自転車旅ポルトガル4日目。港町ポルト滞在。緑の谷の山小屋みたいなアルベルゲ。
Luna
自転車の旅【ポルトガル編7】
ヨーロッパを自転車で旅しました。これはポルトガルの旅路の記録です。
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ポルトガルの旅路「4日目」
Porto 滞在の一日
★ 4日目の軌跡
スペインからポルトガルに入国して3日目。私たちはリスボンに次ぐ第2の都市「ポルト」に辿り着きました。町に入るときはたくさんのモーターウェイに阻まれて大変な思いをしたけれど、ポルト中心部はタイル張りの古くて立派な建物が並ぶ、坂の多い素敵な港町。私たちはこの日、旅の休日を過ごすことにしました。市内で別の宿に移ったのだけど、そこは都市の中に取り残された緑の谷間にある山小屋のような巡礼宿。そしてそこに集った仲間たちも一風変わった素敵な人たちで……。という一日。
☆ 市内の公園
宿でゆっくりと朝食をとった後、私たちはポルトに2軒あると聞いたアルベルゲを探しに出発しました。
もし居心地の良さそうなアルベルゲがあれば、今夜はそこに移ろうと考えたのです。アルベルゲとは巡礼宿のことで、巡礼者が安く泊まることができる宿泊施設です。私たちはすでにサンチアゴ=デ=コンポステーラへの巡礼の旅を終えていましたが、巡礼宿に泊まることができます。まずは新しくできたという巡礼宿へ向かいます。
「巡礼宿アルベルゲについて」
☆ 町を南北に分けるドウロ川
ちょっと小雨がぱらついています。
『魔女の宅急便』の町みたい。
☆ ミサが行われていた教会
町の中心部には古くて立派な教会などの施設がたくさん残っています。それらを見て回るだけでも何日も楽しめそう。
1軒目のアルベルゲへ行ってみると掃除中で、開くのは14:00だそうです。それまで時間があるので観光をしていると町の中心にインフォメーションセンターを発見。中に入って話を聞いてみると、もう一軒あるという古いアルベルゲを勧めてくれました。それならばぜひ行って見てみましょう。
☆ 都市の中の緑の谷
教えてもらったところへ行くと、そこには大きな研修所のような建物がありました。ここかな? さんざん周囲を回ってみてもやっぱりここみたい。出入りしているのは汚れた格好の旅人ではなくて、研修に来たビジネスマンのような人たちばかり。入口でうろうろする私たちを横目で見て颯爽と通り過ぎていきます。私たちがおそるおそる建物に入って入口の警備員みたいなおじさんに巡礼者が持つ「巡礼の証(クレデンシャル)」を見せると、億劫そうに受付をしてくれました。宿泊料は一人5€。
大きくて部屋数の多い建物だったからここに泊まるのかと思ったら、入口を出てぐるっと裏手へ回されました。倉庫の中に自転車を停めて、言われた道を行くと……。
そこは上の写真にあるように、都市の中に突如として現れたような緑の谷間でした。
☆ 谷の向こうには車や街灯が立ち並んでいます。
谷はドウロ川へとつながっているようで、谷間の奥(山側)は地下の共同水場になっていました。
☆ 谷の奥は共同の水場
かつてはこの水場で洗濯やお皿洗いをしていたのかもしれません。今は利用している人の姿はありませんでした。
一歩谷を出ればそこは大きな都市の中心部。この緑の谷だけがタイムスリップをして取り残されてしまったかのようです。不思議な場所。
そして肝心のアルベルゲがこれです(下の写真)。
☆ 山小屋のようなポルトのアルベルゲ
宿泊施設なので上の大きな建物かと思いますよね。
いいえ、それは受付をした建物。泊まることができるアルベルゲは写真中央にあるオレンジ屋根の山小屋みたいな建物です。
大きな都市の、タイムスリップをしたような緑の谷間の、まるで山小屋みたいな小さくて辿り着くのにも苦労をする場所にあるアルベルゲ。
私もカタリもこれを見て、なんだかとっても愉快な気持ちになってしまい、笑いが止まりませんでした。私たち、こういうへんてこで素敵なものが大好きなんです。
☆ 山小屋アルベルゲ入口
アルベルゲへは研修所の裏手から谷間を下る必要がありました。荷物を持って移動するのが大変なくらい、急で長い道です。それがまた楽しいんですけれどね。
入口の近くには犬小屋がありましたが犬はいません。後で出会うことになる旅人仲間たちとは「このアルベルゲが旅人でいっぱいになってベッドが足りなくなったら、誰かがあの犬小屋を使うことになるね」って冗談を言って笑い合いました。
☆ 簡素できれいな小屋内
薄汚れた山小屋を想像しながら中へと入った私たちは、思っていた様子とだいぶギャップのある印象に、小さく歓声を上げました。
小屋の中はとても簡素な造りで、床も家具もみんな清潔なものだったのです。
☆ 新しいベッド
ベッドも新しくてきれいです。
最近内装を新調したのでしょうか。
☆ 階段は昔のまま
地下階へと続く階段を降りてみます。
階段は木造りで、古いもののようですが、きれいに使われています。
☆ 地下階にもきれいな2部屋
上の階にも下の階にもそれぞれ2部屋のベッドルームがあって、1部屋のバスルームがありました。キッチンでは火も使えて、冷蔵庫まであります。外観からは想像できないくらいにどこもきれいで快適です。
初めは私たちの他には誰もいませんでしたが、次々に巡礼者たちがやってきて、都会の山小屋はすぐににぎやかな場所になりました。
☆ ポルトガルならではの青いタイル張りの教会
私たちピルグリムたち(巡礼者)はまた夜に再会することを約束してそれぞれ出かけていきました。
私とカタリはポルトの町を観光するために中心街へと向かいます。
☆ 様々なお店が並ぶショッピングストリート
いくつかの教会を巡ってから買い物客で賑わうショッピングストリートへ行きました。
