ。なんでも羊飼いの子どもたちが天使と聖母マリアに出会った奇跡の村だそうです。私たちの中ではずっと心の中にあり続けた「行き先」の一つでもあります。今日はコインブラを出発してついに聖地ファティマへと辿り着いた、という日です。

☆ 出発
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私たちはコインブラの町の川向うの丘にある修道院に泊まっていました。この修道院は巡礼者を泊めてくれる宿泊施設「アルベルゲ」でもあるのです。
昨夜仲良くなった宿の人たちともお別れ。彼らはみんな聖地サンチャゴ=デ=コンポステーラを目指して北へと歩き始めます。巡礼を終えてサンチャゴからやってきた私たちは、これから南へと向かいます。

朝は宿の人たちがいないため、地下通路を通って一方通行の出口から外へと出ます。地下通路を抜けるのは、まるでお城からお忍びで抜け出す王様かお姫様になった気分。
外へ出るといい天気。修道院の壁に掲げられた幕には「500 ANOS (500周年)」と書かれています。この修道院には500年の歴史があるみたい。すごいなあ。

☆ 骨董市
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修道院のある丘を下ると河原の広場ではアンティークマーケットが開かれていました。
まだ朝の早い時間だったのに、すでに準備が整ってお店を開いている人がたくさんいました。ゆっくり見て回りたい気持ちもあったけれど、私たちの心は旅の出発へと向かっていました。これからコインブラの町を抜け、聖地ファティマを目指します。

コインブラは大きな町だからすんなりと出ることができるか少し不安だったの。でも運よく一番良いと思えるルートに入ることができて、迷うことなく街を抜けることができました。コインブラの町は他の大きな街に比べて自転車での出入りが難しくなくて、それでいて風光明媚な観光地でもある。素敵な町だったなあ。

☆ ファティマへの道のり
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涼しい朝の道は車の数も少なくて、とても気持ちがよかったです。良いペースで進むことができました。でもこの日は雲のない晴天で、10時半くらいからじりじりと暑くなってきました。暑い中自転車で走り続けるのはとっても体力を消耗します。ペースが落ちて休憩をとってもらうことも多くなって、スーパーでジュースかアイスを買いたいねと、何度も話しました。
お昼前に見つけた商店では、バナナとあの黄色いパンを買って食べました。「あの黄色いパン」とは、ここポルトガルで私たちが出会った素敵なパンのことで、ほのかに甘い、優しい粉砂糖のかかった夢見るような味のパンのことです。私もカタリもそのパンに出会ってからはパンを買うのが楽しみになっていました。
お昼になってからスーパーを見つけたので、そこでしっかりとお昼ご飯にしました。2回目のお昼ご飯だけれど、とても暑くて疲れていたので食べたり飲んだりする必要があったのです。そこでは大きなジュースを買って、二人で飲みました。それから小さいサイズの黄色いパンを見つけて買ったのですが、あの夢見る味の黄色いパンとは違う味のパンでした。
お昼を食べた後も暑くて、水場はほとんどありません。私たちは頻繁に休憩をしながらファティマへと向けて進みました。

ファティマへと近づき、レイリア(Leiria)という町へは入らずにファティマへ向かおうと思っていたのですが、ファティマへの分岐が見つかりません。そこで私たちはレイリアの町に少しだけ踏み込み、そこからファティマへの道を探すことにしました。レイリアも大きな町のようで、モーターウェイに阻まれて道に迷いました。町の中心地のほうにはお城のような立派な建物を見ることができましたが、そこまで行かず、レイリアの町の東にファティマへの分岐路を見つけることができました。

