サンタ・マリア・ダ・フェイラからコインブラの町へ。ポルトガル自転車旅「6日目」。
自転車の旅【ポルトガル編9】
ヨーロッパを自転車で旅しました。これはポルトガルルートの軌跡です。
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ポルトガルの旅路「6日目」
サンタ・マリア・ダ・フェイラからコインブラへ
★ 6日目の道のり
朝です。今日もいい天気になりそう。
昨晩はお月さまとお城を見ながらバルコニーでロマンチックな夜を過ごしました。新しい宿のシャワーはきれいで、ベッドも快適。ぐっすり眠って気持ちよく目覚めました。
朝食は 8:30~の約束だったけれど、キッチンへ行ってみると宿の人が朝食の用意をしているところで、「もう食べてもいいわよ」と言ってもらえました。やったあ。予定よりも早く出発できそうです。
☆ 素敵な朝食
朝食はとっても素敵でした。
チーズにハム、昨日感激したあの黄色いパン。パウンドケーキが1ホールにコーヒーやジュースやミルク。他にもいくつかの食べ物が用意されています。
朝からケーキと黄色いパンを食べられるだなんてうれしい。それにコーヒーも。
☆ パウンドケーキ
私たちはごちそうをお皿に載せて、そのままバルコニーに出ました。他のお客さんはみんなまだ眠っています。私たちは朝陽を浴びるお城を眺めながら一日の始まりを素敵な朝食とともに迎えました。
それはそれは素敵な朝でした。
☆ 朝陽を浴びるフェイラ城
居心地の良い素敵な宿をあとにして、私たちは今日も旅へと出発します。サンタ・マリア・ダ・フェイラはまた訪れたくなる素敵な町でした。今度は教会と美術館にも行ってみたいな。
町を出てから交通量の多い道へと出ました。南へまっすぐに延びていて、距離を進むには適しているけれど車が多いとやっぱり怖い。前を走るカタリとお話しながら走るのも難しい。この道がずっと続いたら辛いなと思っていたところ、道はもっと大きな道と合流しました。その道は交通量も少なくて、気持ちよく走れました。ぐんぐん南へ向かって進んでいきます。
☆ お城を利用した新しい家もありました。
朝見つけた教会は新しくて、真っ白な壁と青い空が新鮮な気持ちにさせてくれます。今日の旅の無事と大切な人たちの幸福を祈ります。
☆ 朝の祈りの教会
午前中はほとんど走り通しでした。途中の丘にぽつんと水道があって、そこで水を使って休憩をした以外は移動です。ずいぶんと進んだと思います。
お昼になり、小さな村に広い森の公園を見つけたので入ってみました。
☆ 小さな村の森の公園
村の奥まったところにあるその公園は、きれいな小川に囲まれた森の中の公園でした。休憩用の椅子やテーブル、それからバーベキュー小屋がありました。
私たちの食糧袋にはスペインでいつも食べていたソーセージの最後の1パックが残っていたので、それをパンにはさんで食べます。ポルトガルではこのソーセージを見かけないので、スペイン以外の国で私たちがいつもそうするようにチーズを持ち運んでお昼ご飯にパンと一緒に食べています。それからドライフルーツとチョコレート。この旅の中でいったいどれだけのチョコレートを食べたかしら。日本の板チョコが50gなのに対して、こちらは200gで売るんですよ。同じくらいの値段で。ついつい食べ過ぎちゃうのは仕方がないですよね。
☆ 産業道路のような道
山林や田畑が広がる景色の中、まるで産業用の道路のようにまっすぐに延びる無機的な道もありました。辺りの様子は寒村のようになったり、新興住宅地のようになったり、くるくると変化していきます。
☆ 仔豚の丸焼き専門店
Mealhada(メアリャーダ)という町に近づくと郊外の雰囲気になってきました。するとあちらにもこちらにも Leitão Assado(レイタオン・アサード)と書かれた豚の丸焼きの看板があります。きっとこの町は仔豚の丸焼き料理が有名な町なのでしょう。そこかしこに豚の丸焼き専門店が並んでいました。
☆ コインブラの町に到着
仔豚の丸焼きの町メアリャーダを抜けて、明るく開けた小高い丘の道を越えると、ポルトガル第3の町「コインブラ」の町が見えてきます。
今日の目的地の町です。
コインブラの町はモンデゴ川という川に囲まれるようにしてあります。町全体が小高い丘のようになっていて、川の対岸も丘のようになっています。丘につくられたヨーロッパの町並みはとってもきれい。コインブラの町は特にそう感じました。
