Mira&Luna's nursery lab

旅乙女と発明娘の子供部屋

アンダルシアの旅路の始まり。森の山道を抜けて、お城と修道院と洞窟の町アラセナへ。

アンダルシア地方編ヨーロッパ自転車旅

                       🌈今日の旅路🌞
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アンダルシア地方「1日目
ポルトガル国境の町ロサル=デ=ラ=フロンテラ(Rosal de la Frontera)からアラセナ(Aracena)へ

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(※GPSロガーでのログが途中で途絶えてしまったため、上図の軌跡は途中までのものです。実際は右端にあるAracenaの町まで行きました。)
GPSロガーはミラの手作りです。ミラは作り方の記事を書いているので、興味のある方はそちらもどうぞ見ていってくださいね。→ 🌹GPSロガーの自作方法🌹)

私(ルナ)と保護者のカタリは自転車でヨーロッパを旅しました。日本の家に帰ってから数年が経ちましたが、あの旅路での景色や印象は今でもよく覚えています。これから何回かにわたって、そのときの様子を記事にしていこうと思います。



今までのあらすじ
旅は成田空港まで自走するところから始まります。自転車は空港でいったん分解して、輪行バッグで飛行機に載せます。特別料金などはかかりません。


アイルランド
初めに向かったのはアイルランドケルト文化が今なお色濃く残る、自然と音楽とエールの国(私はいまだに飲めないけど)。ダブリンから時計回りに島の南半分を周りました。
🎻【アイルランドの旅】←リンク


フランス
アイルランドで悠久のケルト世界に想いを馳せた私たちは、島を出て大陸(ヨーロッパ大陸)へと船で渡ります。上陸したのは自由の国フランス。フランスでは広い広い大地の上で野宿をしたり、モンサンミッシェルまで海を渡って歩いたり、画家の先生と出会って小さなサーカスを観たりしました。そして私たちは旅の途上で、巡礼者(ピルグリム)になったんです。
💒【フランスの旅】←リンク


カミーノ巡礼路
ピルグリムになった私たちはフランスの南端にあるサン=ジャン=ピエ=ド=ポーという町からスペインのサンチャゴ=デ=コンポステーラという町まで、巡礼の道「カミーノ」を旅しました。カミーノの道では多くの巡礼者と出会い、本当に様々な人の想いに触れました。そしてついにサンチアゴの町に辿り着き巡礼を果たした私たちは、南へ針路をとりポルトガルへと向かいます。
カミーノ巡礼路の旅】←リンク


ポルトガル
海と砂糖菓子と可愛い刺繍や小物雑貨のポルトガル。それくらいしかその国のことを知らずにやって来た私たちは、奇跡が起こったという聖地の噂を聞き、ファティマという山村へ向かいました。そこは世界中から人々が"想い"をもって集まる優しさの地でした。私たちは感銘を与えられ、そしてまた旅へと出発しました。
🏰【ポルトガルの旅】←リンク


アンダルシア
こうしてポルトガルを抜け、再びスペインへと入国したところから、この【アンダルシア地方編】は始まります。スペイン南部、砂漠と白い町と羊飼いの土地。目指すはスペイン最南端の町、タリファです。


ポルトガルとスペインの国境の町「ロサル=デ=ラ=フロンテラ」
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🌈 アンダルシア地方の旅の始まり

ポルトガルから国境を越えてすぐのところにあるスペイン側の小さな町ロサル=デ=ラ=フロンテラ。昨夜はこの町の酒場宿に泊まりました。1階がバル(酒場)で2階が宿屋になっていて、こういった酒場宿を私たちは「タバーン」と呼んで時々泊まります。(私たちの間での「タバーン」は、イギリス英語の"Tavern"とラテン語系の"Taberna"の意味を含めて、"酒場宿"の意味で使っています。)