☆ 山の奥へと入っていく
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ファティマという地の噂は旅路のいたるところで耳にしました。世界中からキリスト教徒の集まる聖地、大型バスがたくさんやってくる一大観光地、山奥の山村、天使が現れ奇跡が起きる土地、聖母マリアが出現した村、巡礼のもう一つの目的地、などなど様々な話を聞きました。私たちはファティマのことを知らなかったので(『アルケミスト』という私たちの大好きな物語に登場するヒロインの名前がファティマなので、聞いたことのある名前ではありましたけれども。)、いろんな噂話が頭を巡って想像をかきたてられました。山村なのに一大観光地で巡礼者の集まる聖地。いったいどんなところなのでしょう。
かつては(奇跡が起きるまでは)小さな山村だったという噂通り、ファティマ村へと向かう道は山の奥へと続いていました。

道中、馬で巡礼をしている旅人たちの一行を追い越しました。実は昨日も出会った一行で、10頭ほどの馬に乗ったパーティでした。馬で巡礼をする人々のことは聞いていたし、モンサンミッシェルに海を渡って歩いた時にも馬で旅をする人々はいました。このパーティはサンチャゴ方面から(出発地はわかりませんでした)数日間かけてファティマを目指す一行だそうです。彼らとは直接お話をする機会はなかったのですが、しばらく先で出会った馬旅の補給車(干し草と水を積んで先回りする車)の人たちから馬での旅について教えてもらいました。補給車のおじさんがポルトガル語で言うには、「自転車でファティマまで行くんだったら、この先はずうっと登りばっかりで大変だぞう」とのことでした。私、ポルトガル語はわからないけれど、おじさんはきっとそんなことを話していたのに違いないわ。だってその後の道のりはおじさんが苦しそうな表情で自転車をこぐふりをしながら説明してくれたように、水も日陰もない上り坂がずっと続いたんだもの。

☆ ファティマ村近くの大井戸
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やがて山道に少しずつ人の暮らしが見られるようになってきました。上の写真はファティマ村の少し前にあった屋根付きの大井戸。これだけ大きな井戸があるということは、この辺りにはある程度の人数の人々が暮らしていたということでしょうね。

☆ 大井戸の中
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とっても広い。
井戸の底には今もきれいな水が池のように湛えられていました。
この後分かれ道の角にあった教会へと入り、その後すぐにファティマの入り口に到着しました。

☆ ファティマ村の入口
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ファティマ村の入り口はアスファルトの道路がきれいに整備されていて、「山村」といった感じではありません。きっと多くの人が出入りするためでしょう。入り口にはファティマに現れた聖母マリアの看板が立てられています。ここには1917-2017と書かれていました。私たちがこの地を訪れたのは2017年。そして聖母マリアが出現したのは1917年。そう、この年はちょうど聖母出現から100年目の年だったのです。

運命めいたものを感じながら私たちはファティマ村へと足を踏み入れました(実際は自転車で漕ぎ入りました)。するとすぐに大きなお土産屋さんがありました。大型バスが何台も入れるような大きなお土産屋さんです。私たちはてっきりここが村の中心だと思いました。だってここまでずっと小さな商店もない山道を走ってきたんだもの。
カタリがお店の人に話をすると、どうやら村の中心は他にあるようで、そこまでの行き方をとても親切に教えてくれました。
そして教えてもらった通りに行くと......。

☆ ファティマ村の中心地
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大きく大きく開けた広場が現れました。
小さな山村をイメージしてやってきた私たちはびっくり。
とっても広くて、とってもきれい。こんなところに来るとは思ってもみなかったです。ここに世界中のキリスト教徒たちが集うというのは、どうやら本当みたい。今も多くの人が遠くに集っているのが見えます。私たちはただただ驚くばかりでした。

すぐにでもこの地を見て回りたかったのですが、時間も夕方の4時を過ぎています。自転車の旅では寝床を探す時間です。
看板の地図を見ると村の中心広場は教会を上から見た時のような十字の形をしていました。すでにわくわくが止まりません。地図にはインフォメーションセンターも載っていて、そこで巡礼宿アルベルゲの位置を尋ねました。ファティマにはアルベルゲがあるということをほかの巡礼者から聞いていたのです。