人や物が行き交い、大道芸やマジックをする人たちが人だかりの輪を作っています。物売りの掛け声、香水の香り、店先のアイスクリームやお菓子。
もう何日もスペインの田舎の巡礼路を旅してきた私たちにとって久しぶりの街の喧騒です。見るものがいっぱい。楽しい。
☆ 中央の広場
ここが町の中央なのかは分からないけれど大きな広場がありました。大聖堂や市庁舎、時計塔などから坂を下ったところにあります。この広場の片隅にはインフォメーションセンターがあって、そこで多くの情報をもらうことができます。
☆ ドウロ川に架かる橋
大聖堂の横から架かる、列車と徒歩のための橋です。
橋を渡ればポルトの南側。町を出発するときにはこの橋を渡っていきます。
明日の出発地点となるところ。まだ見ぬ南側へと続く橋です。
☆ ドウロ川
ドウロ川にはたくさんの小舟が浮かんでいて、町の南北の人や物の交流を盛んに行っています。個人的な船を持っていて行き来している人もいるんじゃないかしら、と思うほどたくさんの船が停まっています。南側には倉庫街があって、たくさんの人々がお酒や食事を楽しんでいるのが見えました。
☆ アサガオのような花が生い茂る
大聖堂裏の急坂はアサガオかヒルガオか、青い花の蔓植物が生い茂っていました。そういえば一週間前にムシアという町に向かう途中にもこんな花に覆われた崖がありました→こちら。
☆ 世界を創る親子
宿への帰り道、町の裏通りで不思議な親子を見かけました。父親は古い手回しオルゴールを奏でていて、娘さんはお人形やおもちゃで遊んでいます。二人はばらばらのことをしているようだけれど、遊びの動きとオルゴールのテンポを合わせながら一つのリズムを二人で作っていました。曲も遊びも独特で、不思議な、ちょっと不気味だけれど心地良い、そんな世界を創造していました。絵を描いたり、手品をしたり、曲芸をしたり、いろいろなパフォーマンスがあるけれど、きっとあの親子は「一つの世界を創る」ということをしているのだと思いました。奇妙で魅力的なその世界は、道往く人々の足を止めるには十分すぎる力をもっていて、私とカタリもしばらくこの二人が織り出す世界に魅入っていました。
途中、食材を買って緑の谷の宿へと帰りました。
宿では何人かの旅仲間が寛いでいて、のんびりおしゃべりをしています。フランスのパリから来たヘンリーはパリの自宅からずっと歩いてきたというすごい人で、アニメのルパン三世そっくりな声と話し方でした(行動からジョークから本当によく似ていたんですよ)。それからオーストラリアから来たアーサー。それとリトアニアのカウナスの町から来た女性。私たちは持ち寄った食材で夕飯を一緒に食べました。
☆ 都市の山小屋で乾杯
私とカタリは鶏レバーとパプリカのディッシュを作り、ヘンリーがトマトパスタ、カウナスの女性がオードブル、アーサーはワインを提供しました。愉快で和やかな時間です。
ヘンリーはパリへ帰れば美術の先生、アーサーは数学と物理の先生、カウナスの女性は歯医者さんだそうです。
食事の後、スペインの青年とドイツの学生のお姉さんが新たに加わって、それからちょっと変わった訪問客がやってきました。
☆ カモメの訪問客に夢中な女性
小屋の前には水が湧き出ているのですが、そこにまだうまく飛べないカモメの子どもが水を飲みにどこからかやって来たのです。あまりのかわいらしさにみんな集まってその様子を眺めました。中でもカウナスからの女性は夢中になっていて、たくさん動画を撮影している様子でした。笑ったり歓喜したり賑やかにね。
☆ 街の日没
やがて街は暮れて辺りは黄昏時。
なんだか少し切なくて美しい時分です。
☆ 仲間が庭先に集まる
陽が完全に落ちると、誰が声をかけるでもなく一人また一人と小屋の横の庭先に出てきました。
それぞれ明日の行き先やこれからの目的地なんかを話しています。
これからサンチアゴを目指して北へ向かう者、あてもなく南へ向かう者、家へ帰る者、奇跡の地ファティマを目指す者、風が吹いたほうへ向かう者。行き先はみんな様々ですが、明日の朝には誰もがここを出発します。
夜の集いの中でもヘンリーのお話は魅力的で、話し方も面白くて、誰もが聞きたがりました。パリから1年5カ月歩いてきたこと、海岸沿いに歩いてきたので「巡礼者の証」にスタンプがなく巡礼証明書を発行してもらえなかったこと(巡礼証明書の発行には毎日スタンプを手に入れる必要があります→参照リンク)。発行所では「あなたは間違った道を歩いてきた」と言われたそうで「巡礼の旅路に『間違った道』とはどういうことだ、と怒ってやった。でも別に証明書なんて気にならないけどね」とスナフキンみたいなことを言って笑っていました。この先の行き先はというと、どこかで踵を返して歩いてパリまで戻るそうです。また何年もかけて。でもそれもまた風次第だそうです。明るくて誰をも惹きつける人でした。
☆ 都市の夜は深まりつ
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。私たちは三々五々、寝床へと戻っていきました。旅人の、特に巡礼者たちの朝は早いですからね。夜はしっかりと休みます。
私たちは明日、ドウロ川を渡って町の南側へ行き、そこから数日かけてファティマ村を目指します。天使が現れた奇跡の村だそうです。いったいどんなところなのでしょう。遠く想いを馳せながら、今夜はおやすみなさい。
★ 明日へつづく ★
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★ 昨日の日記 ★
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