今日もいい天気になりそう。
荷物をまとめて自転車に積み込みます。凛と引き締まった朝の出発の時間。未知の世界へと進み始める憧憬と不安とが心地良い緊張感となって、どきどきわくわくします。


☆ 新しい旅の一日へ出発
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この朝私たちが出発したのは9時。でもポルトガルとの時差が1時間あるので、昨日までの朝8時と同じ時刻です。日中は暑くなりそうですが、まだ空の青も薄く、新鮮な朝の空気は涼しいです。
今日は登りの山道を行く予定です。


☆ 広い広いアンダルシア地方
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今日からスペインの南に位置するアンダルシア地方を旅します。アンダルシア地方は私の愛読書『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ著)の物語の始まりの土地。主人公サンチャゴは、ここアンダルシア地方の羊飼いでした。だからずっとこの土地を旅してみたかったんです。とはいっても、アンダルシアについて他には何も知らないんですけどね。


☆ お城のある山上の町アロチェ(Aroche)
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道は森に囲まれた山道を緩やかに登っていきます。カタリの自転車はBB(ボトムブラケット)というパーツの調子が少し悪いようです。BBはクランクの核となるパーツなので、これが壊れてしまっては先に進めなくなってしまいます。カタリはBBを気遣って立ちこぎはせずに登りの山道を走っていました。
安全で快適な家を離れ、言葉や文化の違う地域の中をぽつんと二人だけで進んでいく。そんな旅には抱えきれないくらいの大きな自由がありますが、同時にいつだって不安もまたあります。
もし自転車が故障して動けなくなってしまったら、もし盗賊に襲われて一切の持ち物を失ってしまったら、もし体を動かせないくらいのけがや病気をしてしまったら......。考えると、家にいるときには心配しなくていい危険や恐れがたくさんあります。それでも私たちは旅することを望みます。どうしてかと訊かれると、理屈ではよく分かりません。この世界は見たことのないもので溢れているけれど、テレビで他の国々の景色や文化を見ることはできます。この世界には知らないことが山ほどあるけれど、本やインターネットで未知のことを調べることができます。私たちが旅をするのは前人未到の山奥でも、2万マイルの海底でも、250万光年先の銀河でもなく、人が住み、地図やガイドブックで調べることのできるような土地です。だから、その土地について見たり知ったりするために、そこへ行く必要があるわけではありません。『空はどこに行っても青いということを知るために、世界をまわって見る必要はない』とゲーテは言いました。
だから私たちは、見るためだけや知るためだけに旅をしているのではないんです。どこまでもどこまでも続く見たことのない景色の中を進んでいくことに、ただ、どうしようもなく憧れるんです。

ちなみにゲーテは2年間ものイタリア旅行をしていて(再訪もしています)、こんなことを言ったことがあるそうです。『ひとは到着するために旅するのではなく、旅するために旅するのだ』
彼はきっと旅好きだったのに違いありませんね。


☆ コルテガナ(Cortegana)の町
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🌈 コルテガナの町

森の中の山道を東へ進み続けると、アロチェという町が南の森の中に見えてきます。私たちはアロチェの町には寄らずにさらに東へと進み、お昼ごろにコルテガナという町へと到着しました。

コルテガナにはスーパーが2軒もあったのですが、どちらもお休み。住宅地の中に小さな商店を見つけたので、そこでトマトやパンなどのお昼ご飯を買います。
私たちは住宅地のベンチでお昼ご飯を食べました。家々の前では小さな子どもたち、犬たち、近所のおばさんたちが一緒になって遊んでいました。天気の良い閑静な住宅地に笑い声やおしゃべり声が響いて、なんとも温かい光景。「平和ね」と、日曜日のお昼時を思い出します。家から遠く離れた土地であっても、こうして穏やかなひとときの中おいしいご飯が食べられるって、なんて幸せなことなんでしょう。当たり前のようだけれど、とっても恵まれていること。どうか旅人たちが日々の旅路で見聞きしたことに、ささやかな幸せを感じられるような世界がずっと続きますように。そんなことを思うお昼ご飯でした。