丘の頂上には旧大聖堂と新大聖堂と大学があります。丘がそのままオールドタウン地区となっているので、かつては砦のような町だったのでしょう。
☆ モンデゴ川
私たちはインフォメーションセンターの看板を辿って行きましたが、看板に振り回されるばかりでインフォメーションセンターが見つかりません。同じところをグルグルと回り、どうしようかと話していたところ、ピルグリムの3人組のおじいさんたちが宿らしき戸を叩いているのを見かけました。私たちは彼らのところへ行き、カタリがおじいさんたちに事情を尋ねました。もしかしたら巡礼宿に泊まれるかもしれません。でもおじいさんたちは首を振って「この消防署のアルベルゲ(巡礼者のための宿)に泊まろうと思ったが、閉まっている」と言って立ち去ろうとしました。私たちはアルベルゲの情報が欲しかったので、これからどうするつもりなのかとおじいさんたちに尋ねました。すると川向こうの修道院にもアルベルゲがあり、そこに向かうというのです。私たちはおじいさんたちのあとについていくことにしました。
☆ 修道院入口
修道院は川を渡って、広場を抜けて、丘をぐんぐん登ったところにありました。石造りの大変な急坂です。
ここが巡礼宿であるということは、誰かに聞かないと分かりそうにありません。大きくて古い建物でした。おじいさんたちが門をくぐってずんずん進んでいくので、私たちもそのあとを追いかけました。
☆ 修道院内のアルベルゲ
修道院の敷地に入るとお手伝いのお兄さんが迎えてくれました。高校生くらいの年齢じゃないかしら。お兄さんは私たちのこともおじいさんたちと一緒に中へと通してくれて、修道院の敷地の中にある小さなカフェへと案内してくれました。おじいさんたちは私たちのことなどお構いなしに、めいめいビールやジュースなどを注文して到着早々寛いでいます。少しの休憩の後、私たちは10€の宿代を渡して受付を済ませました。今夜はここに泊まることができます。ありがとう。
☆ よく見かけた食器
アルベルゲの宿泊棟はカフェのさらに奥にありました。カフェとアルベルゲの間のお庭がカフェテラスのようになっていて素敵です。
私たちは荷物を置いて一息つくと、さっそくコインブラの町を見に出かけることにしました。
☆ 橋の近くにある修道院跡
いい天気。
橋の手前の広場には修道院の遺跡が遺されています。広々していて気持ちの良いところでした。
コインブラは大きな町とはいえ、車がびゅんびゅん通るようなせわしない都会ではありません。広い平野部に川や丘に囲まれてつくられたのんびりした町。ポルトガルの歴史や文化が「かつて」のものとしてではなく、今なお綿々と生き生きと続いている町。そんな印象を受けました。
☆ コインブラの町並み
川の東側へと橋を渡るとそこはコインブラの町の中心地。大聖堂のある丘の町です。
スペインやポルトガルで見かける丘の町って、どうしてこうも素敵な容姿に見えるのでしょうね。細い路地の坂道がいくつも複雑に絡み合っていて、そこに暮らす人々の生活動線(ルート)は多岐に渡るのに、その一人一人はきっといつも同じ道を通る。買い物に行くときの階段、学校へ通学するバス停までの坂道、日曜日に行く教会と友達と待ち合わせをする公園のある通り。そういった一人一人の生活動線が上へ下へと無尽にあって、それは同じ家に住むおじいさんやおばあさんもかつては使っていたルートかもしれないし、500年前に住んでいた人々と同じルートかもしれない。そしてこの先の未来も誰かがそのルートを生活動線としているかもしれない。そんなことを想像すると、人の歴史や営みに心がきゅーってなって、切なくてロマンチックで素敵な気持ちになるの。私って、変かな。
☆ 大聖堂内
丘の上には旧大聖堂と新大聖堂があります。上の写真は新しい大聖堂の堂内。大きくて立派でした。
入口の近くに5cコインを薄く延ばして絵柄を刻印するお土産のコイン機がありました。カタリはこれが大好きなので、さっそく5cと1€を入れていたのですが、操作を間違えたのかコインを吸い取られてしまいました。二人とももう1€コインを持っていなかったので、私は「残念ね」と言って諦めました。そこに教会関係者がたまたま通りかかったのでカタリが話しかけました。その方はおじいさんで、ポルトガル語しか話さずカタリの英語を理解していない様子でした。それでもカタリは身振り手振りで話しかけます。よく見るとそのおじいさんの身なりって、正装ではないからわかりにくいけれど司祭様じゃない? そしてコインブラの大聖堂の司祭様だとしたら、もしかしてこの教区の司教様なんじゃない?