☆ ファティマのアルベルゲ
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ファティマにはアルベルゲと呼ばれる宿が多数ありますが、私たちが訪ねたのは公営のアルベルゲです。普通アルベルゲは連泊することはできませんが、このアルベルゲでは3泊まで許されているそうです。それはここファティマが巡礼の目的地にもなっているからなんですね。このアルベルゲは巡礼者の証をもっている巡礼者しか宿泊することができないのですが、巡礼者なら無料で泊めさせてもらえるんです。

☆ アルベルゲの部屋
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事務所で手続きをすると部屋を案内してもらえました。巡礼者は思っていたほど多くはありません。私たちはそこで自転車旅の巡礼者たちと出会いました。
初めに出会ったのはポーランドから来たという青年二人組。彼らはなんとポーランドからヨーロッパを横断して来たそうです。巡礼路に入ったのはスペインの南にあるセビリアという町からで、ここファティマが最後の目的地なんですって。とっても長い旅路ね。帰りはリスボンまで自走して、そこから飛行機で帰るそうですよ。すごいなあ。この二人組はファティマがとっても気に入って、アルベルゲに無理を言って5日もいるそうです。「宿の人に『いつになったら出ていくんだ!』って怒られたよ」って言っていました。そのあとに出会ったのはドイツの旅人。リカンベントという仰向けの姿勢でこぐ自転車に乗っていて、後ろには大きなリカンベント用のリヤカーを取り付けていました。名前はサミュエル。トム・クルーズにそっくり。

☆ ファティマの大聖堂
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宿に入り一息ついた私たちはさっそく大聖堂へと足を運びました。ファティマは小さな村だし、アルベルゲは大聖堂の裏手のすぐにあったので、歩いていきました。
大聖堂にはたくさんの人がいて、なんと形容すればいいのか、宗教の持つ特別な雰囲気に満たされていました。どの教会にもそのような厳かな空気はあるのですが、ここファティマの大聖堂はなんとも優しい雰囲気のあるものでした。

☆ 大聖堂内
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ここファティマで起きた天使と聖母の出現という奇跡。天使と聖母に出会ったのは、ルシア、フランシスコ、ジャシンタという3人の羊飼いの子供たちでした。彼らのうちフランシスコとジャシンタの兄妹は、聖母に出会ってから間もなく病で亡くなりました。予言の通りだったそうです。大聖堂内にはその二人のお墓があり、多くの人がお墓に触れ、キスをしていました。

          ☆ 夜の大聖堂
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大聖堂の正面の外壁にはフランシスコとジャシンタの姿が描かれています。

☆ ファティマの夜 一日目
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私たちは買い物を終え、夕飯を食べてシャワーを浴びました。いつもならばすぐに眠って明日のために体力を回復させるところです。でも今夜は私もカタリもわくわくを抑えることができません。私たちは巡礼宿を抜け出して、大聖堂の裏手から中央広場へと行ってみることにしました。
夜になったのでてっきり人数は少ないだろうと思っていたのですが、少ないどころか昼間よりもずっと多くの人たちが広場のあちらこちらの教会や聖堂の前に集まっています。どうやら夜の集会が行われているようです。集会に集っている人たちはみんな一様に火を灯したろうそくを持っています。誰もが穏やかで静かで優しい表情をして、柔らかい火の光に顔を照らし出しています。なんだかとっても、優しい気持ちになります。
私たちは初めて目の当たりにする世界に驚き、興味をもち、そして心動かされていました。

☆ ろうそくを手に集う人々
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ここでは日常生活の中にあふれている怒りや他者嫌悪のような感情がとっても希薄で、かわりに隣人に対する愛情や優しさが濃縮されているように感じます。そんな雰囲気に包まれているのです。私たちはその温かい雰囲気にうっとりと心酔していたのだと思います。

☆ ファティマの夜の大聖堂前
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今日は一日中暑い中をたくさん走ってへとへとに疲れていたはずだけれど、とても心地よい刺激に圧倒される夜でした。こんな世界があるだなんて。
もっと見て回りたいけれど今夜はもう眠ることにして、明日ゆっくりと聖地ファティマを見て回ります。私たちにとって、偉大な夜でした。


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