町の丘の上にはお城があって、お昼ご飯を食べ終えた私たちは丘の道を登りました。
お城見学に出発です。


☆ Cortegana城
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丘の上に建てられた中世のお城です。
ガイドに「要塞城」という言葉があったので、日本の出城のような役割のお城だったのではないかしら。コルテガナは国境を警備する兵隊たちの町だったのかもしれませんね。


☆ 城から町を見下ろす
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お城のあるところから町を見渡すことができます。
辺りを森に囲まれた小さな町ですが、生活に必要なものはなんでも揃っていそうです。この町の人々は、どんな日々を送っているのかな。都会に憧れるティーンの子たちや、町のステッカーをリアウインドウに貼った自警団のおじさまたちや、毎日教会まで足を運ぶご年配の方々。きっと文化が違っても、人々は同じように人としての毎日を暮らしているのでしょう。


☆ 城の中へ f:id:miraluna:20210310185624j:plain:w350

それではお城の中へ入ってみましょう。
入口には受付の女性がいて、入城料に1人2€を渡します。わくわく。


☆ 城の中庭
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お城の中心は中庭になっていて、城壁の内側には緑もありました。
屋内の空間は、厚く囲んだ城壁の内部にあるようです。さすが要塞城。


☆ 全部が石とレンガ造り
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石やレンガで作られた壁にクロスボウ(弩(いしゆみ))が掛けられています。クロスボウは11-13世紀辺りから使われ始めたそうです。これがその当時のものであれば、1000年近く前の品ですね。


☆ 竜を倒す天使
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ドラゴンを退治している天使は、大天使聖ミカエルかな。
漆喰の塗られた白い壁に影が落ちてドラマチック。壮大なシンフォニーが聞こえてきそう。


☆ 城主の部屋
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ここはお城の主の居室でしょうか。大きなタペストリーが誇りと権力を象徴しているかのようです。調度品も立派ですね。ハルバートを持った甲冑騎士が今にも動き出しそうでちょっと怖い。


☆ 大窓
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これは囚われのお姫様が腰を掛けて物憂げにため息をつくための窓。窓は城壁の中の小部屋のようになっていて、石造りの腰掛があります。きっとそこには布が敷かれたりクッションが置かれたりして、居心地の良い空間だっただろうなあ。


☆ 城壁と中庭
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お城は町の丘の上に建っているので、城壁に上がると辺りの山々が一望できます。毎日毎日、一日中国境を見張るお仕事の兵隊の方もいたのでしょう。その時代でも家に帰れば「今日は何事もなかったよ」と家族に話したり、夜勤の日があったりしたんだろうな。


☆ 城壁からの眺め
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この日は雲一つない天気でした。


☆ 地下の泉
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一通りお城の中を見て回り中庭に戻ると、地下へと続く階段がありました。地下もあるの!?
さっそく行ってみるとそこには青い水を静かに湛えた泉がありました。
城壁の中に水があるかどうかということは、大変重要なことですよね。でも、この水はどこから来るのかしら? やっぱり地下水? ポルトガルでも同じように山上のお城に泉がありました。どういう仕組みなんだろう。


コルテガナ城をゆったりと見て回り、中世ヨーロッパロマンに浸った私たちはすっかり満足して丘を下り、旅路へと戻りました。
コルテガナの町を出てさらに東へと森の中の山道を進みます。山道は登ったり下ったりで、なかなか速度が上がりません。急ぐ旅ではないので速度を出す必要はないのですが、この進み具合だと次の町アラセナが今日最後の大きな町になりそう。アラセナを過ぎたらしばらくは宿が見つかりそうにありません。


☆ アラセナ(Aracena)の町が見えた
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🌈 修道院とお城と洞窟の町アラセナ

見えてきました。アラセナの町です。森ばかりの道の中に丘とお城と家々の屋根が見えてくると、ほっとするような、別の世界に迷い込んだような、なんだか不思議な気持ちになります。絵本か何かで見たような素敵な光景。宿は見つかるかな? スーパーマーケットはあるかな?