おじいさんは寛大な微笑みでカタリを諭していたけれど、カタリはコインが欲しくて必死に訴えかけます。私の保護者は大変な失礼をしているのではないかしら。はらはらしながらそのやりとりを見ていると、後から入ってきた秘書のような方がカタリの話を聞いてくれました。そして「司教様にそれほど訴えかけるなんてよほどこのコインが好きなのね」といった表情でにっこりと笑い、1€を機械に入れてくれました。おじいさんも「なんだ、私はてっきり……」というようなことを笑って話されていました。良かった、二人とも寛大な方で。当のカタリはお礼を言ってからさっそく嬉々としてレバーを回し、コインを引き延ばしています。時々保護者であるカタリがまるで大きな子供のように感じることがあります。
☆ 旧大聖堂の中庭
こちらは旧大聖堂の中庭です。回廊があり、重々しいゴシック様式の建物です。
☆ シャコ貝の貝殻
大聖堂内にはいくつかの大きなシャコ貝の貝殻が置かれていました。シャコ貝は聖水を入れる聖盤として用いられるそうです。他の教会で水の入ったものを見かけたことがあるけれど、神社の手水のように身を清める用途で聖水が置かれているのかもしれませんね。
巡礼者のシンボルであるホタテ貝にも似ています。
☆ モンデゴ川の流れるコインブラの町
上の写真は大聖堂のある丘の中腹から見たモンデゴ川。川の向こう側の坂の上には、私たちが泊まらせてもらった修道院アルベルゲがあります。
☆ 町の中心地
私たちは丘を下って町の中心地を歩いてみました。中央広場からいくつもの小さな裏路地がつながっていて、隠されたお店がたくさんありました。ぐるぐる回って路地を抜けると思いがけない場所から出たりするので面白い。小さなお城や修道院や市庁舎などが集まっていて、レストランやカフェもいっぱいありました。
観光を終えて夕飯の買い出しに行くと一人の巡礼者と出会いました。御年70歳の方で、リスボンからサンチャゴへと向かう途上でした。私たちはお互いに興味をもって、お店の隣りの食堂でお話しながら夕飯をごちそうしてもらいました。
その方は今までに有名な道をたくさん歩いてきていて、マチュピチュへ続く「インカ道」、ニュージーランドの「ミルフォードサウンドトラック」、日本の「四国遍路」、私たちが通ってきたサン=ジャン=ピエ=ド=ポーからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでのカミーノ(巡礼路)「フランス人の道」などなど。すごい方です。そして今回はリスボンからサンチャゴまでの巡礼路。多くの道を歩いてこられたのですね。
☆ 素敵な町コインブラ
しばらくお話をしてから私たちはお互いの旅の無事を祈ってお別れしました。彼は北へ、私たちは南へと旅を続けます。
宿へ帰ると明日の朝食の支度をして、シャワーを浴びながら洗濯をして、ベッドに入るころには夜になっていました。
明日は聖なる奇跡の起きた村、ファティマを目指します。
★明日の日記★
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★昨日の日記★
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