☆ アラセナの町
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山道はアラセナの町のところで尾根の上の道になり、町の半円をぐるっと囲んでいます。なので、町を道から見おろすとすり鉢状になっているように見え、その中心に大きな丘があり、丘の上にはお城が見えます。急斜面の町は石畳の小路がたくさんあり、低地には大きな教会や修道院が見えます。どうやら由緒と長い伝統のある町のようです。


☆ お城へ続く道
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私たちは期待を込めて、石畳の小さな道をあちらへこちらへ曲がりながら町の中心へ向かって下っていきました。町中には小さな地図がたくさんあり、インフォメーションセンターもあるようなので行ってみました。でもインフォメーションセンターは残念ながら閉まっていて、町や宿の情報は得られませんでした。だけれど小さな地図はたくさんあるので迷いません。しばらくぐるぐると町中を探索していると、一軒の民宿(ペンション)を見つけました。

☆ アラセナ城
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宿というよりは一般的な民家の一室を借りるといった感じの宿で、奥に3世帯の静かな家族が住んでいました。一家はみんなスペイン語でしたが、値段と部屋の場所など必要なことは身振り手振りで分かりました。私たちが泊まれることになったのは、入口のすぐ横にあるツインのお部屋。自転車ごと入ることができて、2台停めてもまだ余裕がありました。お値段はなんと1部屋で13€。2階にはバスタブ付きのバスルームもあります。やったー。
これで今夜は居心地の良い寝床が約束されました。旅の一日の中で心からほっとする瞬間です。


☆ 部屋には洗面所も付いている
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さっそく宿に荷物を置いて、町探険に出発。
宿は町の中心にあって好立地。洋服屋さんや薬屋さん、靴屋さんなんかが並んでいて可愛らしい町並み。この近辺の地域で、中心的な役割をしている町のようです。お城の他にも教会や立派な修道院がたくさんありました。
そしてなんと、町の中心の地下空間には、洞窟があるそうなんです。尾根の上の道にある大きなスーパーまで行って買い物を済ませると、さっそく地下の洞窟へと向かいました。

この洞窟が素晴らしかったんです。鍾乳石ばかりではなく、空洞内に結晶している鉱物や、水の中で結晶している鉱物なんかもありました。洞窟内にはとても大きな広場のような空間もあり、巨大な鍾乳石もたくさんありました。とても大きくてきれいで、石好きにも洞窟好きにもたまらない素晴らしい洞窟だったんです(私は石好きで洞窟好きです)。今までたくさんの洞窟に入ってきましたが、その中で一番好きでした。ただ、写真撮影は禁止だったので、残念ながら写真はありません。


☆ アラセナ城へ
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素晴らしい洞窟を後にして、もう十分満足してその余韻に浸りながらも、さらに次の目的地「アラセナ城」へと向かいます。お城を見学するにはツアーに参加する必要があります。スペイン語のツアーだったので話の内容は分かりませんが、丘の上のお城(遺跡)を見ることができました。


☆ 丘の上の城壁
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私は頂上のお城よりも、丘の上にあった立派な教会のほうが興味深かったです。

お城を見たら宿に帰ってお風呂に入りました。シャワーだけじゃなくってバスタブに浸かれるって幸せ。今日は大きなスーパーに行くことができたから、この後はご馳走が待っています。なんだか面白いことが盛りだくさんのいい一日でした。

でも実はこの後、さらに面白いことが起こります。
この日は伝統的なお祭りの夜だったんです。本当になんて盛りだくさんな一日なんでしょう。お祭りの様子は次回の記事に書きますね。



🌈明日へつづく
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